第19話 深夜のぼやき
橘さんから送ってもらった地図を頼りに指定されたお店に行くと、橘さんはもうとっくに先に来ていた。
「秋ちゃんこっちやで~」
橘さんに笑顔で手招きされ、またしても指定し
た席は自分の横…。なんなん…。
まだ他にも何人かスタッフさんもいてて安心したけど、程々にして良きところで帰ろうっと考え席についた。
ほどよくほろ酔い加減になってきて、そろそろお開きやなっと思てると橘さんが急に
「折角やし、記念に写真撮ろうや!」
と言い、自分のスマホを店員さんに渡した。
店員さんの合図で本日集まったメンバーでの写真撮影。
「ええ写真になったよ~。皆に送っとくなぁ!」
もうええって…早よ帰りたい…
コラコラ…表情でるやら考えないでおこう…。
そんなこと思いながら最後の一口残っていたウーロンハイを飲み干したところに橘さんから
「なぁなぁ!石井くんの彼女って誰やろうなぁ?」
飛んだ問いかけ。ウーロンハイ吹き出しそうになって両手で口を慌てて塞いだ…!
「石井さんって、あーいうこと普通に言いますけどね。」
慌ててる私を他所目に皆が持ち寄った石井くん情報を話し始めた。
「身長高いし、モテてるでしょうね実際。1回付き合ったら長いとかも話してたの聞いた事ありますよ。」
黙って聞いてたけど、皆なんでも知ってるんやね~…。
「秋ちゃんは?なんも知らんの?よく話してるやんか。仲ええやないの?」
「仲ええって…程でもないですけど。安田くんとの方が話します。歳も一緒ですし。」
ヤバい、なんか声震える。
ふぅーん、っと口を尖らせ不服そうな顔をしていたが、すぐに笑顔になる橘さん、
「まぁええか。二次会いこうぁ!!」
あーやっぱ、この人といると疲れる…。明日早いんでー、となんとか言うてそそくさと帰路に着いた…。
歩きながらこの間の石井くんの
「俺、今彼女いてるから」を思い出していた。
「なんで、言うたんやろう…。」
余計に面倒になりそうやったのに…。
そんなこと考えていたら気づけば自宅の玄関の前やった。
部屋に入ると、ホッと一安心し疲労がどっと押し寄せてきた。ベッドに飛び込みたい気持ちを抑えて、お風呂に入りやっとの思いでベッドに倒れ込んだ。
ウトウトと眠りに落ちそうになった瞬間
LINEの通知音が鳴る。
「石井くんや…。どしたんやろう?」
開いて見ると写真も添付されていた。その写真は先程の橘さん主催の飲み会での記念写真やった。
『橘くんと呑みに行ってたん?写真送られてきたから。』
橘さん、石井くんにも送ってたんかぁ…。
石井くんへの文面を打っている途中に
『なんか話したん?橘くんからLINEきてんけど。』
『『秋ちゃんって、石井くんの彼女やろ?』ってきたんやけど…。』
文面を打つ手が止まり飛び上がった。眠気も酔いも一気に冷める。
『私、なんも言うてないよっ』
『そっか。なら、やっぱ気づいてたんやなぁ。』
石井くんの『やっぱ』の文字に私も納得。
初めて会った時の橘さんの石井くんや私への言動、行動を思い返せば、確信を欲するべくやったんやろうなぁ…。
『まぁ、また明日話そうか。おやすみ』
と、本日の石井くんとのやり取り終了し、もう一度ベッドに潜り込んだ。
石井くんは橘さんのメッセージに対して何か返したんかな?だとしても、なんて返したんやろう…。
なんだか悶々と考え込みながらも酔いと睡魔に徐々に負けて、深い眠りについた。
本音を言うと
橘さん
「面倒くさいなぁ」
一言寝言のように、夢でなのか現実でなのか分からないが、1人の暗い部屋でそう呟いた私の声が少し響いた深夜1時過ぎやった。