君は希望を作っている #1

公募に出したものを文フリもないのでここで公開します。時間のある時にでもお読みください、なお昨年書いたので登場人物が長距離の移動をする描写が出てきます(なんだこの一文)。

※この小説はフィクションです、実在のいろいろとは関係ありません。

参考サイト JAXAホームページ

国際天文学連合

https://www.iau-100.org/name-exoworlds

マクドナルド障害者雇用

http://www.mcdonalds.co.jp/company/community/employee/


参考DVD 華麗なるギャツビー:(ワーナー・ホーム・ビデオ)レオナルド・ディカプリオ 他出演
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 君は希望を作っている

                          夏川 大空

 希望が食べたい。
 近所のスーパーに行ったところで、思い出したように沙羽はそう言った。
 あとじゃがいもはあるし……そうだ希望、希望はどこにあるのだろう?
 一昨年に震災の生々しい傷痕としての仮設がいまだ残る福島から関東に越して来てから全然見ていない、ここ十年ぐらいご無沙汰だった気がする。思い出したら久しぶりに食べたくなった。
 人参と一緒にきんぴらにするのは牛蒡だった。
 確か、子供の頃はお菓子コーナーあたりでよく見かけた気がする、そう言って、沙羽は子供の頃よく駄々をこねて買ってもらったペロペロ菓子を手に取ったものの、希望がそんな甘ったるい味がするとは思えなかった。それにこれはチョコ棒だし。
 しかたなく沙羽は納豆だけ会計して、バックに押し込み「ここじゃない、どこかにあるんだ」とまだ頭の包帯が取れていない姿のまま急いだ。
 そして言った、希望も置いていないなんて、品ぞろえの悪いスーパーだ。
希望が食べたい。無いとなると無性に食べたくなった。
 ここを少し歩けば別系列のスーパーがあったはずだ。何でもそろっている。
 財布を開ける、三千五百数円、希望はいくらだろう。
 果物コーナーには林檎やミカンに葡萄、……希望がない、二つに割ってスプーンで食べるヨーグルトに合う甘酸っぱいあれはキウイだ。
 沙羽は結局何も買わずに、そのまま引き返した。
「あら、お帰り」
老母が台所で何かを煮ていた、近所に住む孫に食べさせるのだというハンバーグは、トマトケチャップに絡められて希望味ではなさそうだった。
「佐藤さんから電話きたよ」
「うん」
台所からはごちそうの匂いがしたけれど、希望の匂いはしなかった。
「職探しもいいけど、手術後なんだからもう少し休んでなさい」
沙羽は黙ってバックからスマホを出して、ポチポチとやりだした。
「せっかく手術成功したんだから、警備のバイト首になったぐらいで済んでよかったじゃない」
沙羽は何も言わずソファに座っている。
「そりゃこの街に来て最初のバイトかもだけど、また探せばいいじゃない」
沙羽はピポピポ言っているスマホをそのままにして言った。
「……そのバイトの面接にもよく落ちたんだけど」
「そんなの、どこかにいい仕事があるって」
母の言葉に沙羽は目を伏せる。
「っていうか急病だったのに、やっぱ首になったし」
「ほら、だからやっぱり正社員の方が……」
沙羽は何度も言ったことを言う。
「女性、年齢、経験。話もしてくれないんだって」
沙羽はスマホを手に自分の部屋へ、老母はため息をついてからポテトサラダをかき回した。
 ピピピ。
 一人部屋でだらだら寝転んでいる沙羽のスマホが鳴る。
「はい、保坂です」
「佐藤です、沙羽さんどう?仕事探しは進んでいます?」
「全然」
沙羽は嫌そうな顔になった。
「あらそう。まぁ沙羽さんは脳腫瘍やったんだからまだリハビリが必要ですからね、気を張らずにやっていけばいいんじゃないですか」
佐藤の声は明るかった。
「はい」
沙羽がスマホを切ろうとしたら、佐藤はいきなり大きな声を受話器越しに張り上げた。
「そうだ沙羽さん、お暇なら、わたしの『NPOきぼう』でやっている就労移行支援施設、『きぼう』に来ない?あなたみたいな、病気でしばらく働けない人も来るところなのよ」
NPOきぼう。沙羽は寝転んで呟いた。希望って団体だったの?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?