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短編小説

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#公園

【短編小説】公園の海に、ボートをうかべて 後編

【短編小説】公園の海に、ボートをうかべて 後編

数時間前の恭介には、今の自分が想像できただろうか?
見知らぬおじいさんと猫と一緒に、公園の小さな海原に、ボートで漕ぎ出しているなんて。

ボートは静かにゆっくりと進んでいき、やがて公園の端にある銀色のジャングルジムの下に着いた。
おじいさんはロープをすばやく結びつけると、ジャングルジムによじ登った。そして上から二段目のちょうど段になっていて座りやすい位置に、バランスをとって腰掛けた。

「お前さん

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【短編小説】公園の海に、ボートをうかべて  中編

【短編小説】公園の海に、ボートをうかべて  中編

公園の中は「海」だった。

恭介は今までの人生で、こんなに驚いたことは無かった。
人間はあまり驚いたときはそのままのポーズで固まるようで、恭介は階段の最後の一段に足を駆けたまま静止していた。

すぐ向こうに見える住宅や道路は、いつもと何の変わりも無かった。公園の中だけが箱庭のように、小さな海になっていた。
大きさは池のようでもあったが、しかし海だった。その証拠に潮の香りがしたし、打ち寄せる波は、海

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【短編小説】公園の海に、ボートをうかべて 前編 

【短編小説】公園の海に、ボートをうかべて 前編 

すぐ向こうに見える住宅や道路は、いつもと何の変わりも無かった。公園の中だけが箱庭のように、小さな海になっていた。
大きさは池のようでもあったが、しかし海だった。その証拠に潮の香りがしたし、打ち寄せる波は、海そのものだった。(本文より)

夜の住宅街はとても静かだ。

真冬のしんと空気の冷える日、星がいつもより美しくはっきりと見える夜は、特に静かに感じる。そんな夜にはいつもの見慣れた住宅街でも、見知

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