「ジウ」 第2滴
もう私はあと1ヶ月で18歳になる。
十分大人と言っていい歳だし、いつまでもかあ様ととと様がいないと1人じゃ何も出来ないままはイヤ。
だから、誕生日プレゼントの前借ということにして私は人生で初めての試みをやってのけた。
『 かあ様、とと様へ
雨を見にほんの少しだけ離れた町へ出掛けます。
2,3日で戻るから心配しないでください。
ヒナタより。』
2人がぐっすり眠っている頃を見計らい、寝室の机の上に短い手紙を残して静かに家を出た。いよいよ私の人生初の冒険だ。
まだ夜だけれど、これから少しずつ空が白くなり朝が来る。明るくなったら2人が起きないうちに早く町へ向かおう。
まだ私が小さい頃に出会った遠い国の人、アランが言っていた。「一年中晴れのつづく国に、たった1箇所だけ雨の降る町がある」と。
幼い私はまだ見たことのない雨に焦がれていて、初対面のアランに必死になって町の場所を紙に書いてもらった。もう何度も見返してクシャクシャになってしまったけれど今も大事に取ってある。
そして、やっと出番がやって来た。
地図によると砂漠をずっとずうっと歩いて北にまっすぐ進めば町があるらしい。「その町の周辺にはオアシスや河川があるから目印にすれば辿り着けるだろう」と言っていたから。私に新しい世界を覗かせてくれた異国の彼の言葉を信じたい。
ひたすらに歩いて歩いてくたくたになったら休憩してを繰り返しているとオアシスが見えてきた。話が本当ならこの近くに町があるはずだ。
オアシスに近寄り、水に手を触れる。
しばらく一面の砂漠を眺めながら歩きつづけたからか、手を浸した水がいつもの何倍も心地よかった。パシャパシャと水遊びをしていると木の間から何かが見えた。様子を伺ってじっと待っていてもびくとも動かない。
どうしても気になってしまい、恐る恐る側へ寄っていくと何かが落ちている。すると気づいた。あれは人だ。人が倒れている!どうにかしないと.........!
「大丈夫!?ダメよ、絶対に死なないで!」
肩を必死に揺さぶると横たわったその人は目を開き、私の目を見返した。どうやら生きていたみたいだ。
「..................君はだれ?」
「ごめんなさい、砂漠を歩きつづけて倒れてしまったのかと勘違いして......。私はヒナタ。あなたは?」
「僕はメグミ、疲れちゃったから一休みしてたんだ。紛らわしくてごめんね。」
オアシスで出会ったメグミは、日に焼けていない陶磁器のような白い肌の、ちょっと頼りなさそうな青年だった。