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[Alexandros]ファンとして幸せすぎた「THIS FES」誕生の瞬間
[Alexandros]が、10月26日・27日に地元相模原にて「THIS FES」を開催した。これは彼らにとって初めての主催フェスである。そんな記念すべき2日間に、合計12組のアーティストが出演した。
突然だが、私は[Alexandros]の大ファンである。
割と長く彼らの事を応援してきているが、sumikaの片岡がMCで言っていたように「最初は一匹狼だと思っていた」。そして「メンバーの仲も良いし、4人で完結している」と思っていた。だからこそ、様々な仲間を招いて地元で主催フェスをする!という発表があった時はめちゃくちゃに驚いたもんだ。
でも、片岡はMCで続けてこう言った。「自分たちがバンドとして自立し、[Alexandros]というカラーが見えてから、そこに仲間を招く。筋が通っているバンドだなと思った」と。これにはめちゃくちゃ納得した。まさにその通り。足す言葉もない。本当に筋が通っているバンド、という言葉に尽きる。
「THIS FES」開催のきっかけは、WANIMAだったそうだ。WANIMAが地元の熊本で主催しているフェス「1CHANCE FESTIVAL」に出演したとき、KENTAが「熊本にかっこいい仲間連れてきました!」と言っているのを見て、「かっこいい!」と心を動かされたとのこと。確かに、WANIMAは地元・熊本を背負ってる感がめちゃくちゃある。実際に「東京都在住・熊本県出身、WANIMAです!」というフレーズはお決まりだし、故郷を詰め込んだ歌もある。熊本弁全開のトークも印象的だ。別にファンでなくても、WANIMAが熊本県出身なことを知っている人は多いと思う。
そんなWANIMAが、2021年のRUSHBALLの時に新型コロナウイルスの陽性判定が出てしまい、出演キャンセルになった。そこで急遽代打として出演したのが[Alexandros]だった。彼らは出られなかったWANIMAに向けて、WANIMAっぽいアレンジで「ワタリドリ パンクVer.」を披露。さらに、2022年に熊本で開催した「1CHANCE FESTIVAL」に、[Alexandros]も呼ばれ、その時にもパンクVer.を披露している。
そんなストーリーがありながら、今回はWANIMAが「THIS FES」で「ワタリドリ」を披露してくれたのだ。名付けて"ワニマドリ"。しかも最初は「みんなで歌おう!」とほぼアカペラで1番を丸ごと全員合唱。それだけでもたっぷりと時間を使ってくれたのに、更にそこから「WANIMAでワニマドリ!」と改めてコールをして、完璧なカバーを演奏してくれたのだ。楽曲は、WANIMAテイストにアレンジされていて、相当練習したんだろうな……と彼らの努力と愛を感じた。そう、愛に溢れまくったステージだったのだ。MCはほとんど[Alexandros]の話だったし、「相模原!」と何度も彼らの地元を叫び、曲中でも何度も「アレキ!アレキ!」と叫ぶ。そんな姿に、[Alexandros]ファンとして本当に胸が熱くなった。
そして、最後に歌った「ともに」の《出逢えて良かった/ありがとう/この想いよ届け》はWANIMAから[Alexandros]に向けられているように感じた。彼らの存在あってこその「THIS FES」。こちらが言いたい。出逢えて良かった、ありがとう、と。
[Alexandros]への愛を伝えてくれたのはもちろんWANIMAだけではない。2日間で出演したどのアーティストも、それぞれの想いやエピソードを語ってくれた。大物アーティスト・GLAYなんて、曲中に「Dracula La」のカバーをねじ込むという天才的パフォーマンスを魅せたし、マキシマムザホルモンは街中で会った白井の声が小さすぎるモノマネをして観客を笑わせた。そして04 Limited Sazabysは自身が主催している「YON FES」へのお誘いを匂わせるなど、それぞれが[Alexandros]に向けたライブを繰り広げていた。
そんな大きな愛を受け取った[Alexandros]のライブは、いつもと全然違う表情だったように思う。いつもはMCよりも、とにかくイケてるロックを掻き鳴らしまくって颯爽とステージを去る、という印象だ。04 Limited SazabysのGENがジャケットで着飾って登場したように、[Alexandros]にはどこかスタイリッシュなブランドイメージがあるように思う。結局、カッコいいライブしたもん勝ちやろ、というハングリー精神も感じる。それも彼らに惚れるポイントなのだが、この2日間はクールさなんて微塵もなく、本当に見たこともないくらいの幸せそうな表情で、相模原へ、そして出演者へ、集まってくれたファンへ、気合いを入れて準備してくれた相模原市役所の人へ、各方面に丁寧に言葉を紡いでいた。何万人もの観客が集まったステージなんて、何度も何度も見てきているはずなのに、初めて見るかのように目を輝かせていたあの表情は一生忘れないだろう。
その滲み出る多幸感を楽曲に落とし込んだライブは、そりゃもう一体感満載だった。激しいロックナンバーの「Kick&Spin」や「GirlA」で暴れるフロア、「Adventure」「Starrrrrrr」で巻き起こる大きなシンガロング、そしてリリースしたばかりの新曲「BoyFearless」「Back Seat」でも大盛り上がりをみせていた。
さらに初日には「日々、織々」でVansireとのぶっつけ本番コラボを披露し、2日目にはレーベルの後輩・WurtSを迎えた「VANILLA SKY」を演奏するなど、「THIS FES」ならではのスペシャルな時間も。Vansireにいたっては、まさに主催フェスならではのキャスティングだった。というのも、川上がNY滞在中に彼らを見つけ、自身のラジオ番組に流したところ、なぜか本人たちにそれが伝わり、DMがきて仲良くなったそうだ。そんな、めちゃくちゃ私的なエピソードも明かしつつ「サマソニよりもフジロックよりも先に呼びました!」と(Vansireのライブの時に登場してきて)嬉しそうに叫ぶ川上の姿も印象的だった。音楽ルーツが海外である彼らがフェスを主催するなら、絶対に海外バンドがいると思っていたが、まさにその枠に相応しい縁をもったバンドだった。
そうそう、ルーツと言えば。川上が愛してやまないoasisが再始動を発表。それ以降、川上のオアシス愛がいつも以上に爆発し(笑)、色んなステージでカバーを披露していた。だからこそ「THIS FES」で絶対にオアシス要素が何かしらあるだろう……と思っていたのだが、初日には何もなく2日目へ。このまま無いと思った矢先、まさかの[Alexandros]が出てくる直前に、爆音で「Don't Look Back in Anger」が流れたのだ!
これには会場も大盛り上がりで、大きなシンガロングが巻き起こった。まるで自分が海外にいる気分になるほどの一体感で、それはもう、めちゃくちゃ感動した。まさかこんなかたちで落とし込んでくるとは! 生まれ育った土地もそうだが、やはり人のルーツに触れるというのは温かい感動がある。一生忘れない感動体験がまた刻まれた。
改めて、新たなフェスが産声をあげた瞬間に立ち会えて本当に良かった。そして何より、自分が愛するバンドが、最高のバンドから愛されていることを知って、とにかく幸せな気持ちでいっぱいになった。相模原が私にとっても大切な場所になった。また来年も、再来年も、ずっと続いていってほしいと思う。初開催、大成功、おめでとう!