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生徒会独裁日記[機能性ディスペプシア闘病記-5]

イギリスから帰国して開き直った僕は、生徒会長に立候補することに決めた。

時系列が前後する。
ストーキングをしていた女子は、2年の1学期に僕に無理やり性行為をしようとしてきた。
恐ろしくて突き飛ばした翌日から、学校に来なくなってしまった。
もっと早く大人に相談していれば、とか、もっと早く毅然とした態度で接していれば、とか、相当悔やんだ。

厳密には2人、同級生に相談したことがあったけれど、
「そんなに好かれてるなら、ヤっちゃえば」
くらいの返答だった。
それは双方の気持ちを本当の意味で大切にしてないだろ、とガックリきた。
まあ、たいていの男子中学生なんてそんなもんなのか…悲しかった。

彼女とは教室でもろくに話さず、ほぼ接点もなく、もちろん交際も全くしていなかった。
だから、ある日突然付きまといが始まったのは何故だったのだろう、と不思議だった。
きっと、寂しくてたまらなかったのかな、と想像する。

時系列を戻す。
彼女がもう学校へ来なくなったにも関わらず、相変わらず彼女の苗字で僕を呼んだり、上履きに落書きされたりなど、ちょいちょいいじめは続いていた。

生徒会長に立候補したのは、
・会長をいじめる奴はいないだろうという防衛策
・バスケ部辞めて内申点が1点下がったのを取り戻す
という2つの理由があった。
そして目論見通り、当選したらいじめはすぐに収まった。

川の清掃ボランテイアや、老人ホームへの慰問など、地域への貢献イベントを企画・実行したり、金八第5シリーズを見て憧れて、餅つき大会を開催したりした。

文化祭で全校で使用される金券のデザインに武田鉄矢氏の似顔絵を入れたり、かなりの独裁政権であった。

自分の頭の中にある構想を現実世界に落とし込んでいく、この作業が心から楽しく、人生で今が一番充実しているな、と感じていた。

この頃から、友人の悩み相談に乗ることが多くなった。
僕に打ち明けると、心が軽くなると言ってもらえた。

が、中2病という言葉があるように、こちらには思春期特有の万能感から、やや傲慢さもあったと思い出される。

「情報をなんでも疑って見てしまう」
と相談してきてくれた同級生がいて、「信じる心が足りない」みたいに半ば説教してしまった記憶がある。

数日後、反省した。
むしろ、なんでも疑問を持つことは素晴らしいことじゃんか。
それこそ科学的な態度じゃんか。

そう考えたら、たまらなく恥ずかしかった。
説教やアドバイスをしている時、人間の脳ではドーパミンが分泌されるらしい。
快楽のホルモンである。
自分が気持ちよくなるためにアドバイスをする…最低だなと思って、謙虚さを忘れないようにしようと反省した。

そう、「信じる心が足りない」なんて言ってる時、気持ちよかったんですよね。
ほんと、最低である。

しかし、この頃はずいぶんサラッと生きていた。
後輩の女子が体育館裏でいじめられているのを見つけたら、職員室へ走って行って通報した。
女子は誤解して、「空き地先輩、現場を見ただけで逃げて頼りなかった」と周囲に言っていたらしいが、特に気にならなかった。
「ストーカー女子と理科室であんなことこんなことしてた」という、根も葉もない噂をバンバン流され続けていたことで、他人にどう思われようが関係ないとドライに生きていた。

それより生徒会の行事企画と、金八を脳内再生するのに忙しかった。

金八の第5シリーズで、家の問題を一手に背負う生徒が登場した。
その子のために金八が親に説教するシーンがある。
いったい15歳の少年にいつまで親が甘えてるんですか!」

母は、「自分が言われてる気がするから、そのシーンは観ないで」と言った。

ドラマを観るのをやめさせるんじゃなくて、自分が甘えるのをやめりゃいいのに、と思ったが、自分を変えるのはどうやら覚悟がいるらしい。

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