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アニスパと私

2021/9/9(木)、一夜限りで復活した「アニスパ!」。5年半ぶりの復活を期に、自分とこの番組の微妙な距離感を振り返りたい。

今でこそアイマスPやウマ娘のトレーナーや女性声優のオタクをしている私だが、アニスパを聴いていた中学時代は、アニメにもゲームにも声優にも全く触れない生活を送っていた。そんな私がアニスパを聴き始めた理由は、「風呂に入る時間帯の番組」、ただそれだけだった。

朝起きてから夕飯時まで、ずっとラジオが流れているのが私の家だ。面白い番組もあればそうでもない番組もあるものの、夕飯後に録画した番組を見るまではテレビに変えることはほとんどなく、聴いていてもそうでなくても、BGMとしてただ流れている、空気のような存在。

幼い頃からそんな環境で過ごしてきた自分にとっては、ラジオは好き嫌いで語るものではなく生活の一部だった。一人で風呂に入るようになった時期からは、静かな湯舟に一人浮かぶのが寂しくて、お目当ての番組がある訳でもないのに防水ラジオを浴槽に持ち込む始末(高校に上がってからは、ラジオが英単語CDに置き換わってしまったが)。スポーツに大して興味のない私が、野球だけはある程度知っているのは、野球中継を聴いていたからに他ならない。

小学校高学年~中学生の時期に風呂に入っていた時間帯と被る21時~23時に、リビングでいつも聴いていた周波数・1134で放送されていたのが、「アニスパ!」だった。

今振り返ると、アニスパに限らず、文化放送の土日夜は大抵アニラジ・声優ラジオだったように思う。ただ、前述したように、アニメも声優も全く知らない私にとっては、アニラジかそうでないかはどちらでも良く、番組の判断基準は「面白いか・面白くないか」だけだった。

言い方は悪くなるが、大抵の声優ラジオ・アニラジは「パーソナリティが誰か」を重要視していて、純粋な番組としての面白さは二の次となる印象がある。声優さんの本業は声を当てることで、ラジオパーソナリティではないのだから当たり前なのだが、びっくりするぐらいトークがつまらない番組もあって、トークの主が声優であることを知らない当時の私は、「なんでこんなに面白くない人が番組を持っているんだろう……」と本気で思っていた(もちろん全ての番組に対してではなく一部の話、念のため)。

ちなみに平日夜の文化放送は、帯番組内で某男性アイドル事務所の箱番をやっているのだが、こちらも似たようなもので、聞くに堪えなかった番組は10年経った今でも忘れられない。

だが、純粋なラジオ番組としてはどんなに面白くないものだったとしても、番組のターゲット層がパーソナリティのファンである以上は、「パーソナリティが話していること」自体が大きな価値となる訳で、私のような通りすがりがどう感じようと関係ないのだ(このことに気付けたのはここ一年、声優ファンを始めてからの出来事)。

トークスキルがどうであれ、好きな人間が話をしてくれる時間ほどありがたいものはない。部外者があれこれ言うような話ではないのだ。無礼でガキだった自分、文化放送に頭下げてこ~い!

と、一応弁明してはみたものの、当時の私は声優やアニメコンテンツを知らない以上、面白くないものはどう転んでも面白くないのは仕方ないことで、「(トークスキル欠如で)つまらない」、または、「そこそこ面白いけど、背景知識がない故に楽しみ切れない」存在、それがアニラジ・声優ラジオだった。当時はジャンルとしてとすら認識できていなかった訳で、夜ラジオはよく分からない人たちが喋っている、ぐらいにしか思っていなかった気がする。

(ここまで無茶苦茶に書いているが、冒頭にも書いたように、番組がどうあれどラジオは空気なので、なんだかんだ思いながらも聴いていた。ラジオとはそういうものだったので。)


そんな私にとっての数少ない「面白い夜ラジオ」が、アニスパだった。鷲崎さんと浅野さんのトークスキルがいかに群を抜いているかは説明するまでもないので割愛するが、彼らが何者なのかを全く知らない私が聴いていても、お二人のトークは本当に面白かった。

鷲崎さんも浅野さんも、それぞれお一人でご活躍されていることは知っているし、現在レギュラーで持たれている番組も聴いたことがあるが、それでも、笑いと毒が目まぐるしく展開していくあの唯一無二のトークは、あの二人からでしか生まれないものなんだ、と再確認してしまう。「伝説のアニラジ」として語られることが多い番組である一方で、未だに声優ラジオに対する捻くれた見方が抜けきれない私は、アニラジの括りにとどめておくには勿体ない番組だと思ってしまうのであった……。

浅野さんの本業が声優だと知ったのは、本当に最近のことで、それまでは「ラジオパーソナリティの傍ら、どうやら他の仕事もしているらしい人」という認識だった。普通に売れっ子の声優さんで、文筆業もされている。改めて、末恐ろしいお方。本当に。


私のお風呂タイムとアニスパが被るのは21:00~21:30、ゲストがスタジオ入りする前のOPフリートークの時間帯。今思うと、アニスパもゲストを呼ぶ番組であった以上、他のアニラジ同様に「背景知識がない故に楽しみ切れない」状態になってもおかしくなかったのだが、風呂の外に出たら防水ラジオの電源を切る私にとってのアニスパはこの30分だけだったから、知識がなくてもトークを聴いて笑うことができた。逆によかったのかもしれない。

21:30以降の残りの1時間半の楽しみ方を知らなかった私は、多くのアニスパリスナーと比べれば随分ライトなリスナーであることに間違いはない。鷲崎さんと浅野さんのフリートークだけを楽しみにする聴き方は、紛れもなくアニラジであったアニスパの本来の楽しみ方とはずれているような気もする(「微妙な距離感」とは、このこと)。

それでも、深夜ラジオ特有のあのノリに出会い、好きになることができたのは、アニスパのおかげだ。そう考えると、アニスパは人生の特異点だったのかもしれない。

当時に何かが大きく変わったタイプの特異点ではなく、後になって気付くタイプの特異点。あの番組を聴いていた過去がなかったら、今声優オタクをやっていることもなかったかもしれないからだ。

突然話が飛んだ自覚がある。ここについて書き始めると間違いなく長くなるので、今日はこのあたりで筆を置く。アニスパとの出会いに感謝。続きはあるかもしれないし、ないかもしれない。マハラジャになりたい。


といいつつも最後に少しだけ、オタクの戯言中の戯言を……。青木瑠璃子さんと浅野さんは何か通じるものがある気がする、という話。アニスパで浅野さんのトークに出会っていなかったら、青木さんのトークを聴いて面白いと思える感性は育っていなかったんじゃないか。という話。浅野さんの方が大分鋭利なんですがね。



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