
在る日の光景
内観をするワークをしていたら
人生において、宝物のような光景を思い出したので
ここに書き記します。
父と先住ネコ、ミロの話
胃腸が丈夫で食べることが大好きな父は
胃カメラものんだことがなく
それが皮肉にも食道ガンになり、余命を半年と言われ
自分で選んだ放射線治療も頑張って約一年の闘病をした。
一度は小さくなったガンも胃ろうで補った栄養で再び大きくなり
あっという間に水も飲めなくなった。
暑い7月のある日、
そろそろ覚悟、心の準備をと医者から言われた。
わたしは父とミロを会わせたくて
主治医に懇願し、外出許可をもらった。
なにかあったら、救急車を呼んで戻るよう約束して。
介護ベッドもレンタルし準備万端。
まだ意識もはっきりしている父のもとに
何度も抱っこしてミロを連れていったけど
直ぐにベッドから降りてしまう。
それでも、家に居る安心感
テレビで岩合光昭の世界ネコ歩きを流しながら
とても穏やかな空間
油断して、うがいして出す水を
父は飲み込んでしまった。
大量の痰が出て、激しい咳き込み
慌てて救急車を呼び
泣きながら、ごめんねと言いながら
父の背中をさすっていたら
ミロが父の膝の上にぴょんと飛び乗った。
その時の父の嬉しい顔と優しくなでる手
大人しくしているミロの神妙な面持ち
だんだん近づいてくる救急車のサイレン
たった30分の一時帰宅となった。
なんで、忘れていたのか
どうして思い出したのか
分からないけれど
今は亡き2つの愛おしい命と
たった数分の、とても優しい光景
いま、魂は寄り添っているかな。
思い出せて、良かった。