◉【おもてなしに学ぶ】(茶道家メモVol.23 東大寺①安寧を願う茶)#55
今から約1,300年前、時は奈良時代、僧侶の行基(ぎょうき)が諸国に茶の木を植えたとされてます。[東大寺要録]
どうして行基は諸国に茶の木を植えたのでしょう。
行基が遺したものに東大寺の大仏があります。
奈良時代は伝染病が大流行し、多くの人びとが病に倒れていきます。また、天候不順による飢饉や食糧不足、地震災害も重なって、最悪の状況となっていました。
時の天皇の聖武天皇は、皆が幸せになるために毎日3回大仏を拝み感謝の気持ちを忘れないようにという願いを込め、東大寺大仏を造ることを決意されました。
しかし、人手が足りず、大仏造立が計画通り進みません。聖武天皇は、人望があった行基に大仏造立を要請されました。
聖武天皇はこの大仏造立に、資金だけでなく人々の気持ちが大切だと考え、資金以外にも自らが参加できる布施を呼びかけました。また自らも土を運ばれています。
ある人は食糧、ある人は労働力、ある人は道中で見つけた小さな木の枝を、それぞれの布施の形は違えど未来を照らすおもいは1つだったのではないでしょうか。
行基は東大寺の大仏の完成を見る前に亡くなってしまいますが、行基が行った慈善事業は、架線、道路、交通施設、池など、後世につづく人々に影響を与えています。
行基が茶木を諸国に植えていたのは、当時の薬としての茶の作用にとどまることなく、物心ともに人々の幸せと世の中の安寧を願っていたからではないでしょうか。
お茶の世界観を紐解く茶道には自らを整えることにとどまることなく、同じ空間に同じ時を過ごす相手に対する配慮や相手に喜んでもらえるよう、茶人にとっても相手にとっても、一期一会の人格形成の旅路にある人間関係学だと思います。
おもてなしは心身ともに幸せになる為の人間関係学だと感じています。
あなたはどんなおもてなしをしていますか。
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