終電まで残って仕事している人に付き合って毎日サービス残業してたら感謝された話
SIerにいたころの話。所謂プライムSIerといわれるような所。
大手損保の保守開発の現場で、案件の増減に合わせて人の入れ替わりが頻発するような現場。
java、c、oracle、unix(hpux)、jp1などを使っていました。使う技術や製品はごくごく普通ですが、フレームワークはTERASOLUNAとかいうよくわからんものを使っていた記憶があります。
開発環境は当然のようにEclipseなわけですが、これがまた曲者でして。
何が曲者かというと、主に環境構築。
環境構築がじぇーんじぇんうまく行かない。構築手順書もどこかの誰かが殴り書いたペラいテキストしかない。
新入り達はそんなゴミを使って、無駄に何人日も工数掛けて環境構築に精を出すわけです…
あるとき新入りが一人入ってきました。
彼は新卒で会社に入ってからずっと運用系の部署で働いていたらしく、開発はしたことがないらしいのです。
要は異動です。運用系の案件はコボラー世代のオジサマ方に振っていこうという会社の方針でしょうね。
彼はわからないなりにも一生懸命開発環境を作っていたのですが、さーっぱりうまく行かない。
前任者達がハチャメチャにいじくり回したマシンを初期化もしない状態で渡される上に、ゴミ資料しかないわけですから。当然ですね。
周りに聞いたりしてどうにかしようと試みてはいるのですが、誰に聞いても返ってくるのが「わからない」「できない」。
普通ならチームのリーダーや責任者が出張って色々と調整するとは思いますが、何せクソ現場だから放置。相談しても何もしない。放置。クソ笑える。
とは言うものの、やらなきゃいけないからどうにかしようと頑張るわけです。でも開発経験が無いから勝手もわからない。終電まで残ってどうにかしようとねばる。粘ったところで何も変わらない。けど残って粘る以外の選択肢もない。とてつもないクソ循環です。
自分は彼(新入り君)とはまったく無関係のチームだったのですが、毎日毎日終電まで残っているのを見かねて声をかけました。
『毎日遅くまで残ってますけど、なにか躓いていたりしますか?』
事情を一通り聞き、提案しました。
『とりあえず最初から二人でやりなおしてみましょう』
ま、当然やったって動かないわけです。他の人がチャレンジしてもどうにもならないものが俺が関わったからってどうにかなるわけがない。
しかし無情にも彼に振られたタスクの期限が迫ってきている。なので構築は後回しにし、とりあえずコードは書き進める。そして書いたコードは他人の環境を借りて動かす、という方針で進めることにしました。
そんなこんなで彼は何とかやりきりました。
やりきりはしたけど退職することになりました。仕事が嫌になったとかではなく、実家に戻って家業を継ぐそうです。
折角やりきったのにやめてしまうのかー、と少し寂しい気持ちになりましたが、仕様がないです。
送別会の日がやってきました。
テンプレ的な送別会が行われ、彼が自分のところに挨拶をしに来ました。
「空豆さん(俺)には凄くお世話になりました。本当にありがとうございました。」
『うーん、結局新入りさんのは動かせなかったわけだし、結果から見れば役には立ててなかったですよね〜。アハハー』
「そんなことないですよ。どうしていいかわからないときに声をかけてくれて、俺の為にしなくていいサービス残業で毎日終電まで残って手伝ってくれて、本当に救われました。空豆さんが居なかったら多分案件をやりきらずに退職して地元に帰っていたと思います。やりきれたのは空豆さんのおかげです。」
終わり。
このエピソードを知人に話したら「イイ話やん!」って言われまして。
記憶が薄れて改竄されてしまう前に記録に残しておこうかな〜と思い、こうして書いたわけです。
やり方はあまり良くなかったけど、人を助けることが出来たのは良いことかな。
俺にとっての優しさってことはこういうことなんですけど、他の大多数の人はそう思わないみたいですね。
コードギアスのナナリーの真似じゃないですが、優しい世界になって欲しいと常に思ってます。
…が、無理ゲーですねぇ〜。
ちなみに、環境構築手順書は俺の殴り書きが追記されてアップデートされました。環境構築中に逃げ出す人を減らしたい一心でひたすら殴りがいたものです。
まぁ、それを使ったとしても当然のように動かないんですけどね。クソ現場撲滅したい〜。
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