そらむぎ通信 No.156 (2020.1)
皆様、新年のお慶びを申し上げます。
医療法人社団宙麦会理事長 肥田裕久
昨年はMARS が設立10周年を迎え、また日本精神障害者リハビリテーション学会のベストプラクティス賞をいただくことのできた慶ばしい年でもありました。
MARSはその名のとおり「Medical And Recovery Service」であり、医療を受け、その後にきちんと就労等の社会参加を行いRecoveryしていくというプロセスのいきいきとしたお手本であるということが評価されたのだと思います。宙麦会と双子の弟のようなMARSがこのように評価されたことは本当に関係各者のご尽力にも敬意を払う次第です。
さて、新年にあたって、今年度のお話しもしたいと思います。実は平成31・令和元年にリストランテテララを閉店いたしました。とても大切な宙麦会グループの旗艦店舗でしたが、諸般巨眼の観点からの決断でした。医療や福祉が既存の枠ではとらえきれなくなった状況もあります。
疾患構造の変化、統合失調症をはじめとする疾患の軽症化(それゆえ定型的な支援ではまかなえなくなったこと)、さらには経営的にも維持していく事の困難さなど多岐にわたります。支援者はいままでの手慣れたやり方をすこしだけ手放さないと対応できない時代に来ているのだと思います。さてそういった変動の中、支援者も考え方を大きく変更しなくてはなりません。
「器用貧乏」ということばがあります。揶揄するようなことばなのですが、このことばを考えてみたいと思います。この器用貧乏に似た用語に今年の干支のねずみを冠した四文字熟語があります。「梧鼠之技」、ごそのぎと読みます。
「梧鼠」とはむささびのこと。むささびは、飛ぶ、木に登る、泳ぐ、穴を掘る、走るという五つのスキルがあります。しかし、鷹のようには飛べないし、猿のようには木に登れない。魚のようには泳げないし、モグラのようには穴を掘り進む力のありません。もっと足の速い動物はたくさんいます。つまり、様々な技能をもっているが極めている技能がないことをいいます。
しかし、どれも格段にすぐれてはいなくても、すこしだけ支援者は「器用」にならなくてはなりません。器用はとはこざかしく行動する事ではなく、その場を上手につくろうことでもありません。自在に行動するという意味です。
いっぽうで「時に遇えば鼠も虎になる」ということわざもあります。時運に恵まれれば思わね力を発揮することを指します。力を発揮できると思いも寄らぬ成果を挙げる事もできるかもしれません。
「梧鼠之技」なのか「時に遇えば鼠も虎になる」なのか。年頭にあたり「梧鼠之技」を自覚しながら、「時に遇えば鼠も虎になる」、このように行動したいと思います。
新年のご挨拶
株式会社MARS 代表取締役 中田 健士
皆さま、あけましてめでとうございます。東京オリンピックイヤーでもある2020年が始まりました。昨年は、㈱MARSは創立10周年を経て、日本精神障害者リハビリテーション学会のベストプラクティス賞を受賞する等、これからの期待や希望を感じた年でした。紆余曲折がありながらも、このように地域に密着した福祉サービスを行っていけるのは、皆さまの支えがあってとのとだと感じております。本当にありがとうございます。
そして11年目となる今年は、これまで通り「ひだクリニック」と連携した、住まいから就労、キャリアアップまでの流れをよりスムーズサポートするための障害福祉サービス(グループホームmy夢(外部サービス型共同生活援助・自立生活援助)、生活訓練事業所そにあ、多機能型事業所マーレ(B型・生活訓練)、就労継続支援B型事業所TERRA、就労支援事業所co opus(就労移行・定着支援・生活訓練))を運営すると共に、「雇用におけるピアサポート」の制度化へ向けた研究協力が大詰めとなる年でもあります。今年で5年目となる千葉県ピア研修の協力をしておりますが、この様に自治体が主導となるピアサポート研修が全国的なものになるのかどうか、また、日本においてもピアサポートが法律や制度として位置づけられるのか、の方向性が決まる年だと認識しています。
このような背景もあり、㈱MARSのピアサポーターは宙麦会グループだけでなく、様々な場面において講師やファシリテーターとしての依頼が増えると考えています。現実としても、1月~3月の間だけでも8件もの外部からの依頼があります。
そして、昨年12月より新たに訪問型職場適応援助促進助成金事業を地域障害者職業センターと共に行っており、12月だけで5件もの依頼がありました。これは働いているが、他の制度が使えない精神保健福祉手帳等の所持者に対してジョブコーチ支援を行い、職場定着をサポートする事業です。これからより必要とされる分野であり、さらに、企業においてはこれまで㈱MARSが様々な方を雇用し対応してきたノウハウを知りたいという意見も増えています。このように㈱MARSが積み重ねてきた事で、まだまだ社会的に必要とされていることが多くあり、ポテンシャルがあります。これから数年にかけて、全体のバランスを考えながら、現在の事業の見直しや一つ一つ事業化を検討していきます。
2020年も生活や就労に困っているご本人やご家族、また精神疾患がある方々を雇用する様々な法人等に少しでもお役に立てるよう、多くの方々と力を合わせながら、誠心誠意を持って事業を行って参ります。本年もよろしくお願い致します。
肥田先生のメディカルコラムVol.108
~「カンブリア大爆破」~その2
「カンブリア大爆発」—カンブリア時代に生物が一気に増えたのです。
今はほとんどのものが淘汰されていってしまいましたが、生物の進化を考える上では、この時代はものすごく多くの生物がうまれたです。「カンブリア大爆発」と言われています。
私のまったくの個人的意見ですが、精神科医療というのも、この20 数年間、大爆発をしていると思います。
例えば、1988年には、SSTを作ったリバーマンが来日しています。
それから、同じ年に、アンドレッセン、マクファーレンという心理教育の大御所が来日しています。「1988年の黒船」という言い方をしている人もいます。
セカンドインパクトが、その6年後です。1994年にSST普及協会ができました。翌年1995年には、日本精神障害者リハビリテーション学会。その翌年1996年には日本デイケア学会。1997年には心理教育・家族教室ネットワークと、この4年間に様々な事が起こっています。
今は、それから20数年くらいが経っていますが、そのときの概念や考え方を、日々実践しているわけです。このようにすごいことが起こった時代です。今精神科のリハビリテーションの中にとっては、「カンブリア大爆発」といってもおかしくないと思います。ただ、若手医師層には精神科リハビリテーションに興味を持つ方が少ないように思います。
お詫びとお知らせ
スタディーシリーズ日程変更について
度々の変更で大変ご迷惑をおかけします。お詫び申し上げます。
以下の通りになります。
1月22日スタディーシリーズエクストラ「やる気を出せるコーチング」
1月29日心理教育「べてる式当事者研究」
2月12日 ひきこもり家族グループ
2月19日 病気を知ろう「不安障害」1回目
病気を知ろう「不安障害」は、2月19日、3月11日、4月8日の3回となります。
【ご案内】
ひだクリニック:土曜・祝日 休診
ひだクリニックセントラルパーク:土・日曜・祝日休診
セントラルパーク1月20日午前休診
1月20日は職員研修のため両院とも16時までの診療となります。
急に具合が悪くなった場合は、主治医がいなくても応急対応をいたしますので、ご相談ください。休診の場合は、空いている方のクリニッで対応いたします。まずは、お電話にてご連絡ください。自立支援は登録医療機関のみご使用になれます。
*日曜日の家族教室は、ひだクリニック3階るえかホールにて行っております。
1月19日(日)10時~12時 家族SST
1月26日(日)10時~12時 ふぁみりーテーブル基礎講座
「病気について」 院長 肥田裕久
2月 2日(日)べてる式家族当事者研究
2月 2日(日)10時半~12時 認知行動療法フォローアップ講座
2月 6日(木)18時~20時 クローバーファミリー
2月 9日(日)10時~12時 わいわい講座
生活習慣病を自らサポートするには~食べ方を考えよう~
栄養士 伊藤佐絵子
【編集後記】
あけましておめでとうございます。いつのまにかひだクリニックも15年目に入り、人間でいえば中学卒業の年となりました。いつまでもひよっこと言っていられなくなりました。社会の中で大人としての役割を果たしていかなければと、年頭にあたり気持ちがひきしまります。(み)