【歴史的快挙】メキシコ政府がモンサントと米国政府に勝った
2017年日本の種子を守る有志の会発足や、現在はOKシードプロジェクト事務局長の印鑰 智哉さんの下記リンク記事を抜粋します。
https://project.inyaku.net/archives/10704
オブラドール前大統領は2020年に大統領令でモンサントの農薬ラウンドアップ(主成分グリホサート)と遺伝子組み換えトウモロコシの人の食用に使うことを禁止する政策を打ち出し、それ以来、モンサント(現バイエル)や米国のアグリビジネスはメキシコのこの政策を総攻撃して潰そうとしてきた。
米国政府によればWTOのルールでは科学的事実に基づかない理由で輸入を禁止することを認めない。だから、危険であることが科学的に立証されていなければ輸入禁止することを許さない、ということになって、およそ予防原則と反する圧力がかけられ、これまでもラウンドアップを禁止しようとした国の政策はほとんど撤回を余儀なくされている。エルサルバドル議会はラウンドアップの使用禁止を決めたがエルサルバドル政府は米国の圧力でそれを実施できず、タイ政府も同様に規制を放棄した経緯がある。
危険でないことを実証しない限り、禁止できないという政策がおかしいことは言うまでもない。禁止された化学物質で初めから毒性の全体像がわかったものはない。特にグリホサートのように世代を超えた影響が指摘される物質は予防原則に立って、即刻禁止しなければならない。孫の代で確かに問題が出ました、事実でした、となってから禁止するのでは手遅れだ。でもこの論法は日本でも広く蔓延してしまっている。
今回、メキシコ政府側はグリホサートと遺伝子組み換えトウモロコシを規制する科学的な250以上の証拠を積み上げた。これまで、モンサント・バイエルの利益を損なう他国の政策は米国政府が恫喝することで、ほとんど撤回されるのがこれまでだった。でもメキシコ政府は揺るがなかった。4年をかけて、闘い、ついに、訴えていたセミリャス・イ・アグロプロダクツ・モンサントとモンサント・コマーシャルのメキシコ現地法人がこの訴えから撤退した。
多国籍企業の嵩にかかった攻撃に対して、前政権を引き継ぐシェインバウム氏が大統領選で圧勝した。民意が示された。これで勝ち目がないことがわかったのだろう。米国政府・モンサント・バイエルの圧力をはねのけた歴史的勝利と言うしかないだろう。
この4年間、米国内にもメキシコの反GMO、反ラウンドアップの訴えを支援しようと、市民団体が連帯運動も起こしていた。そして、Non-GMOトウモロコシを作る米国の農家も支援を送った。地殻変動が起きたと言ってもいいかもしれない。
メキシコだけでない。EUでもグリホサートを再承認したEUに対して、その決定の撤回を求める訴訟を市民が起こしている。メキシコの裁判でも積み重ねられた科学的データはおそらく欧州裁判所でも共有されているだろう。EUの認定はあまりに非科学的な根拠が薄弱なものであったため、裁判で検証すれば、この承認が覆される可能性は十分ある。ブルガリアでも公共の場でのグリホサートの使用が禁止された。
一方、米国ではラウンドアップによって非ホジキンリンパ腫などのがんになったとする訴訟が16万7000近くになっている。バイエルの株価も低迷し、追い詰められる事態になっている。もっともバイエルは米国各州政府にこうした訴訟を不可能にする通称「モンサント保護法案」の制定を求め、アイオワ州、アイダホ州、ミズーリ州、フロリダ州ではそうした法案が審議されている。
そして、日本ではラウンドアップ、グリホサート系農薬の売れ行きは上がりこそ下がることがない状態。遺伝子組み換えトウモロコシを含むGMOの輸入も止まらない。日本政府はグリホサートの再承認に向けてまっしぐらだ。
米国ではこの「モンサント保護法案」はかなり止まりつつあり、さらにモンサントを買収したバイエルは分社化含めて余儀なくされそうであり⁵、もっとも問題なのは、底なしで止める動きがなかなか生まれない日本なのかもしれない。
その日本でも止められることがある。1つは地方自治体が使わないことを宣言する、条例を作る、ホームセンターでの取り扱いをやめさせることは特に実現しやすいだろう。そして日本がグリホサートを再承認しないように政府に声を上げる必要がある。
世界の動きに取り残されないためにも日本での取り組みを考えたいところだ。
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OKシードプロジェクトは、ゲノム編集トマトなどゲノム編集種苗・食品が出てくることに懸念を感じた市民が立ち上げた共同プロジェクトです。農家、消費者さまざまな立場から、遺伝子操作されていない食を守れるか、活動を始め、ゲノム編集でない作物が分かるようにOKシードマークを作成しました。このマークの普及を通じて、日本での食品の安全に貢献することをめざしている。