なんでもない日常が、こんなに楽しい!
【はじめに】過ぎた日々を想い起こす。
ある日仕事で外出した時に、訪問先までの道のりの半ばで、大きな団地を横切ったわたし。いくつか棟が並ぶなか、敷地内の一角に公園があり、団地に住んでいるだろう子どもたちが元気に走りまわっていました。
かくいう私も中学生までは団地住まい。学校が終わればランドセルを一度置きに帰り、再びクラスメイトと団地下に集合。花を摘んで色水をつくったり、1階から10階まで団地全部の階段を使って逃げ回ったり…体力の限界など感じることなく全力で遊んだものです。
砂があれば掘り、水が出れば飛ばし合う。
高いところは何としても登り、友が集まれば駆け回る。
そんな何気ない日常がどうしようもなく楽しかったことを思い出させる。
それが「よつばと!」という作品だと思います。
あらすじ。
「よつばと!」は、あずまきよひこ氏による漫画作品で、1人の小学生の女の子「よつば」を中心に、彼女の周りの人々との日常生活を描いたコメディ作品。物語はのはじまりは、よつばが東京の片田舎に引っ越してくるシーンから。好奇心旺盛なよつばは、明るく活発な性格の持ち主。新しい環境でたくさんのことを見聞きし、一緒に暮らす父親や面倒見の良い3姉妹が住むお隣さん、近所のおじさんやおばさんなど、多くの人たちと交流を持ちながら、自分自身を成長させていく物語です。全体的には、とても軽快で明るく、読む人に元気や癒しを与えるような作品です。
<受賞歴>
手塚治虫文化賞「マンガ大賞」受賞(第20回)/文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞(2006年)/日本のメディア芸術100選(文化庁)/マンガ大賞第2位(2008年)/「このマンガがすごい!」(2008年オトコ編第3位)ほか
1)目にする日常だからこそ惹きつけられる。
注目するべきは物語の中で描かれるエピソード。取り上げているのはなんてことのない、ちょっとした日常ではあるけれど、5歳児の目線で世界を描いている非常に特徴的な作品です。これって本当にすごいことで、「大の大人がこんなに5歳児目線で描けるのか」ということと、そこに何の違和感もないことがはじめてこの作品を読んだ時、わたしにとって衝撃的でした。きっと、読んでくだされば「わたしにもこんな時あったな」なんていう既視感を感じられると思います。
2)写実的で美しい風景。
例えばよつばが訪れる街のスーパー。友だちと遊びに行った先の海や森。
作品内でよつばは家族や友だちとさまざまな場所に訪れますが、その風景の美しさも特徴のひとつです。1本1本細い線で丁寧に描かれていて、作者の技術力はもちろん、「よつばのいる世界を愛してるんだろうな」という想いがひしひしと伝わってきました。そのリアリティの高さがあることで現実にも結び付けやすく、身近な作品として親しまれやすいのではないかと思います。
3)地域のあたたかい交流。
「よつばと!」に登場する人物は、本当にごくありふれた人たち。父親の友人やお隣さん一家、お隣の3姉妹の友人たちや近所の自転車やさん。本当に近くにいる人たちとの繋がりを濃く描いていることも作品の魅力です。一見普通のことのようではあるけれど、わたしたちはここ数年、そんな普通を感じられることができなくなっていたと思います。今だからこそ、『普通でいることは奇跡なんだ』ということを、改めて実感できるのではないでしょうか。
【さいごに】かわらない毎日を手に。
これまでつらつらと、「よつばと!」の魅力について語ってきましたが、当たり前が当たり前ではない生活を送ってきた今だからこそ、ぜひ読んでいただきたいなと思っています。学校や仕事で少し心が疲れてしまった時、この作品を読むことで1人でも多くの方が癒され、戻ることのできない大切な日々をあなたらしく生きていってほしいと願っています。
※こんな方にオススメ。
子供や子育て中の方
日常の中にある小さな幸せを大切にしたいと思う方
都会の喧騒から離れて、のんびりとした田舎暮らしに憧れる方
人間関係や人とのコミュニケーションで疲れてしまった方
ホッコリとした癒し系の作品を好む方
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