君は希望を作っている #32

「で、希望ってどんな味だったの」
社長は皆に聞いて来た。
「美味しかったの?僕も今度食べに来ようかな。お土産ないの?」
黒崎はむすっとした。
「それが、売ってなかったですって、当たり前じゃない、馬鹿じゃないの」
「うーん、そうか、でも黒崎さんもそれにしてはよく来てくれたね?」
黒崎は少し照れた、
「私の思い人がいるの」
「おっ!いいねぇ、ねぇ男二人しかいないけどまさかこんなイケメン二人無視して百合ってことないよね?それとも君たちそういう関係?」
社長は茶々を入れる、黒崎は尚更むくれた、
「ま、それはそれとして、船橋だっけ?じゃ、行こうか、ちょっと歌掛けるよ」
男性の歌手が歌う。社長は囁く、この歌のタイトルも希望だよ。
 そして社長もその歌声に合わせて歌いだす、柔らかな歌声に、沙羽は食べるのも忘れて少し寝てしまった。
 船橋でやっていた宇宙展は、デパートの空間を借りたものだった。
 沙羽は到着したところで起こされて、早速最上階へ。
 星座のパネル、惑星のオブジェ、宇宙空間を体験できる回る星座の書かれた人の入れる大きな筒。
「沙羽さん、待って、これ怖い」
「社長、これはね……」
へっぴり腰の社長に、沙羽は冷静に説明しながら、どんどん先へ行く。
 黒崎はゲームで高得点を取ってガッツポーズをして海老原に拍手をもらう。
 みんなで宇宙服を着てみる。
 あまりぱっとしなかったものではあるけれど、皆文句を言うことは無かった。それどころかとても楽しそうだ、沙羽はほっとした様子だ、支援者は微笑んで見守っていた。
「じゃあ、僕はまた用があるから、ここから帰れるよね?」
船橋駅で社長が言った。
「また誘って下さいね」
黒崎がしなを作る。
「あぁ、そうでした、今日はきぼうの課外活動扱いになるんです、皆さん、向こうに着いてからでいいですから、少し、お願いします」
支援者が言う、皆は駅で電車に乗る。
 しかし、そこで沙羽が人混みに疲れて座り込んでしまったのだ。
「大丈夫ですか?」
支援者に、沙羽はしばらく座っていれば……と答える。
「えっと、聴覚過敏でしたっけ」
うん、沙羽は元気がない。
 そして沙羽がこんななので、混んでいる電車を避けて皆帰った。
 支援者は少しの気持ちをもらって、皆めいめいに帰っていった。

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