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COP15 生物多様性の問題が盛り上がらないのはどうしてか?
先月エジプトで開催されたCOP27では、気候変動問題について各国政府間で白熱した議論が行われた。しかし、先週から開始された生物多様性に関する国際会議COP15はあまり盛り上げを見せていない。
COP27との違い
COP15では、カナダのジャスティン・トルドー首相を除き、各国政府のトップの姿は見られない。また、ビジネスおよび産業界のリーダーの姿もあまり見られない。更には、COP27と比べて、メディア関係者の姿も少なく、議論の内容が取り上げられる頻度も少ない。
生物多様性喪失の実態と経済的損失
Paulson Instituteによると、現状から何も対策を取らない場合、21世紀中頃までには約30~50%の種が失われる可能性があるとのこと。また、経済的損失の一例として、蜂などの受粉を媒介する種が絶滅した場合、農業に与える経済的損失は$217bnにも上る。
どうして注目されていないのか?
COP15は、国連主催の生物多様性に関する国際会議であり、2020年以降の生物多様性に関する世界的な枠組みを決定する、極めて重要な会議である。今後10年間の目標や戦略を決定するという点で、COP27のパリ協定と同じくらい注目されていいはずである。
それではなぜ盛り上がっていないのか?一つは中国がCOP15の持ち回り議長国を務めていることが関係している。現状中国は、メディアでの発信をあまり積極的に行っておらず、COP15を通じて外交的な対立が生まれるのを避けたいと考えているように見られる。もう一つは、開催のタイミングである。COP27直後ということもあり、メディアや政治家は気候変動の問題に多くの時間を割いているのが実態である。
それ以外の理由としては、COP27気候変動問題におけるグレタ・トゥーンベリさんのような象徴的な人物がいないことや、1.5℃目標のような分かりやすい目標やスローガンがないことも挙げられる。
加えて、ビジネスや産業界の関与が低い原因としては、気候変動およびエネルギー転換の問題と比べて、生物多様性の課題がビジネスリスクやチャンスに繋がるということが企業の間であまり認識されていないからである。実際に生物多様性の課題は、非常に複雑な問題であり、気候変動のようにGHG排出量の削減といった簡単な目標設定を行うことができない。
この現状を変える方法はあるのか?
一つの良い兆しとしては、この問題に対して、既に民間部門が動き出していることが挙げられる。その代表格として、自然関連財務情報の開示枠組みを開発する、Taskforce on Nature-related Financial Disclosure(TNFD)の存在が挙げられる。TNFDは既にネスレやタタスティール、HSBC、キリン、ブラックロック、Avivaなどの数多く企業から支持を集めている。
国連が各国政府に期待していることは何か?
モントリオールで開催されているCOP15において、締約国の間で、2030年までに世界の陸域と海域の30%が保護されることを合意すること。
2025年までに生物多様性の課題に対して従来の2倍の投資を行うことを約束すること。
生物多様性や自然に悪影響を与える伐採等に対して現在行われている年間$500bnもの補助金を、各国政府が止めること。
参考文献
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