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航空大学校受験!〜近年の総合Ⅱの傾向の変化について〜

みなさん、こんにちは!ソラシベリアンです。

さて今日は、「受験対策シリーズ〜近年の総合Ⅱの傾向の変化編〜」についてお届けしたいと思います。#待望のシリーズ新章へ突入

過去問を通して受験勉強をしていた当時には、まだ試験問題(物理・数学)の傾向に変化があるとは感じませんでした。

しかし、(2020年の試験は少し変化、)令和3年度、令和4年度と近年少しずつ問題傾向が変化しているように感じています。

どんな変化をしているのか、一言で言うと、「公式活用から理解の問題へ」といったところでしょうか。

以前までは、物理・数学の典型的な問題や、公式の応用といった、受験問題っぽい問題で構成されていました。#抽象的でごめんなさい

しかし、近年、そういった問題が大半ではあるものの、1〜3問程度、現象や理屈をきちんと理解しているのかを問われる問題が増えてきました。

この件について、具体的な問題例を交えて、
① 現象・理屈の何を問われているのか
② どのように対策したらいいのか
この2本立てでお届けしたいと思います。

この記事を通して、みなさんの受験が悔いなく終えられることを願っています。


物理現象の何を問われているのか

具体的に、出題された問題(3問程度)を元に話を進めていきましょう。

令和4年度 総合Ⅱ 問9

水平な床の上で一定の角速度で回転している円板がある。A さんは円板上の回転中心から離れたところに静かに立っている。A さんにとって成り立っている運動の法則はどれか。最も適するものを1つ選び,解答用紙にマークせよ。空気の力は無視するものとする。(6点)
(1) 何も力が働いていないため,A さんは静止している
(2) 重力,床からの垂直抗力がつりあっているため,A さんは静止している
(3) 重力,床からの垂直抗力,向心力がつりあっているため,A さんは静止している
(4) 重力,床からの垂直抗力,床からの摩擦力,向心力がつりあっているため,A さんは静止している
(5) 重力,床からの垂直抗力,床からの摩擦力,遠心力がつりあっているため,A さんは静止している

航空大学校HP  

この問題のポイントは「観測者の立場によって働く力の見え方が異なる」点です。

簡単に言うと、
・円板上の観測者の立場で考えると、遠心力が働いている
・地上の観測者の立場で考えると、遠心力は働いていない
と、観測者の立場によって働く力の見え方が異なるんです。

出題された問題では、前者の立場で考えるパターンですね。
Aさん(円板上の観測者)にとって働く力は、
            鉛直方向:重力(W)、床からの垂直抗力(N)
            水平方向:床からの摩擦力(Ff)、遠心力(F)
の4つの力が働き、各方向で釣り合っている状態です。
(なので、答えは5番)

図1:Aさんに働く力(円板上の観測者から)

次に、地上の観測者の立場でも考えて見ましょう。
Bさん(地上の観測者)から見たAさんに働く力は、
            鉛直方向:重力(W)、床からの垂直抗力(N)
            水平方向:床からの摩擦力(Ff)
の3つです。そして、円運動をするためには向心力が必要で、床からの摩擦力(Ff)が向心力の働きをしているという見え方なんです。

図2:Aさんに働く力(地上の観測者Bさんから)

選択肢自体には迷うものがないので、
「解答はあっていたけど、そこまで深くは考えていなかった」人も少なくないと思います。

しかし、このようにもう少し踏み込んだ所を理解しておかないと、今後の理解を求められる問題に対応できない可能性があります。

みなさんの中には「なるほど、遠心力は円板上の観測者にだけ働くんだね。覚えました!」という人がいるかもしれません。

もう少し、掘り下げて考えてみましょう。どうして、このような違いが生まれるのでしょうか。

円板上の観測者にとっての運動

たった1つの質問で、あなたが文系か理系かを判断して見せます。
#個人の偏見です。ご容赦ください。

Q. 円板上にいるAさん(回転してる人)から見たAさんって回転していますか?
#ここが物理を嫌いになるところ
#今日で克服しよう

じゃあさ、もっと大きく考えてみようよ! #冷静さを失いました

あなたは今、回転していますか?
#今この文章を読んでいるあなたに問うています

回転していないよね!でも、あなたは地球上にいる。
地球は自転していて、その上にいるから回転してるはずなんだけど、、、
あなた自身は自分が回転していないと思っている。

回転体の上に立って一緒に回転しているとき、自分は静止していると考えることができるんです。
#今、あなたもパソコンの前で静止しているでしょう?

さあ、今こそ先ほどの図に立ち返りましょう!

図1:Aさんに働く力(円板上の観測者から)

Aさんは、静止しているんです。静止しているってことは、Aさんに働く力は釣り合っていなければなりません!式で表すと、
                              重力(W) = 床からの垂直抗力(N)
            床からの摩擦力(Ff) = 遠心力(F)

「なるほど、だからこの式が成り立つのかあ」って思ったんじゃないですか?

地上の観測者から見た運動

「ちょっと待って!さっき地上の観測者から見たAさんに働く力は、重力(W)・床からの垂直抗力(N)・床からの摩擦力(Ff)の3つだけだった。水平方向で力は釣り合っていないようけど、釣り合ってないとかあり得るの?」
って思った人もいるかもしれません。

この説明をしたら、分かってくれる人が増えるはず。

じゃあ、同じように地上の観測者から見たAさんの運動を考えよう。もう、この質問には答えられるよね。

Q. 地上の観測者から見たAさんって回転していますか?

A. 当然、回転している。

試しに、地球から少し離れたところから、地球を見てみよう。すごい速さで自転している。そして、地球上にいるAさんも地球と一緒に回転している。

そう、円運動をしているんだよ。決して静止していない。
ここで、先ほどの図に立ち返ろう。

図2:Aさんに働く力(地上の観測者Bさんから)

Bさん(地上の観測者)から見たAさんに働く力は、
            鉛直方向:重力(W)、床からの垂直抗力(N)
            水平方向:床からの摩擦力(Ff)

Aさんは鉛直方向(縦)には運動していないので、
                              重力(W) = 床からの垂直抗力(N)
(床からの摩擦力(Ff)については後ほど回収します)

そして水平方向では、運動している。等速円運動では、角速度は一定だが、Aさんの速度は変化し続けている。上から見ると、

図3:円運動を上から見た図

①、②、③の地点での速度を考えてみよう。速度の大きさ(速さ)は等しい。しかし、向きが異なっている。
#ここも物理で混乱するところ(速度と速さの違い)

①から回転して、③の位置に行く運動を見てみる。

①:上向きの速度だけを持っている

上向きの速度がだんだん小さくなり、左向きの速度がだんだん大きくなる

②:上向きと左向きの速度が同じ大きさ(合成した速度の大きさは不変)

さらに上向きの速度がだんだん小さくなり、左向きの速度がだんだん大きくなる

③:左向きの速度だけを持っている

よって、①→②→③の過程で、
上向きの速度は減速し、横向きの速度は加速している。

速度が加減速するには、力が必要。その力はどこからきているのか、、、

もうお分かりでしょう。先ほど釣り合いの式に入れてもらえずに野放しになっていた床からの摩擦力(Ff)が、速度を加減速させているのです!
#見事に回収してみせました
(この円運動するために必要な力を向心力と呼びます。)

この問題まとめ

この手のシチュエーションを題材にした問題では、こんな発展問題が考えられます。

「水平な床の上で一定の角速度で回転している円板がある。A さんは円板上の回転中心から r 離れたところに静かに立っている。Aさんが滑り出さないための条件を答えよ。ただし、角速度をω、静止摩擦係数をμとする。」

今までの議論を踏まえると、この問題には2つの立場の解き方が考えられます(円板上の観測者と地上の観測者)。

① 円板上の観測者で考える
円板上の観測者にとって働く力は釣り合っているので、
                              重力(W) = 床からの垂直抗力(N)
            床からの摩擦力(Ff) = 遠心力(F)
が成り立ちます。

あとは、滑りださないための条件、
                                  遠心力 ≦ 最大静止摩擦力
を満たすようにしたらOKです。

② 地上の観測者で考える
鉛直方向の力は釣り合っているので、
                              重力(W) = 床からの垂直抗力(N)
水平方向では運動しているので、運動方程式が成り立ち、
                                             F = ma
Aさんが滑り出さないために、この向心力が最大静止摩擦力より大きくなってはいけないので、
                                  向心力F ≦ 最大静止摩擦力

以上のような解き方になります。noteでは数式がうまく打ち込めず、言葉での式の説明になってしまいました、ごめんなさい。

やりやすい方で計算したら良いと思います。しかし、自分が①、②のどちらで考えているのか。①と②は根本的にどんな考え方で現象を捉えているのか。
そこはしっかりと理解しておきましょう。

どのように対策したらいいのか

ここからが本題です。

書いていたら熱を帯びてしまい、当初3問ほど例を挙げるつもりが、1問しか挙げられませんでした。しかしどこまで行っても前振りなので心配要りません。

前振りを通して言いたかったことは、
「公式に数値を代入するだけでは、解けない問題が増えてきました」
ということ。

じゃあ、どうしたらいいのか?

過去問をなんとなく解けたで終わらせない

過去問を解いていて、公式に数値を代入したらなんとなく解けました!
っていう問題がありますよね。

そういった問題を振り返って、
   ・どういう現象・定義の問題なのか
   ・どうして、この公式を使うのか
そこを掘り下げて考えなきゃいけないと思います。

過去問は速く解くのではなく、深く解く

いい感じの言葉を発しました。

試験には制限時間が付き物なので、どうしてもスピード重視になってしましがちです。確かに、初めてその年度の過去問を解くのなら、スピードを意識しながら測って解くべきです。
#本番どのくらいで解けば良いのかペースを知ろう!

しかし、復習するときにしてしまいがちなミスは、
「どうやったら、もっと速く解くことができるか?」の1本に走ってしまうこと。

速く解けるように練習するのは、試験2〜3ヶ月前からで十分。

それよりもまずは、試験に出てきた現象をきちんと理解しているか。なぜそのような解き方をするのか。ここを問うてください。

ここをクリアしたら、いつの間にかスピードなんて十分なくらい速くなってます。
#図が思い浮かんで、解き方も分かっているのなら後は計算するだけ

というわけで、1度目に時間を測って解いたら、後は深く過去問研究していきましょう!


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