君は希望を作っている #10

 その日はそれできぼうも終わって、沙羽は帰るとまたInstagramで希望を見ていた。
 あぁ、この茄子スパゲッティ、このぐらい作れるけれど、なんか作ると希望の味はしないんだよな、はぁ。なんだろうスパイスかなそれともハーブ。
 Amazonで前も探したけれど、沙羽がいくら探しても希望は今日も入荷してない。
 せめてどこかで希望が食べられるように、今日もクラウドソーシングだ、沙羽はマイページにログインして適当な案件を探す。このHP作成とかよさそう、そう言ってエディタを立ち上げる。
 ……あれ、これどうやるの。
 沙羽は小さな声を上げた、参考サイトとにらめっこしているうちに時間も過ぎて、沙羽は風呂に入る。
 フリーランスも無理なのかなぁ、はぁ。
 まだ独立は難しいかも、沙羽はLINEでそう友人に愚痴った。
あるきぼうの無い日、沙羽はそのクラウドソーシングで見つけた案件を請け負うのではなくただ自分でやってみてどのぐらいかかるかということを始めて、そのあまりの遅さに改めて自分のスキルに絶望していたけれど、これは慣れだ、と自分に言い聞かせるようにして、一旦休憩を入れた。
 コーヒーを淹れ、冷蔵庫から四つセットのスーパーで買ったプリンを出す。
 プリンもいいけれど、希望が食べたい。
 沙羽はぶつくさいいながらプリンを頬張った、希望ってプリンみたいに四つ二百円で売っていたらいいのに、なんでAmazon在庫ないの。
 希望、希望やーい。そしてまたプログラミングにかかる。
あくる日の沙羽は母とガンマナイフで腫瘍を小さくしてもらいに行った、少しずつ、歩けるようになっていく。
で、収入どうしよう。
 また警備員に戻る気はあまりないから、やっぱり正社員かなぁ。暑いし寒いしもうそろそろガテンやめたい。
 佐藤さんの言うこともムカつくけど、きぼうって就労移行支援だからなぁ、そりゃ就職してほしいよ、したいんだけど。
 でも私、警備のガテン長くて、いきなりOLになれるかなぁ。
 ハイヒールなんか履いたことないんだけど、お化粧もちょっと……。
 だいたい、雨が降っても休めないんだよ?
 お弁当食べる時間も無いかもだよ?なんのために働いているの?
 台風が来ても出社なんだよ、あぁ嫌だ。
 こないだ沙羽の支援者にそんな風に愚痴っていた沙羽を、たまたま来ていた社長が笑う。
「なんだ、沙羽さんって真面目なのかと思っていたら、僕と同じ匂いがするなぁ」
「立ち聞き止めて下さい」
社長は沙羽の声を意に介さないように甘く囁いた。
「ねぇ、なんかなんにもしたくなくてだらだらゲームしたくない?」
「……それは」
社長はやっぱり、と笑った
「プログラミングだって自分の作りたい物作れるかどうかわからない、売れるかどうかも、それに、夏空花火で検索したら小説出てきたよ、そういう小説書く時間も減るかもだよ?」
「……でも、生活のためだし」
「うーんじゃあ純文学じゃなくてもっと人気出るの書いたら?BLとか」
なんてね、笑いながら社長は支援者と共に別部屋へ行った。
 なんでも本当に事務補助での求人をするらしい。

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