政府の能動的サイバー防御強化:国立病院・防衛産業へ拡大、情報共有体制の確立へ
サイバーセキュリティ最新動向:医療機関と防衛産業のデジタル防衛強化へ
近年、重要インフラへのサイバー攻撃が急増する中、政府は従来の受動的な防御から積極的な防衛体制への転換を図っています。2019年の三菱電機へのサイバー攻撃による機密情報流出事案を教訓に、政府は「能動的サイバー防御」の対象を国立病院や防衛産業にまで拡大する方針を固めました。新設される「国家サイバー統括室」を中心とした官民連携の情報共有体制により、重要インフラのサイバーセキュリティ強化が図られます。医療システムの機能停止や防衛関連情報の流出は国家安全保障に直接的な影響を及ぼすため、この新たな取り組みは日本のサイバーセキュリティにおける重要な転換点となります。
新たなサイバーセキュリティ体制の概要
国家サイバー統括室の設立と役割
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を発展的に改組し、新たに設立される「国家サイバー統括室」は、官民間の情報共有の中核を担います。この組織は、国内外のサイバー脅威情報を一元管理し、参加機関との迅速な情報共有を実現します。
情報共有フレームワークの特徴
平時からの脅威情報共有体制の確立
サイバー攻撃発生時の政府への報告義務化
事業者の自主的な参加を基本とする柔軟な運用体制
攻撃元への積極的な対処措置の実施
医療機関におけるサイバーセキュリティ強化
国立病院優先の段階的アプローチ
政府は、まず地域の医療体制の要となる国立病院のサイバーセキュリティ強化を優先します。具体的な対象となる施設は:
大規模病床を有する基幹病院
救命救急センター設置病院
地域の中核医療機関
医療機関特有の保護措置
医療システムの継続的な運用確保
患者データの保護強化
緊急時の即応体制の整備
防衛産業のサイバーセキュリティ体制
2019年の教訓を活かした新体制
三菱電機のサイバー攻撃事案では、59件もの機密情報流出の可能性が明らかになりました。この経験を踏まえ、以下の対策が強化されます:
防衛関連企業の情報セキュリティ基準の厳格化
リアルタイムの脅威情報共有システムの構築
装備品関連の機密情報保護強化
防衛産業の重要性
2022年に改定された国家安全保障戦略では、防衛産業を「防衛力そのもの」と位置付けています。この認識に基づき、以下の施策が実施されます:
中核企業の優先的な保護体制の確立
技術情報の特別保護措置の実施
サプライチェーン全体のセキュリティ強化
今後の展望と課題
実効性の確保に向けた取り組み
参加組織間の円滑な情報共有体制の確立
プライバシーと安全保障のバランスの確保
法的・技術的枠組みの整備
民間セクターとの協力関係強化
将来的な展開
民間医療機関への段階的な展開
国際連携の強化
技術革新への対応体制の整備
まとめ
政府の「能動的サイバー防御」体制の拡充は、国家安全保障における新たな試みとして注目されます。特に医療機関と防衛産業という重要インフラの保護強化は、国民生活の安全と国防力の維持に直結する重要な施策です。今後の運用実態と効果が注目されます。