見出し画像

あなたの瞳にファイ消しアタックcomplete 2

【二話 神も仏もあるもんか】
 あ~あ。つまんない。
 最近キューミラってアニメの影響で子供向けの化粧品が出てきたの。
 だけどそれ、おもちゃコーナーにあるのよね。化粧品コーナーの大人のが欲しいなぁ。
 つまんねぇ、黒崎のやつはファイ消し付き合うけどあんま喋んねぇし。まぁいいやつだよ?
 でもさ、いっつも黒い長い服来て暑くねぇのかな。もっとこう短パンとかでいいんじゃね、お、黒崎、黒崎?珍しく短パン!ってかなんかへんな服、着ているな。
「黒崎、なんだその、白いワンピースか?」
ええっと、なんだっけ、そうだ、こんなの確か教科書の古代ヨーロッパの辺りに絵が載っていた
「レオナルドダビンチだっけ?」
「勝太、お前も着ろ」
黒崎は表情一つ変えず俺に白いワンピース(?)を差し出した。
「恥ずかしいのか?脱げよ」
受け取ろうとしない俺に黒崎は耳打ちした
「極秘情報だ。未発売のホーリーペガサス。これを手にいれたくなら着ろ」
え?マジ?なんか面白そうじゃねぇか!しかたねぇな付き合ってやるか!
 しょうがないなぁ付き合うかぁ。
「でね、キューミラのリップが欲しいの。
色がいくつかあるから、瞳ちゃんが一番詳しいと思うの!お願い、おもちゃ屋さん付き合って!」
クラスメイトの桜ちゃんに言われたら仕方ないじゃない。大人も大変だなぁ、だからお父さんいつも帰り遅いんだ、今度カレー作ってあげようかなぁ。
「じゃランドセル置いたら行こう」
「やったぁ!」
この辺りはお父さんも務めるおもちゃ会社に勤める人が多くて、どこにでもおもちゃ屋さんがある。 
 黒崎のおじさんもたぶんそこで働いているのかな。
 レオナルドダビンチの服着た黒崎によると、ホーリーペガサスはまだ開発中で、なかでも極秘情報が、今回のファイ消しは『光』の神様の使いだそうだ。
 しかも、よく怖い映画つくるときお払いするみたいにちゃんとしかるべき所にお祈りしてちゃんと許可とって作る「光」の力が込められたものらしい。
 うわ、めっちゃほしい!
「だろ」
黒崎はニヒルに笑う、でもそのかっこうじゃなぁ、いや、似合ってはいるんだけど。
「でこのかっこうとどんな関係が?」
「大ありだ。その神様は古代ヨーロッパゆかりのものだ。
だからそこの祭のときは、皆古代ヨーロッパの服を着る」
「なるほど」
じゃ、これ法被みたいな扱いなのか。
「どうだ着るか、祭の必需品だぞ」
「着る!ホーリーペガサスにも会いたいし」
「頭にはこれだ、あと靴はこれ」
俺はさっそくシャツの上からもらった服に着替えた、お祭りの服なら恥ずかしくないや。
「で、どこでやるんだ?」
「あぁ、おじさんが迎えに来る。ついてこい」
しばらくして、いつだったか黒崎に何かを渡して去っていたおじさんが俺に会釈をした。車の中ではこの人もあんま喋んない、遺伝かぁ!遺伝じゃしょうがないなぁ。
―アイキャッチ:リップクリームー
「♪新発売!武道グミ!食べたら強くなる!フルヤ!♪」
―アイキャッチ:ボルカノンフェニックス―
「ってことで私イエベに合うの探して」
 スマホで『イエベのあなたへ』ってサイトを表示する
「これによると私はピンクの服とか避けたほうがいいのかなぁって。
ね、これとかどうかな?」
そういって桜ちゃんが差したのは薄いピンク。でもわたし、桜ちゃんには今日のピンクのワンピ似合っているし、もっと明るいピンクが似合うと思うの。
「化粧は詳しくないんです。はいすいません。
え?ほんとうに女性ですか、とは?あの、あなた『多様性』と言っていましたよね」
スマホで喋っている人がいる、こっち行こう。あ、桜ちゃんそれ買うの?桜は
「イエベだから明るいピンクは似合わない」
って、控えめなピンクの口紅を選んでいた。
わたしはサッと明るいピンクの口紅を差し出しながら言ったの。
「桜、その色試してみて」
桜は少し驚きながらも、その明るいピンクを塗ってみた。
すると、色が桜の大好きなピンクの服に見事にマッチして、桜の顔全体や雰囲気がパッと華やいだ。
「すごい!こんなに似合うなんて。ありがとう、瞳。頼んでよかった!」
うんうん、やっぱり似合うのが一番!
「じゃあ瞳ちゃんにも選んであげる!」
えぇっ?わたし?わたしはいいなかぁ、おもちゃだし。あ、でもこの価格なら、思い出にひとつ、いいかな。
「えぇっとねぇ、瞳ちゃんは白色ベースの、このピンクかな?あ、似合うよ瞳!」
ま、私はなんでも似合っちゃうの、当然よね。
 やっぱ似合うよ黒崎、その、レオナルドダビンチ。で、二人しておじさんの車を降りたら、来たのは一見したとこ神社。でも、鳥居はない。しかもなんでかお寺によくある鐘や観音様の仏像もあって、でもその観音様なんかこう
「変じゃね?」
「それか、それは江戸時代に迫害をおそれ観音様に似せて作られた聖マリア像だ」
お、笑ったぞ黒崎。
「で、みんなと神輿でも担ぐのか?」
俺の軽口を黒崎は笑わず静かに諭した
「お神輿はない。そもそもみんなはいない。俺と勝人。二人だけだ」
「え~っ聞いてねぇ!なんで?」
おどける俺に通常運転の黒崎。
「ここにいるのは兄弟の『双子神』だ。」
う、うん?話が違うぞ?いやいやそれよりもなによりもへっへへ。
「兄弟ねぇ……」
くう!そんな風に思ってくれたのか黒崎って。
「嫌か?」
「つれないのねぇわたしとあなたの仲じゃない!それより二人で何するの?あなたとなら」はしゃいでおどけていたのはいいんだよ。
 なんでこうなるのかなぁ。買ったキラキラリップはミントの香り。ミントの香りに合わせていたら香水も香り玉も消しゴムも欲しくなっちゃった。お小遣いたりないなぁ。
「瞳、アルバイトやらないか?神社の御子さんだそうだ」
お父さんが部屋をノックした、私は二つ返事でついていく。
「汝は晨朝あしたの蒔き散したるものをあつむ。
羊を集め、山羊やぎを集め、
母の懷に稚兒うなゐごを歸す」(※)
言われたから、わたしは月桂樹の冠を被って渡された紙通りの歌を歌ったけど。なんで黒崎と勝人があんなギリシャみたいな服にカッパみたいなカツラでガニ股ダンスを踊っているのよ!
 神聖さはどこ行ったの神聖さは!
 それでも歌う、歌い終わると白い光って
「「「ホーリーペガサス!」」」
生きているみたいに動いている。そして三つあるそれは一人一人の手の平の上へ舞い降りた。三人は同時に驚いた。へぇ、ちゃんとおもちゃにも神様の加護っていいよね。
「瞳!あいかわらず情報早いな!」
「勝人、そのカツラ何?」
「伝道師だ」
黒崎くんカツラ似合う。それからわたしたちはさっそくひとつずつ手に入れたホーリーペガサスで仲良くファイ消しバトル。
 同じのだと、テクニックの差が出ていいよね。勝っちゃった。
 ♪(ED歌)ど~んな時も負けない 勝利は男の(女の)やくそくだから~
 今日は 何色リップにする?
 どんな色も わたしなの♪
『次回 ファイ消しアタックは!
 あ~テストやだぁ!え?黒崎くん?お別れなの?わたし、あなたに伝えたいことが。伝えても、いいかな「最終話 いつかきっと」
うん!今日もばっちり!」
(続)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?