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inagakijunya
坂道
居残り勉強して、夕方。俺は自転車を押して歩く。
「久しぶりだねえ、ゆっくり話すの」
隣でにこっと絵梨が笑う。クラスの誰々がむかつくとか、宿題終わらなくてヤバいとか、そんなことを話した。
「あ」
「え?」
春斗がこっちを向いてニヤッと笑う。これは“悪いこと”を考えてるときの顔。
「後ろ乗れよ」
「ええ!?......重いよ」
「んなの気にすんなって!」
私はおずおずと荷台にまたがった。やっぱり自転車が軋んで恥ずかしかったけれど、春斗は全然気にせずペダルに足を乗せ、グイっと漕いだ。
「お前しっかり掴まっとけよ!落ちても知らねえぞ!行くぞジェットコースター!!」
「わああ!!」
怖すぎて目を閉じてしまい、ビュンビュン通り抜ける風の音と、しがみついたウエストの意外な太さしか覚えてない。
「もう......!!」
心臓が破裂するかと思った。
春斗は単純に笑ってる。私も笑った。
はあ、ドキドキした......。