煽りに煽りで返した副部長の話

いつからだろう。こういう強さと、楽しみ方を覚えたのは。「とっちゃえ、とっちゃえ」ベンチから大きな声をだす。これはいわゆる「煽り」だ。でも、煽りに煽りで返して何が悪い。楽しむために、私はあなたを利用する。

今日は、バスケの大会があった。会社で作ったバスケ部で目標にしていた大会出場だ。とは言っても、初心者でメンバーも楽しめる大会が世の中にはあって、6,7割は初心者という構成のチームで参加を申し込んだ。

バスケットをやって来なかった人にとって、バスケットは怖いスポーツというイメージが強い。それは経験者の私でも容易に想像がつく。でも、やっぱりバスケットは楽しいから、それを知って欲しくて初心者大歓迎のバスケットボール部を創設したのだった。

スポーツは勝ち負けがあるから楽しいことは事実だ。そうやって、勝ちたいという気持ちでバスケをプレイするのも私の日常だ。でも今日ばかりは。

44-10これが初戦の結果だった。みんな、大笑い。こんなにもぼろ負けるものかと。こそこそと陰口が聞こえてくる。でも、私たちは少しばかりイラっとしつつも「楽しいっていう気持ちは負けずにいようよ」という団結力ばかりが増していく。

大前提として、この大会は初心者が何名以上いること、というルールが設けられている。なのにどこのチームも初心者なんかいやしない。私たちはルールを守っているんだということがもはや誇りだった。

「オラオラ、相手弱いよ」「もっと行っちゃえよ」無駄にガヤを飛ばす選手がいた。だから、私はそのガヤを飛ばしてきた選手がコートに入り、ドリブルをした瞬間「とっちゃえとっちゃえ」大きな声で叫んだ。感じが悪いだろうか。でも、私は自分のチームが大切だ。バカにされてたまるか、一生懸命をバカにされてたまるか。ただ、黙ってその煽りを受けていた私のチームメイトが笑ってくれた。何も言わないだけで、勝つことが目的ではなくても、楽しむためにバスケをしている空間で、弱いことが事実であろうと面白くなかったのだ。

弱くても、私たちのバスケットはみんなでパスを回して、シュートが入ったら喜んで、シュートを外したら「おいー!」と笑った。いつからだろう、勝つことが全てではなくなったのは。バスケを楽しいと思ってもらえることが嬉しいと思える大人になったのは。

そうしたら。どうしたことか、私たちのチームを全力で応援してくれるチームが出てきた。シュートが入った時に、一緒になって全身で跳んで喜んでくれてるのが見えた。そう、こういう大会なのだ。ヤジが飛び交うクラスの大会ではないのだ。所詮、ヤジを飛ばす君が出ているクラスは、もう一つ上のクラスで勝てないから降りてきたということでしょう?弱さを認め、それでもバスケットが楽しくて出場していることをどうか忘れないでほしい。私たちをボロクソに倒してもいい、ボロクソに倒すことを精一杯楽しんだらいい。

楽しんでいる姿は、伝染するのだ。巻き込むことができるのだ。「お疲れ様でした」掛け合う言葉がスポーツマンだった。一個のボールを取り合い、カゴに入れるだけのスポーツを愛した者同士だ。

「すごく緊張したけど、コートの中はとても楽しかった」「そらののヤジまじで焦るから。でも気持ちよかった」今日、隣のベンチにいた弱かった君へ。私のチームを盛り上げるためにターゲットにしてごめんね。きっと、君もチームを盛り上げるために声を出していたのだと今ならわかるが、私にもチームメイトの士気を守る使命があった。バスケットマンとして、次はチームプレイで君を倒す!ヤジを飛ばす余裕のない程に。また、どこかの体育館で会おう。

おい私、勝ちにこだわる文末にしてどうするつもりだ。文頭が格好つかなくなるわけではないか。結果は4チーム中3位となった。会社が、3位入賞商品のクーポンコードを額縁に入れてくれそうだ。これは、私が作ったバスケ部の、副部長の任務を終えた今日の話。

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