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映画が『若草物語』の中に生きている少女たちに変化をもたらした

 

 『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019/アメリカ/監督:グレタ・ガーウィグ) がNHKBSで放送されたのを視聴した。日本公開がコロナウィルスの感染拡大と重なっていたので、劇場に観に行けなかった。

1949年版(マーヴィン・ルロイ監督 メグ/ジャネット・リー、ジョー/ジューン・アリソン、ベス/マーガレット・オブライエン、エイミー/エリザベス・テイラー)1994年版(ジリアン・アームストロング監督、 ジョー/ウィノナ・ライダー、マーチ夫人/スーザン・サランドン)

 計3作の映像化された『若草物語』を見てきた。

『若草物語』は、少女のころ親しんだ作品である。お気に入りだったが、教育小説という印象が強く、成長してからは読み返さなかった。『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』を見た後、久しぶりに本を開いてみた。四姉妹は、映画の中で今を生きるかのように成長していた。

 主人公はマーチ家の四姉妹で16歳の長女メグは貧しい生活から抜け出し結婚に幸せを求める。15歳の次女ジョーは感じやすく激しい性格で作家を夢見る。13歳の三女ベスは内気で外の世界に出るより、いつまでも家族の愛情に包まれて暮らしたい。12歳の四女エイミーは、広い世界に飛び出すことを夢見る野心家である。

 1949年版は、テレビで放映されたのを見た。初放映は1972年とのことなので、ほぼ大人になってからだが、それでも随分昔である。大好きだった人気女優のジューン・アリソンのジョーと、マーガレット・オブライエンのベスが、イメージにぴったりだと映画を楽しんだ記憶しかない。

 1994年版は、四姉妹の描かれ方より、スーザン・サランドンが彼女のイメージ通りアグレッシブな母親を演じ、女性の生き方にしっかりとした考えを持って娘たちを力強く育てているのに驚いた。原作でもマーチ夫人は信念のある女性として描かれているが、むしろ信心深く人生に誠実であれと娘たちに道を示している。

 1995年にアメリカで製作された「リトル・プリンセス」(監督アルフォンソ・キュアロン、主演:リーセル・マシューズ)の主人公セーラも、原作より遥かに自分を主張し、「ノー」を言える少女として描かれている。同時期に観たので、時代は変わりつつあると思ったものだった。

  2019年版は、ジョーが家を出てニューヨークで自立する第2部に第1部が交錯する作りになっている。少女から大人の女性になったジョーが少女時代に経験した出来事を振り返りながら成長していく。
 この映画で、ジョーは、自分には自分で望む未来がある、結婚しない人生を選ぶかもしれないとはっきり宣言した。作者のオルコットは当時の典型として四姉妹を造形し、年若い読者の納得する将来と現実を用意している。だが密かに盛り込まれていた主張が150年かけて花開いた。

 音楽への愛と才能がありながら、ベスは野心を持たない少女だった。子どものころ、母に「4人のうちどの子が一番好き?」と尋ねると、エイミーという答えだったのに驚いた。自分が一番好きだったベスと言って欲しかったのに、「家族といつまでも一緒にいたいというのはどうかしら」というのだ。お母さんはちゃんと読んでいないからわからないんだわ、と大いに不満だったものだ。姉妹たちに愛する家族との別れを経験させる役割を担わせ、未来は用意せず夭折させる選択を、オルコットはした。原作を読み返し、子供のころ大好きだったベスの無垢を、再び愛おしく思っている。

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