映画『ダンシングホームレス』

『ダンシングホームレス』
2020.3.12 鑑賞

 正直音楽目当てに見に行ったけど、予想以上によかった。はじまってすぐに何の説明もなく踊っているシーンが流れたけれど、涙が出そうになったな。自分は多分ホームレスに対して偏見があると思っていたから、そういうのを無くしてみようと意識していた。でも、”そう思うこと”すら偏見だし、そのシーンでそんなことを意識することすら不要だと言われているような気がした。
 劇中で使われていた「パレード」は、そもそも映画『パプリカ』で無機物たちがパレードしてるシーンで使われている。で、その無機物一行は密林砂漠を抜けてビルの立ち並ぶ街へ向かっている。目まぐるしく進歩する社会の中で打ち捨てられていく無機物と、ソケリッサの方たちがリンクしてしまって「パレード」が流れるたび辛くなった。当人たちは何も変わっていなくても、環境や風潮といった周囲が変わってしまうことで退けられたり切り捨てられたりする。また、勝手な個人の解釈ではあるけれど、「パレード」の歌詞は現代に溢れる邪なものに侵食される人間を描いていると思っている。(邪なもの=食品添加物、真偽不明な情報、効率や利便性のために加えられた本来不要なもの etc…、大衆受けするものやマジョリティーの意も含む)だから、そこでも大衆の象徴のような街である新宿で静かに、でも確かに強かに生きている姿が重なって感情を揺さぶられた。
 私はダンスに詳しいわけじゃないし、見ていた踊りの中で美しいと思うものもあれば、そうではないものもあった。でも、あのダンスの中やソケリッサという場所の中にはホームレスであるなしに関係ない人間の自由な姿があるんじゃないかと思った。自由が認められた場所での人間の発露は無条件に心を揺さぶるものがあるのかなぁとも。この辺りのことは曖昧に思っているだけですが.……。
 ダンスを見ていて一番グッときたのは横内真人さん。魅力的だと思ったのは平川収一郎さん。体の線の細さとスタイルの良さ、無邪気な面を持ちながらちょっとカッコつけなところが好きやなって思いました。

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