第七十七回 300字ss
・お題「答える」
・タイトル「口さん」
・ジャンル:オリジナル
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「口さん」と呼んでいた木があった。
「口さん」には、大きな口のような穴があった。私たちは、拾った木の実などを、穴の中に入れておいた。そして次の日に見ると、その木の実は無くなっているのだった。
やがて月日は流れ、私は医者となり、地元で働き始めた。庭で花の手入れをしていると、先生、と呼ぶ声がした。白い服の少女が、苺の入った籠を持って立っている。お母さんから先生に、って。はて。誰だろう。名を尋ねたが、少女は笑って去ってしまった。
私は散歩途中、久しぶりに「口さん」の所に行ってみた。そこには白い羽が落ちていた。入れておいた実は、鳥が食べていたのだな。
答えるように、ぴぴぴと、私の頭上を白い鳥が舞った。