悪役令嬢が支配する未詠唱の呪文だけが正当な世界で俺だけが詠唱必須のゴミスキル『俳句』持ちだからパーティーからも追放されましたが後からチートスキルだったと気づいてももう遅い
BFC3駄目だったよ。
このジョウ番国は、海に面してなんもないたまに雪のとても平和な国だんべさ、魔王なんかいないべ。いたとしても熊が猪かゴブリンがたまーに畑を荒らして冒険者を雇うぐらいだっぺさ。
そんなちんけな国に、突如『オリセキタン』の鉱脈が見つかったんだからまぁ大変だっぺさ、おらが国は空前のオリセキタンラッシュ、猫も杓子も、煙草屋のおばちゃんも、みんながそろいもそろって国のシンボルである『バンダイ山』にいっちまっただ、おらも銭っこのためには行くんべ。
掘っても掘ってもオリセキタンはわんさかでるべ、でもさ、それみんな俺げのものかつぅとそうさ問屋さおろさねぇべ、この国には、『大黒屋』って栄えてる商家があるべさ、そこんとこのアオイ家のお嬢さんがさ、まぁまぁのわがままッコでさ。稼ぎさ、みんな持ってっちまうだ。
俺らさ生活できねぇわけじゃじゃなかんべよ?にしてももう少しさ、トウトウじゃこんげなものさ汽車走らせるのに使ったりいインテリなもの作ったりそれはそれは銭ッコになるっていうべさ。ひとり占めとか、なしでそっだらとすんべってことだべ。
ところで山ではな、組のことを『パーティー』って言うべさ、で、パーティーのみんなさ、道具使わずにこう、ふん!って大きく手を広げるだけでわんさかオリセキタンほってっぺさ。
なんだべ?ってみんなして魔法を使ってるらしいべ、なんでも俺はジンジャー小学校しかでてねぇべけど、チュウ学さ行ったらそっだらことも習うらしいべ。
だば、俺げそったらことできねぇべ、たーだぐずに道具かついで今日もよっらせって掘るべした。んでもパーティーにはお荷物だべんな、とうとうある日追放されただ。
ある日、山に偉い人がくるって言うんでねぇの、まぁ関係ねぇべってしたら、こう、綺麗な娘っ子さずっとおれのこっさ見てんべ。
「……ねぇ、あなた、魔法は使えないの?」
「おれか?俺げはバカだしな……」
そこまで言って、おらはふと思った、おれは馬鹿でも、これは覚えてるぞ。
「そうだ、見てけろ」
そしておらは石の山に向かってこんなことを叫んだ
「五月雨のあつめて流るオリセキタン」
したっけ、五月雨みたいな雨がいきなしどうどうと現れて、その石の山さ洗い流して、オリセキタンさいっぺぇでてきたんだべさ。
「あら、やるじゃないの」
おれのずっと呼んでたのは俳句の本だべさ、その瞬間をとらえるんだべさ、だっとも、その瞬間起きることが詠んだ通りさなるべって聞いたことさねぇべ。
「あなた、詠唱呪文使いなのね、珍しいわ、私は大黒屋のアオイ家の次期党首、覚えておくことね」
アオイさんはべっぴんだ。んだも
「アオイを見つけて欲張り大黒屋つぶすぞ!」
「あぁ!」
いきなし山のみんなさ団結したべ、んだらこんなめんごい娘っ子ほっとくやつもいねぇべ、おらは
「夏草や兵どもが山護る!」
って詠んだべ、したっけ夏草が纏まって兵士みたいになって俺ら助けてくれたさ。
俺らは逃げた、どこだか、とりあえず鳥小屋さ逃げたべ。
「……しかたないわよ、私だって……ねぇこれ見て?」
アオイさんはぴかぴかしたガラスみたいな見たことねぇものを出した。
「これね、前、未来から来たっていうシズちゃんに貰ったの」
『SDGSの世界に向けて、オリセキタンの排出するCO2は……』
ガラスがなんか喋っただ。
「……ほら、これが私のいるべき所だっていうのよ、どう思う?」
ガラスがなんか写すだ、そこには、頭さ花輪つけて、尻振って裸みてぇなかっこで踊るアオイさんがいたんべ。おれはぎょうさんたまげて、嫁入り前の娘っ子さ、こげなこっさすんなつったべさ。
「でも、きっとオリセキタンはいつか山で取れなくなる、私にも見えたの、そしたら山でたくさん湧く温泉で、何かできないかなって……」
アオイさんは泣き出しただ、俺はバカだども、嘘ついてないことはわかっただ。
「そっちはどうだ?」
「いない、こっちか?」
追手が来ただ、俺は思いっきり
「荒縄や未来にいこふアオイさん!」
って叫ぶと、鳥小屋にあった荒縄がやさしくとらえて、アオイさんは消えただよ……。
それから俺は山さ帰らねぇで、アオイさんの言ったようにオリセキタンに頼らねぇ暮らしってのを作るため懸命にはたらいただ。
笑うやつもいたけどおらは今こうして田も山畑もあるし結局どっちが笑うかってことだべな。
大黒屋もなくなった、山もつぶれた、んでもって震災だ、色んなことがあっただけど、こうして孫めらに囲まれてるし、なんでも今は脱オリセキタンどころか脱セキーユでねぇか、アオイさんは、やっぱり嘘なんかついてなかったんだべ。
そういえばおめぇの好きなあのアオイさんきっとそうだべ、ほれシズちゃんとフラダンスした、アオイさんは変な眼鏡こそしてるけど真面目そうないいやつと結婚できたし、よかんべよかんべ。
※wikipedia 「松尾芭蕉」章参照
※一部磐梯の伝承より