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応募作品⑰『らんぼうなボクとやさしいボク』

※この作品は2019年、日本児童文学者協会『絵本テキスト大賞』に応募したものですが落選したものです。NOTEに掲載するにあたり、気がついた分については、多少修正や加筆しております。

この物語を考えることになったのは、我が子が、知的障害を伴う自閉症(重度)で、行動障害が起きていたことがキッカケとなりました。
物語中のママから陽(はる)への言葉は、実際私が我が子へ語りかけた言葉です。その時の声掛けを覚えてる限りになりますが、文章化したものです。
自分でイラストもかけるのですが、そこまで自分で考えるといつまでたっても人前に出せないので、文章だけNOTEに掲載することにしました。

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『らんぼうなボクとやさしいボク』


ボクは、時々
らんぼうなボクに
なっちゃうことがあるんだ。

らんぼうなボクになると
大好きなオモチャを投げたり
カベや床をドンドンキックしたり
ママやお友だちを叩いたり
大きな声をだして
怪獣みたいに
あばれたりしちゃうんだ。

__

らんぼうなボクがあばれちゃうと
大好きなはずのママや
おじいちゃんやおばあちゃん
クラスのお友だちや先生のことも
叩いたり、キックしたりして
ママやみんなを
泣かせちゃうこともある。

ママを叩いちゃったとき、

「痛い、やめて」


といって
僕のことを怒っても
ママはウルトラマンみたいに
叩いたりすることはない。
ママはスゴイ
どうしてママは
我慢できるんだろう?

__

それと、
らんぼうな僕になった時、
ママは、ママをパンチした
ボクのグーしてる手をつかんで
ボクがまたママを
叩かないようにするんだ。
それは、ウルトラマンと同じ。

それは、ママだけじゃなく
らんぼうなぼくから
ぼくのグーしてる手や
床や壁をドンドンして
キックしてる足を
守るためなんだって。

__

今日、ぼくは
またちっちゃなことで
イライラしちゃって
ママをパンチしちゃった。
だめだな…ボク。
またママとの約束をやぶっちゃった

すると、ママは
目に涙をいっぱいためて
悲しそうに
僕にこういったんだ。

__

「陽?
陽の手は人をパンチして傷つけたり
オモチャを投げたり
カベを叩いたりするための
手じゃないんだよ。
道具を使ってご飯を食べたり
ボクを楽しくしたり
ボクやボク以外の人を
守るための手なの。

足は人や壁をキックしたり、
物をこわすための足じゃないの
僕の行きたい場所に行ったり
危ない場所から逃げたり
僕やみんなを
幸せな気持ちにするために
使うものなんだよ。」

__

いつも優しいママが
今日はとっても怖くて
悲しそう…。
そんなママを見ると
僕も悲しい気持ちになる。
それにボクだって
こんならんぼうなボクは
本当はイヤなんだ!

ちちんぷいぷいってすれば
そんなボクが
どこかとんでいっちゃわないかな?
らんぼうな僕になるのはイヤだし
悲しいキモチになる。
でも、そうなってしまうと
ボクはボクが止められない。
どうしたらいいんだろう…。

__

ある日、
またボクの中の
らんぼうなボクがあばれだして
ママにケガさせちゃった。
僕は

「ごめんなさい」

といったんだけれど

ママは涙をぽろぽろ流しながら

「許さない」

っていった。
ママ、すっごく怒ってる。
どうしよう…
どうしたらいいんだろう。
ボク。
こまっていたボクに気がついた
ママが、

__

「陽!
『ごめんなさい』っていうなら
同じことはしちゃだめなんだよ!」

ってママはいうんだけれど
僕は『ごめんなさい』
することしか知らない。
もし『ごめんなさい』しても
許してもらえない時は
ボクはどうしたらいいのかな?
そんなことを考えてたら
ママが

「陽? 
陽の中にはさ、
らんぼうなボクや
いじわるなボクもいるけど
やさしいボクや
お利口さんな僕だっているよね?

それは陽だけじゃなくて
ママやお友だち、先生
おじいちゃんやおばあちゃん、
みんなみんなおんなじ。」

__

「ママは、陽の中に
やさしいボクがいることも知ってる
学校のお友だちや先生や
おじいちゃんやおばあちゃんだって
らんぼうなボクじゃない時は
陽がやさしいことは
知っていると思う。

だから、みんな、
らんぼうな陽に変身しちゃっても
〝ごめんなさい〟
すれば許してくれるし
また仲良く
遊んでくれるんだと思うの。」

__

「でもさ、陽のことを
知らない人たちの中には
『ごめんなさい』っていっても
許してくれない人もいるよ。

やさしい僕がいるってわかってても
陽のことを
嫌いになる人もいるし
『ごめんなさい』しても
ずっとずぅーと許して
もらえないこともあるんだよ。」

__

「だからね、これからは、
らんぼうなボクが
あばれはじめたら
やさしいボクが
らんぼうな僕から
ママやみんなを
守ってくれないかな?


それにね、やさしいボクが
らんぼうなボクから
みんなを守ることは
ボクを守ることにもなるんだよ。」

って、ママはいったんだ。

__

それと、ボクの中に住んでいる
〝らんぼうなボク〟を止めることは
ボクにしかできないんだって。
そうママが教えてくれた。

それが、ママやみんなを
〝らんぼうなボク〟から守ることになって
ボクのことも
守ることになるんだって。
いつかボクも
ママやみんなみたいに
できるようになるといいのだけど…
なれるかなぁ?

__

今すぐボクにできるかは
わからないけれど
らんぼうなボクが
またあばれだして
怪獣みたいに変身しちゃって

ママやお友だちを
パンチやキックしたり
大好きなオモチャを
投げたくなった時は

ちょっと怖い顔のボクですんだり
イライラな気持ちや
パンチやキックしたい気持ちを
だれかにつたえられたら
らんぼうなボクが
おとなしくなるといいんだけどなぁ。

__


そして、やさしいボクが
らんぼうなボクを
〝ヨシヨシ〟すれば
らんぼうなボクが
ご機嫌になって
ニコニコ笑顔のボクに
すぐ戻れるといい!
そんな日がいつか
ボクにも来ますように…。

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