君は希望を作っている #11

 沙羽は佐藤にどうですかと薦められて、気が進まないのかあいまいな返事をして、社長に
「一緒に働くの嫌なの?」
と聞かれて、
「事務って何するんです?」
と逆に沙羽が真顔で聞き返した。
「まぁ、事務の仕事がわかんないんじゃしょうがないよ、次の機会があればね」
ときぼうを後にした社長に、ビジネスライクな話だなぁ、と沙羽は呟いたけれど、事務が何しているかもわからないらしいのに、沙羽にビジネスライクの意味がわかるのだろうか?
「社長さんのところで事務補助なんていい話なのに」
佐藤を沙羽は無視した。クラウドソーシングねぇ。
 沙羽はやってみなかったわけではなかった。でもプロフィールにこれといったものがあるわけでもない沙羽は、いくらソフトを辛うじて使ってみても、ライバルを出し抜いて仕事をもらうことは出来ずに、色鉛筆で描いた小さな絵の参加賞をもらうにとどまっていた。
 もうかる事案ねぇ。考えたことなかったなぁ。
 こないだやってみて、改めて自分のプログラミングスキルに疑問を持った沙羽は、プログラミングスクールの謳い文句が並ぶアフィリエイトサイトをかわしながら言った。
 まぁ、どんな世界でも、腕だけど。
 沙羽はしかめ面でプログラミング参考サイトを回っただけできぼうを後にして、あくる日はきぼうがないので、音楽を聴きながら自室でWebに投稿する小説を書いていた。
 なんとなく退屈なのでtwitterを開く、そこで友人と雑談するとこう言われた。
「うーん、沙羽さんがやりたいことがわからないなぁ」
彼はカードゲームの友人だが、別のアドバイスもしてきた。
「えぇ?まぁアプリ作って就活の面接に持って行こうかなって」
沙羽はお行儀のいい答えを言ったので、彼は笑った。
「またまたぁ、アプリってけっこうな値段、何百万とか何億で売ったって話聞くよ?」
リプが繋がっている。
「作って売って繰り返せば働くことなくない?ウギン見せてよ、カーン様とか揃えて光らせてレガシーに来ようよ」
そんな風にカードゲームの話にしかならないとしても、金銭事情が豊かのほうがゲームに使えるお金も多いし、心配してくれるのは嬉しいので、沙羽は黙っていた。
 画面を変えて何気なく見たいつもの占いに、「幸せになることを恐れてはなりません」と言われて、沙羽は当たっているのかいないのか微妙だと呟いた。
 で、なんとかこれでWebの更新分終わり、えぇっとフリーランスね。
 沙羽はクラウドソーシングのサイトを開いた。
 こないだやってみたのはまだまだだけど、もうちょっと勉強すれば仕事をもらえるようになるかもしれない。
 どんなスキルが必要かは、なんとなくわかったし。

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