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渦巻く大地

『大地を喰らう者』とは、また大きく出たなぁ、と思ったものだった。

種族名の位置がなんだか気持ち悪い

闘魂編、パックナンバリングで言えばDM-06で初登場した『アースイーター』という種族は、デュエルマスターズに存在する種族の中でも古株者と言える存在である。

そんなアースイーターの種族的特徴は、ぬめぬめとした粘体のボディと全てを飲み込む大きな口とぎょろりとした一つ眼、そして大地を覆わんとするその巨体だ。
種族冠詞である『クロウラー』というのは、英語で『這い回る者』という意味であるそうだから、この巨体を以て大地を這い回り何彼構わず目に付いた全てを捕食する、そういう生態の生き物なのだろう。

必然的に、彼らのフレーバーとしての特徴はその生態、即ち『大地を飲み込む』暴力的な渦巻く力に集約される。

例えば、先に挙げた《ハリケーン・クロウラー》。
名前の通り、彼は『ハリケーン(暴風)』のような力によって、『手札とマナの内容を入れ替えて』しまう。
本来定まっていたはずの天と地が、彼を台風の目の中心として入れ替わるその姿は、まさに渦巻く天災である。
しかも、それは人為的に操作できるものではなく、全て強制能力によって発生する

アースイーターのカードデザインには、この『強制能力』が意図的に盛り込まれている。
彼らは知能を持たず、ただ呑み込む本能によって大地を吸い込み続ける悲しきサガを持つ生き物だ。
故に、その対象を選ばず、ただただ目の前にいる存在を吸い込まずにはいられない、暴力的な力がそこにはある。
彼らを制御できるのは、彼らをカードとして使用する私たちプレイヤーだけであり、しかし、プレイヤーであったとしても、バトルゾーンに現れた彼らを制御する手段を持たない。
例外があるとすれば、彼らの直線的な単眼に、三つ眼の賢き視座をもたらす事のできる、巨人との融合くらいのものだろうか。 

"吸い込む"力が種族的主題である事から、《ハリケーン・クロウラー》の他にも渦巻く、あるいは反復する波の名をその身に宿すクリーチャー達がいる。

『トルネイド(竜巻)』や、

『タイフーン(台風)』、

相手の選択に合わせて手札に戻るその挙動を、繰り返し押し寄せる波に準えた『ウェーブ(波)』。

《バミューダ・クロウラー》の『バミューダ』とは、バミューダ・トライアングルの事だろう。
バミューダ諸島周辺にあるこの三角形の海域には、古くから周辺海域を通る船舶や飛行機の消失事故が報告される、オカルティックな側面がある。
彼自身の能力もまた、ブロックされたクリーチャーではなく、それ以外のクリーチャーが手札に戻される可能性のある、不可解な遭難を引き起こす能力だ。
これもまた、『未知なる存在に引き込まれる』力の一例だろう。

また、彼らは吸収(回収)するだけではない。
その暴力的な渦巻く力は、周りにいる者にひれ伏す事を強要する。
それは、逆巻く暴風のエネルギーに遭遇した時に、人が直立していられない事に等しい。
全てを跪かせるその回転の力は、力が強すぎるが故に、力の中心にいる存在はひれ伏した者達に触れる事ができないという逆説的な構造を生み出す。

あるいは、その暴力的な力を、利他に使用する者もいる。
デコイ、つまり他者の痛みを自己に吸収する能力は、近年再びピックアップされた彼らの特徴でもある。

もっとも、彼らが本当にそれを利他の目的として活用しているのかは分からない。
何しろ彼らは、ただ『とりあえず何にでも反応する、やっかいな奴ら』なのだから。 

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