「コンバットLARP」の考察
■目次
・空人の考える「コンバットLARP」とは
・本当の戦闘技術は、演技戦闘ではマイナスになる事がある。
・逆にハードヒットなLARPを考えるのなら
・最後に
■空人の考える「コンバットLARP」とは
前回の考察では、「演技戦闘とは「LARP内で行われる戦闘を演技する事」である」と考察した。
その後、ふと疑問が湧いた。
「ではコンバットLARPとはなんなのだろう?」、と。
と、いうのも、同じ「ライブアクションロールプレイング」という名前がついているにも関わらず、現状のストーリーLARPとコンバットLARPでは内容に大きな違いがあるように思える。
なので今回は「前回の文脈を踏まえた上での『コンバットLARP』とはなんなのか?」について考えてみよう。
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冒頭で前回の考察の結論を振り返ったが、改めて述べると「演技戦闘とは「LARP内で行われる戦闘を演技する事」である。
この考察の文脈を踏まえていうのであれば、コンバットLARPとは「戦闘シーンのみをプレイするLARP」と言えるのではないだろうか。
そうであれば「ライブアクションロールプレイング」の意味が、「ストーリー」でも「コンバット」でも一貫性を持って通じるようになる。
例えば、あなたは歴戦の戦士にして冒険者、としよう。
とある町に立ち寄った所、この町ではもうすぐ剣術大会が開催されるらしい。
歴史のある大会らしく、毎回全国から腕に自信のある戦士達が集まってきては熱戦を繰り広げているとの事。
そんな話に心惹かれたあなたは、居ても立ってもいられず参加することにしたのだった・・・。
と、いう設定の元、コンバットLARPに参加するのだ。
もちろん、参加するのはあなた自身ではなく、あなたが演じる「戦士の冒険者」だ。
こうすると、あなたが演じる「戦士の冒険者」が戦闘を行う為、これは立派な演技戦闘になる。
いかがだろうか。
もちろん毎回ここまで手の込んだ設定をする必要はなく、冒険者や傭兵同士の手ほどきという軽めの設定でも良いだろう。
この場合でも、「あなたが演じる何某」がそれを行うのだ。
最初は自分に近い戦闘スタイルのキャラが良いだろう。
慣れてきたらいつもは使ってない武器や戦術のキャラを作り、演技技術を深めても良い。
これから行うのは「試合」ではなく、「演技」なのだ。
本当の戦闘技術を用いる必要はない。
■本当の戦闘技術は、演技戦闘ではマイナスになる事がある。
LARPの戦闘で誰しもが一度は思うであろう事に、
「武術ができたら活躍できるのでは?」
というのがあると思う。
私自身も中国武術を学ぶ人間で、実を言えば上記の事をチラッと思ったことがある。
しかし、現実に試してみた結果、あまり良い結果にならないことがわかった。
その理由は、戦闘の目的が「実力勝負」になってしまうからだ。
「試合」であれば良い。
強い側が勝利を掴むのは当然だ。
しかし、演技戦闘は試合ではない。
お互いにいかに安全に相手を引き立てるか、戦闘を盛り上げるか、だ。
武術は基本的に、己の技が相手に見えないつくりになっている。
これは勝つこと、生き残る事が目的だからだ。
その為、技が決まっても対戦者や観客からは、決まるまでの流れも含めてよくわからないのはよくある事だ。
よくわからない戦闘は盛り上がりにくい。
しかし、演技戦闘は勝負事ではない。
カッコよく勝つために、素晴らしく負けるために戦闘を演じる。
あの最後の斬撃で勝負が決したのだ、と、相手にも観客にも明確にわかる為に、それが魅力的に観える為に、死闘を演じる。
もちろん、武術経験者は戦闘を行う際の最適な構えや位置関係を把握しているのでそれが魅力になる。
武術を収めていることが足枷になる事は無い。
ただ、武術は最適化された殺傷技術の為、相手が安全でいられるよう技を工夫する必要はある。
また、「魅せる」技術が武術の中には無い。
「どうすればこの一撃が強大で恐ろしい一撃に観えるのか?」
を表現する技術がないのだ。
あるのは
「この強大で恐ろしい一撃を見えないように、どう当てるか?」
だ。
この様に目的が違うために、武術は演技戦闘の下地にはなってもメインにはならない。
■逆にハードヒットなLARPを考えるのなら
では、演技戦闘ではなく「戦闘をするLARP」を考えてみるとどうなるのだろうか。
キャラクターは設定されていて演じるが、実際の戦闘シーンは「試合」で「見えない技」もバンバン使うし、ハードヒットもバンバン振るう。
「試合」である以上、アイゴーグル等の防具は着用必須。
心置きなくハードヒットができるよう、皮膚の露出は少ない方が良い。
実際には「試合」なのだが、例えばストーリーLARPで戦闘を「試合」で行うとすれば、リアルな迫力と緊張感がある試合を含んだ物語を楽しむことができる。
前線で戦うのは運動能力が高い人、もしくは武術経験者になり、そうでない人は弓や魔法で後方支援になるだろう。
後方支援職も相手側の弓や魔法を受ける可能性がある為、アイゴーグルや軽い防具を身に着ける必要がある。
また、ルールによっては後方支援職も前線を突破した戦士の攻撃にさらされる可能性もある。
全体的に参加ハードルが高めになるが、ひりつくような緊張感と興奮のある物語になるだろう。
しかし、怪我人が出る可能性が高めになるので、同意書や装備する武器や防具の安全チェック、保険の加入、資格を持った応急手当スタッフの充実等の対策が必須である。
これは運営だけではなく、参加する個人も同じ認識と心構えを持っていただきたい。
基本的には「誰も怪我をしない、誰にも怪我をさせない」が鉄則である。
■最後に
ここまで「コンバットLARP」について考察を行ってきたが、読者諸君はどのような感想を持たれただろうか。
国内で「コンバットLARP」という単語の定義がまだ固まっていないので、団体ごとにその定義は様々だろう。
現行でこれに相当するイベントを開催されている団体は存在しているし、「いまさらこの考察のような事を言われても困る」という感想もあるのではないだろうか。
この記事で挙げたのはあくまでも筆者が考えた定義であり、現行の団体を言及する意図はない事をこの場で断っておく。
また、ハードヒットな戦闘もきちんと安全対策を徹底し、いざ怪我人が出た時の対応を踏まえていれば、十分に楽しいイベントとして成り立つものと筆者は考える。
単純に「危ないからやめよう」であったり、「参加できない人がでるからやめよう」でイベントをやめてしまうのではなく、参加条件で分けられる事はあっても、多種多様なLARPの在り方はあってもいいのではないだろうか。
以上の内容を持って、筆を置く事とする。
ここまで読んでくださって、ありがとう。
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