未来人ーみらいびとー
雨の日のお出掛け
今日は久しぶりに街へ出掛ける。しかも苦手な電車に乗らなければならない。電車に乗るのは嫌いじゃなけれど、人が密接する空間があまり好きではない。だから、まだ乗る前から憂鬱だ。しかも今日は雨も降っているし…。さて、現地に着く前に少しぐらいテンションがあがるだろうか…。と思いながら足早に駅へ向う。
何時何分発かはなんとなく調べていたものの、時間を忘れてしまったのだがホームには数名の人が並んでいるので、どうやら間に合ったようだ。意識していたわけじゃないのに、タイミング良く電車に乗ることができた。思いがけなく待たずに乗れたからか、さっきまで感じていた〝憂鬱〟な気持ちも薄れていくようだった。
早くも遅くもない朝の時間帯だからか混雑はしていないが、平日なのにそれなりに人は多い。知らない人と隣り合わせの席になることは慣れてはいないから、今日は乗降口付近の手すりにつかまり立って乗車することにした。
普段履きなれていないヒールのあるブーツだから、転ばないようにぐっと両手で手すりに掴まって立っている。普段からぺたんこの靴ばかり履いてるしそんなに器用に身体が動かせるほうでもないから、転ばないか少々不安だが仕方ない。知らない人と肩を並べて座るよりもそっちがマシだし…。そんなことを思いながら、他の乗客と目が合わないように窓の外へ視線を移した。
今日は雨。ゆっくり〝カタンコトン〟と動き始めた電車の窓へ雨があたり、小さな水滴が1つの大きな雫になり風で流れて落ちていく。それと同時に窓の向こう側に見える景色が田舎の風景からどんどん都会の風景に移り変わっていく。地震が起きて数年たったけれど、以前乗った時よりも、随分街並みが変わってきていることも感じとれた。
私にとって今日この日は、あたりまえの日常とは少し違う。普段しない経路で今こうして電車を使い街へ出掛けている。それに加えこの路線を普段から利用している人にとっては、ありきたりな毎日の一場面にすぎないと思う。当たり前にただ過ぎゆく何気ない時間。
ほとんどの人が携帯電話を眺めていたり、イヤフォンで何かを聞いている。ほぼ毎日、この電車に揺られ通学や通勤又は遊びにでかけているのだろうと思う。そんな人たちの中に普段この路線を利用しない私のような新参者が突然現れたのだから、その人たちはどのように感じるのだろう?
何も思わない人もいるとは思うし、気がついていない人もいると思う。でも、もし私が逆の立場でそういう普段みかけない人を見た時は、すごく気になってその人をみていないようで、視線のどこかにぼんやりいれて、観察してしまうかもしれない。(ストーカーかっ苦笑)そんなことを考えながら車窓の外をぼんやりと過去の景色から何が変わったのかを確かめるように眺めていた。
つづく