BFC4落選展
予選優秀作品……もうちょっとかなぁ。しくしく
ロマンゲームブック もう赤い実からは果汁は流れなくても
※選んだ番号に進んで下さい。
目覚ましだ。主婦の朝は早い。七時には起きて夫を起こす、口を聞くのもおっくうなぐらいには私達夫婦の関係は冷え切っていた。
起きるも寝るのも別部屋、食べるのも別々、夫婦などどこもそういうものだと友人は言った。
ね、別れないほうが賢いよ?
言われたことは真っ当だ、私も、この暮らしを捨てるつもりはない。
朝ごはんをつくると夫が起きてきた、またこれか、しかし何が食べたいと言うことはない、あなたがつくってもいいのよ、その言葉は聞き流され夫は薄暗く笑う。
あぁ、どうして結婚したのだろう。
愛のためだったか、生きるためだったのか、今は忘れてしまった。
子供はそれなりにかわいく、育つうち夫は夜遊びが増え、私はなにも言わなくなっていった。
男の人はしょうがないからね、ではない。私は夫に関心をなくしていた。
関心は別にあった。
友人が何かパーティーをやるとかで、同席することになった。
赤い実を食べた。柘榴のパイだが、宇美という女は、本当に赤かった。
髪も赤茶に染め、赤いルージュ、赤いワンピースに赤いハイヒール。年は近く、こんなに赤の似合う人も始めて見た。
渦笑うような声などとうに無視を決め込んだ私達ぐらいのアラフィフは、ほんとうの意味で自分を楽しむことを知っているという言葉そのままのような、少し、私には眩しいぐらいの。
夜の闇に赤い実が映えて眩しかったから、私はずいぶん夢中で頬張って、そんなにがっつかないで、だって、夫は、もう私に女を感じないって。
そう、赤い実はまだ果汁を流している。食べられるのを欲している。食べられて嬉しくて、さらに果汁を流す。
宇美の赤い実もまた果汁を流していた。
赤い実と赤い実が重ね合わさり、ザラリ、と果肉を合わせたしたたる果汁をふたりティッシュで掬い夜明けまで食べあった。
赤い実が食べたい、そう、私の頭にあった言葉はそれだけ。もう赤を見るだけで頭をよぎる赤い夜、連絡手段は、ある。
しかし、そうしてしまえばあれは一度の過ちではなくなる。夏の夜の夢でもなくなる。
夢のままでも美しいのではないか。
やはり赤い実を食べたいか。
私は
1夢のままにすることにした
2やはり赤い実か食べたい
1 赤い夢だった。
宇美とは、日常的会話しなくなった。赤い夢は、それからも私を襲ったが、それよりも私は色のない日常を選んだのだ。
もうすぐ、赤い実から果汁は流れなくなるだろう。
そうすれば、赤い夢など見なくなる。
色のない日常。永遠に赤い夢のままで。
「エンド1 赤い夢」
2 赤い夢は、日ごとに私を蝕んでいった。
ある日、私のほうから、宇美をパーラーへ誘った。
誘いかたすら忘れていた私は慌てて柘榴のパイを探し、食べた。
宇美も、私のそれを食べた。
赤い実は二つ重なった。
それから私は夜毎に向かう先が破滅か希望かわからない調べものをするようになった。
両方かもしれなかった。
夫とはお互いに同じことを考えていたようで、子供は給料がよい方がひきとるとか、もうそういう話しも出てきた。
夫?亡くなっているよー、と聞いたあとのずるい別れ話。しかし、私は一方で、あれから宇美に送るメッセージを迷っている。
赤い実が果汁を流さなくなっても、赤い実を食べたいだろうか?
私は
3 赤い実などもういらない。
4 それでもやはり赤い実を食べたい。
3 私はいつの日か、赤い実などもう関心がなくなっていた。
宇美はむしろ私をあれから何度となくパーラーに誘ったが、雑談に終わるだけだった。
そして、そうしてしまえば、宇美の赤い実が泣いているのもありありとわかった、わかった上での、残酷な、知らぬふり。
赤い実が果汁を流さなくなるころ、私達は「友達」に戻るだろう。
夫との別れ話も、いつかなくなっていた。
「エンド2 忘れゆく夢」
4 二度食べてしまえば。すっかり私は赤い実の依存症のようになってしまっていた。
近くのスーパーに柘榴が売ってないのは幸いだった。
柘榴がどこにでも売っていれば、私はそのことばかり考えていたのだろう。
当然、それは夫の知ることとなり、私と宇美は有責者になった。
子供も、金も取られ、宇美にも別れを告げられて私は今日も柘榴をかじっている。
今日は、どんな実を食べようか。
あの、レジ打ちをしている苺柄はどうだろう、荷物を運ぶ熟れたトマトもよい。
赤い実が果汁を流さなくなっても、私は、赤い実を食べ続けるだろう。
「エンド3 全て無くしても」
(了)
ひとこと
なんかのGL漫画を見て、こういう作品にたまにある『男』と『女』になにかもやもやして。なんかこう、例えば不快な男と逃げ込む先の女みたいな。(あくまで見た作品中の一例)そうじゃないものを書きたかったやつ。
もうちょっとエロくてもよかったかなぁ。
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