◉【おもてなしに学ぶ】(茶道家メモVol.14 一杯のお茶の話)#46
「喫茶去(きっさこ)」と呼ぶ言葉があります。
所説ありますが、茶人としての経験則から申し上げるなら、中国語でいう「請喝茶」が一番スマートな表現のような気がします。
「一杯のお茶をどうぞ」
時代がさかのぼるところ、唐の時代に趙州(じょうしゅう)という禅僧がいました。
この趙州は教えを求めてやってくる修行僧に、「お前さんはかつてここに来たことがおありかな?」とたずねたそうです。
「はい、来たことがあります」と答えたものに、「一杯のお茶をどうぞ」とお茶を差し出しました。
別の修行僧が来た時にも、
「お前さんはかつてここに来たことがおありかな?」とたずねて、
「いいえ、来たことはありません」と答えても同じように、
「一杯のお茶をどうぞ」といってお茶を差し出しました。
また、道をたずねてきた旅人に対しても、「一杯のお茶をどうぞ」といってお茶を差し出したそうです。
[※原典「趙州録」]
(このお話は中国でお茶を学んでいた頃に教えていただいたお話です)
趙州(じょうしゅう)という僧は、誰であろうとそれは親しい人であっても、一視同仁に「一杯のお茶をどうぞ」とお茶を差し出しています。
私の師匠もこのように自然なおもてなしをしています。私自身の所作もこのような無為自然をとりいれています。
お茶の世界観を紐解く茶道には自らを整えることにとどまることなく、同じ空間に同じ時を過ごす相手に対する配慮や相手に喜んでもらえるよう、茶人にとっても相手にとっても、一期一会の人格形成の旅路にある人間関係学だと思います。
おもてなしは心身ともに幸せになる為の人間関係学だと感じています。
あなたはどんなおもてなしをしていますか。
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