「スロウ・ファインド・アウェイ」第3話
少年の名はメグル。
洋館の隣に住む、つまりはマドカの隣人であり昔からいる幼なじみでした。
彼は数年前に父親が肺炎で亡くなって以来、母と2人で暮らしています。
そんな折に、母からマドカが「人間ぎらいの不気味な子ども」と噂されていることを知って様子を見に来たのです。
「こんにちは。マドカはいますか?」
「こんにちは。お嬢様はお屋敷におられますが、今はお会いになられない方がよろしいかと。」
「どうしてですか?」
「あの、なんと言いますか......大変申し上げにくいのですがお嬢様は変わってしまわれたので。」
「マドカに会わせてください。母から噂を聞いたけれど、僕は自分の目で見たものしか信じない。」
召使いは迷った末にメグルを洋館の中へ入れることにしました。
メグルはマドカに招かれていっしょに遊んでいた頃に比べ、ずいぶん物が減っていることに驚きました。
「なんでうちにいるの?」
「マドカ。久しぶりだね、元気にしてた?」
「.........冗談じゃないわ。帰ってちょうだい。」
「僕は君のことを心配してたんだ。最近、君の様子がおかしいって聞いたから。」
「幼なじみだからって自惚れないで。私の許可なしにこの館へ踏み入れると思ったら大間違いよ。出ていって!」
マドカは大きな声で叫び、テーブルの上に飾ってあった花瓶を床に投げました。
美しいピンクの薔薇が倒れて床に水が広がり、藍の模様で彩られた花瓶は見事に割れてしまいました。
「それに、あなたも。私の許可無しに人を入れるだなんて大した度胸ね。今日であなたはクビよ、さようなら。」
「お嬢様、申し訳ありません。どうかお許しを...。」
「マドカ。皆が君のことを心配してるんだ。このままだと君は本物のひとりぼっちになるよ。」
「なによそれ、もうなってるじゃないの。私にはお父さんもお母さんももういないのよ。私はとっくに
ひとりぼっちよ。」
マドカは他の召使いに割った花瓶を処分するよう言いわたし、別の部屋へ歩いていきました。
もしサポート投げてくれたらなんかいい感じのことに使います。