落ち着きのない奴だ
吾輩の出自は存じ上げない。
外を歩いていたら、家がわからなくなったこともある。
暑い日や寒い日を、吾輩は耐え忍んで生きてきた。
食料にも愛情にも飢えた。
ある程度、体が大きくなった頃だ。
吾輩は柔らかい台の上に佇んでいた。
それを見た連中は頭を抱えていたようだった。
「飼ってるわけでもないのに」?
『しおん』というのは吾輩が最初に生まれた家で授かった名のようだ。
過去を大事にする奴らだ。
しかしここは良い。
雨風も防げる、柔らかい寝床もある。
驚いたことに、吾輩の食糧まで用意してある。
邪魔な輩も居るようだが、ここは情けをかけてやろう。
それを見た連中はいつもの如く、
「それはお前のご飯じゃねえ」
だの
「また来てる、出てけ」
だの、駄々をこねている…。
これでは連中と吾輩、どちらが先に生まれたのかもわからない。
吾輩がこの家にいることに誰も文句を言わなくなった頃、この家の者どもは吾輩を『もーくん』だか『ぶちまる』だかと呼び出した。
忙しなく動く連中だ。
無駄が多すぎる。
吾輩がくつろいでいたい時に無遠慮にベタベタと擦り寄ってくるし、反対に吾輩から出向いた時には「邪魔」で片付ける。
お前たちは気まぐれすぎる。
この若造は
「TOKYOに行ってサクセスしてくる」
とほざき、吾輩がその面も忘れた頃に、平気で帰って来た。
吾輩にベタベタ触りながら
「やっぱりお前が居ないと」
と言う。
そしてひとしきり寝ていたと思ったら、また居なくなったり、帰って来たりしている。
じっとしていられないのか。
また『TOKYO』にでも行ったのか…。
今回はかなり、はしゃいだらしいな。
その様子では歩くのがやっとではないか。
お前様。
そんなことで本気で悩んでいるのか。
何をしていても構わないが、吾輩の平穏の邪魔だけはしないように。
吾輩はこの家の猫である。
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