静寂の心地よさ

先日、勢いで購入した五十嵐　紅　(いがらしこう)さんの名古屋公演に行ってきました。

　場所は名古屋の電気文化会館
『ザ・コンサートホール』
愛知県にずっと住んでいるけれど、このホールは初めてでした。
電気の科学館の地下2階です。

　ここにホールがあることすら知りませんでした。
395席収容の縦長のシューズボックス型ホール。
客席はイタリア産の大理石で囲まれています。
音の素晴らしさで有名ということです。

　ホールは地下なので着席すると電波は途絶えます。開演までプログラムを眺め、大好きな「ムーンリバー」「シャコンヌ」「cavatina」「ひまわり」「ラグリマ」「ニューシネマパラダイス」が聴けることを確認。

　客電が少しだけ落ちて、五十嵐さんが登場。舞台上は何もなく五十嵐さんと彼の持つギターのみ。
　五十嵐さんは、立ってギターを弾きます。彼の持つギターは彼の為の特別なモデルだそうです。通常のクラシックギターよりも小さめです。
　そして、爪を使わない「指頭奏法」(しとうそうほう)で演奏されます。とても優しい音です。

何も知らずインスタとYouTubeの演奏を見て飛びついた私にも、曲間に丁寧に優しく色々お話してくださり、頷きながら聞いておりました。
　人柄が出ますね。

五十嵐さんは『バッハ』が大好きだそうで、バッハについて語りたくて、バッハのあんな曲も、こんな曲も弾きたくて仕方ない様子でした。好きなものを語る時って誰でも可愛い。

お客さんもなんだか皆様上品な感じで、この素敵な演奏を楽しみに集まったのがとても伝わります。自分の呼吸音でさえ聞こえそうな静まり返った中で演奏が始まると、私も心地よくてなんとなく体が揺れてしまいました。そこはもう、特別な空間でした。

季節柄、咳とか出ちゃうけど、のど飴を食べたいときは、演奏中じゃなくて、曲間の自分が話している時に飴の袋をあけると音が気にならなくていいよと話されたり、自分のギターのことや、バッハの事、日本の音楽のこと、ギターをはじめたきっかけ、楽曲の背景など沢山お話もしてくださいました。

五十嵐紅さんはソロ公演のステージ直前と、ステージのあとの夜にインスタライブをしてくださっていました。この名古屋公演の夜もインスタライブをしてくれました。

とても良いホールだったと、音がキラキラしていたと。会場のスタッフさんがお客さんのお行儀が良いと誉めてくださっていたよとか、話されていました。

そう、それから、五十嵐さんは公演後に会場の出口に立たれて私たちをお見送りしてくれました。ずっと『ありがとうございました』と何回も何回も言ってくださって、退場する長い列を見送ってくださいました。

　なんて、素敵な方なのでしょう。

来年には初のCDも出るようです。
楽しみです。
そして、また6月にはトリオで名古屋のこのホールにみえるかもしれません。
楽しみです。

クラシックギターのソロ演奏のコンサートは初めてでしたが、良い経験をしました。
静寂の中に放たれたキラキラのギターの優しい音色に身体が自然に波を打ちゆっくり揺れました。
　なんとも心地よく、空間に音と身体が溶けていく多幸感。心につっかえていたものがスッとなくなりました。

　約1時間の贅沢な時間でした。