彼氏がデキる子ちゃんでとても助かっている、と言いたいだけの、とりとめのない話。
しばらく仕事でてんぱっていて、いま、放心しながらじゃがポックルを食べている。落ち着け、今日はもう仕事は一切やらないぞ。やらなくていいぞ。
じゃがポックルは美味しい。じゃがポックルは、スーパーで買える日常の芋菓子の10倍高い。でもいい。高いから頻繁に食べられない。だから一層おいしいし、太り過ぎずに済む。
あ、別にじゃがポックルのことを書くつもりじゃなかった。
学生時代、仲良くしていた同学年の女の子がいた。彼女は、完全な優等生だった。高校時代は運動部で足が速くて、長い黒髪をポニーテールにして、勉強もできたから推薦で大学に入っていて、地方都市で大事に育てられたほどほどにお嬢さんで、美人だった。すんごいモテた。
私とは似ても似つかないが、一時期入っていたオールラウンドサークルで知り合い、仲良くなった。学生時代に彼女は2人の先輩と恋をして、そのうちのひとりと卒業後もしばらく付き合ったけれど、たぶんお互いに未練があるのに別れたままになって、就職して数年後、職場恋愛で結婚をした。
学生時代の彼氏と、結婚するんだと思っていた。とても優秀な男性で、彼女とお似合いだった。彼女は真面目に勉強をして、在学中に難しい資格もとって、でも、親が縁故で進めた会社で一般職で入社して、遠距離ですれ違ううちに彼氏と別れてしまった。(一般職って概念って、今はもう無いんだろうか・・・)
彼女はじたばたと手を伸ばさない。そんな彼女を私はいつも、偉いな、でももどかしいなと思って見ていた。彼女には行きたい会社があったけれど、彼女には大好きな元カレがいたけれど、どちらも、手を伸ばさなかった。せっかく親が話を進めてくれたからと、希望する会社は受けないまま就職を決めた。就職先で、彼女を好きになった男性としばらく付き合って、求められるままに彼女は結婚をした。
彼女の賢さと美しさと優しさと気配りを思うと、私は複雑な気持ちになったものだ。彼女はとても、なんというか、慎ましい。もっともっとって欲しがらない。彼女は結婚して仕事をやめて、20代のうちに優しいお母さんになった。
結婚した彼女の家に遊びに行くと、彼女は、ランチのためにわざわざバターロールを4つ焼いてくれた。パン教室で習ったのだという。何をやっても優秀な人なのだ。当時非正規雇用でふらふらしていた私は、「自分は一生、バターロールをわざわざ4つだけ焼くような豊かな生活はできないんだろうな」って思いながら、彼女のかわいいお嬢さんと一緒にお昼をいただいた。
あ、別に、友達の話がしたいんじゃなかった。前置きがとてもとっちらかっている。
平日、彼女のおうちでランチを食べながらお喋りをした時に、彼女は言った。彼女の旦那さんは高卒(彼女は有名大学卒)だけど、生きて行くスキルみたいなのは、旦那さんの方がよっぽど高いって。たとえば、車で遠出する時の荷物のパッキングとか、旦那さんの方がよっぽど早いし上手だって。
子供ができてからは、恋愛感情みたいなのはもうないな、と微笑みながら、彼女はちゃんと家を心地良く整えて、美味しい食事を作って、幸せな家庭を大切にマネジメントして生きている。
私たちは、仲良しだったけれど、2人とも全然似ていない。似ていないところが面白くて、なんとなく仲良くしているのかもしれないなと思う。
私は彼女のように美人ではなく、賢くもなく、穏やかな優しさと気配りに溢れてもいない。そのくせ私の方がずっと欲深く、彼女だったら決して選ばないであろうナゾの仕事をしたり、ダメンズと付き合ったりしては、じたばたしてきた。
ゆえに、彼女のことが大好きだけれど、彼女と私に共通点はひとつもない、とずっと思ってきた。
でも、彼女と会話して20年経って、年賀状以外に何年も会っていない今になって、なんとなく彼女の言葉を思い出している。
そう、私の彼氏は私よりフツウの学歴だけど、生きて行くうえでのスキルは、彼氏の方がずっとずっと高い。彼女が言っていたのは、こういうことだったのかと、私は思う。
お勉強ができることは、時に、余計な遠回りや要領の悪さにつながりがちで、必ずしも生きて行くうえでの賢さとはつながっていない。
付き合う前から、彼とは話がさくさく進むからすごく助かるなって思っていた。デートの待ち合わせやお店決めで、何往復も重ねなくても話が決められることに好感を持った。
ちょっと前のこと、ミュージカルに行きたいから彼氏を誘ったら、「いいよー」と彼氏は快諾した。でも私は仕事がテンパっていたので、彼氏に、
・○○というミュージカルのチケット予約してもらえると助かる
・〇月の土曜日ならいつでもいい
・劇団四季のサイトから、イベント割のとこ見て予約しておいて
・席種は任せた
という淡泊なお願いLINEをしたら、次の返信ではもう予約が完了していた。
ミュージカルなんて見たことも無いのに、日にちと時間と席種を決めて予約をサクッと済ませてくれるなんて、ウチの彼氏はなんて優秀なんだろう!
ということを、ただ単にのろけたかっただけなのだ。
決めてくれるの、ほんと助かる。彼氏ありがとう。
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