君は希望を作っている #29

 まぁ、そうそう希望が……あった。
 そういえば、海老原くんって気になる人いたんだっけ。
 詳しいことは知らないけれど、上手くいって欲しいなぁ。
 沙羽はそんなことをいいながらキーボートを叩く。
「沙羽さん、プログラミングをなさらないのでしたら、講義に参加したらどうですか」
佐藤が沙羽に注意をする。
「え、でも、公募の為ならいいって言ったじゃないですか」
沙羽の意に介さない問いを佐藤は逆に問い詰める
「でしたら、まずはきぼうのことを書きなさい、障害のことも包み隠さずオープンに。それから、理解のある支援者、『こうなんだから理解を下さい』って、ご迷惑はかけませんようにしますから、私達もあなた達の所に入れて下さいってお願いするのよ?それから……」
佐藤の声に淡々と沙羽はキーボードを叩く、佐藤は、そうです、そうです、と打ちこまれている文章には気を留めず、頷いていた。
 でも、キューピットってどうすればいいんだろう?
 沙羽は昼休みになると、パソコンを閉じてスーパーに行こうとしたところでいつものように黒崎に呼び止められた。
「なによ、わかるでしょ、まだ、一人歩きは怖いのよ」
「あ、海老原君ね」
沙羽はそこで気が付いた、そうか、邪魔者は消えればいいんだ。
「やっぱり私今日はスーパーじゃなく反対方向のコンビニにいくね、じゃ」
と、海老原と黒崎を二人だけでスーパーへ行かせようとした、黒崎は驚いて言った。
「ちょっと、海老原君はあんたの友達でしょ?私と海老原君二人でどうしろっていうのよ」
僕は別に……照れる海老原を聞かず黒崎は沙羽に詰め寄る、
「二人ならいかない、紅茶とサラダとクロワッサン、買ってきて」
えぇ、沙羽は戸惑う。
「うるさいわね、何よこんな男、私には、優しくて、真面目で、温かな人が合うの、お金も地位も名声も思いのままの人生を、あなたと……」
うっとりと自分の世界に入った黒崎を、またか、と沙羽のスマホにTwitterの通知、海老原からのDMが来ていた。
「なにあれ、言っちゃったの?」
「言ってない、だってなんか変じゃない?」
「だよね、っていうか、それ、僕やその誰かでもじゃなくてもいいんじゃ……。まぁ、頑張るけど。でも……こうして一途に人を思っているのがまた可愛いなぁ、その相手が自分だったらなぁって思うよ」
DMは終わった、沙羽は色んな考え方があるんだなぁと納得してスマホをしまう、黒崎はまだ杖をついて、海老原の手助けをもらいながら、スーパーへ向かう。
「ね、ビッグ飽きたんだけど」
「そうだね、今日はなんか買おうか」
「賛成」
そしてめいめいが買い物を済ませ、希望に戻る。
 あぁ、上手くいかないなぁ、沙羽は一人愚痴る。
 皆で買ってきた弁当を囲む、沙羽は大きめのカツ丼をかっこみながら言った。
「公募間に合うかな」
「そういえば沙羽っち小説を書くんだよね」
海老原はスーパーの御寿司を美味しそうに食べながら言った。
「まぁ純文学なんてどうせ売れないんでしょ?」
黒崎の何気ない一言に、沙羽は、うん、と頷く。
「っていうかあんたちょっと食べすぎじゃない?……まぁ、どこに入っているのかは、聞きたくないけど」
黒崎は沙羽の豊かな胸を見て言った、沙羽は慣れているのか、意に介さずカツ丼をパクついている。

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