気候方針を巡って石油会社に圧力を強める機関投資家
欧州の資産運用会社27社で構成される投資家グループは、石油大手シェルに対して、パリ協定に則した中期GHG排出目標の設定を要求しており、次回の株主総会にて株主提案を行う予定です。気候方針を巡っては、投資家グループとシェルの間で意見が相違しています。本稿では、お互いに何を主張し、どのような点で意見の相違があるのか見ていきたいと思います。
投資家グループは、シェルに対して、パリ協定に準拠したGHG排出目標の設定を求めています。具体的には、スコープ3(顧客に販売した商品の利用等)の排出量について、絶対量で中期GHG排出目標の設定を要求しています。
一方、シェルは、世界のエネルギー需要に応え、株主への投投資リターンを維持するためには、バイオ燃料や水素、再エネなどの低排出のエネルギー源への投資と同時並行で、石油やガスのビジネスにも投資を継続する必要があると主張しています。
シェルは、スコープ1と2(自社オペレーション)の排出量について、2030年までに絶対量で50%削減することを目指しています。また、販売商品の正味炭素強度を2030年までに20%削減することを公約に掲げています。
炭素強度は、全販売商品の排出量を売上高で割ったものであり、この尺度を使うことで、シェルは石油・ガス商品による排出量を低炭素排出商品で相殺することが可能となります。投資家グループとしては、その点を問題視して、スコープ3の絶対量での排出目標の設定を要求しています。つまり、投資家グループは基本的に長期的には化石燃料ビジネスからの撤退を期待していますが、スコープ3について炭素強度を用いて目標設定をしている限り、石油・ガス関連ビジネスへの投資が継続されてしまうことを懸念しています。
今回の投資家グループの提案は非現実的かつ単純化された要求であるとして、シェルは彼らの提案に反対する考えです。シェルCEOサワン氏は、投資家グループの提案は気候変動の緩和に良い影響を与えるものではなく、シェルのビジネスや顧客、株主の利益に背くことになると話しています。
参考資料
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