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ばあちゃんのホットケーキ


みなさんは家でおやつを作ることはありますか?
ひとえに家で作るおやつといっても様々なものがありますよね。     ケーキやクレープを作る人もいれば、ドーナツやクッキーを作る人もいると思います。

自分で作るとなると手間がかかりますが、外で食べるスイーツやお店で買うお菓子とはまた違う良さがあります。
いちばんの醍醐味は、形にとらわれないで自由に作れるということにあると思います。

自分好みの味や形で、世界に一つしかないオリジナルのおやつを作ることができるので楽しいですね!
それに、家族みんなで楽しく作れるというのも魅力の一つです。
友達といっしょに作ったり、恋人同士で作るというのもいいと思います。

なにがいいって、みんなで作れるから思い出にもなるんですね。
それは料理やモノ作りにも言えることだと思いますが、おやつを作るというのは少しばかり特別な感じがしませんか?

やっぱり、おやつって買うことの方がほとんどだと思うんですよ。
だから家でおやつを作るというだけで、なんかワクワクするんですねw
とくに子供の時なんかは特別な感じがして楽しかったです。


『おやつ作りと思い出の味』

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その中でもいちばん思い出に残っているおやつがあります。
それは、ばあちゃんのホットケーキです。
正確には、ばあちゃんと一緒に作ったホットケーキになります。

私のばあちゃんは、よくホットケーキを焼いてくれました。
たまごと牛乳、それからホットケーキミックスを入れてかき混ぜるのが私の役割でした。
それをフライパンではなくホットプレートに流し込んで焼くのです。

流し込む生地の大きさは10センチ、あっても12センチくらいでした。
いま思うと、子供の私でも食べやすいように小さく焼いてくれたんだと思います。
その代わり、たくさん枚数を焼いてくれました。

気泡がプツプツとはじけ、クリーム色の生地にきれいな焦げ目がついていくのを見るのが面白かったです。
そろそろ返し時となると、自分がやってみたくて仕方がありません w
サイズが小さく子供の私でも成功するので楽しかったんだと思います。

2~3枚くらい焼けると皿に移し、バターをのせてメープルシロップをかける。
いたってシンプルなホットケーキでしたが、私はあのやさしい甘さが好きでした。

フォークだけでも食べれるのですが、ばあちゃんはナイフも用意してくれました。
子供の私は両手がふさがるので不便でしたが、その不便さもどこか特別な感じがしていましたね。
なんか大人になった気分で 笑

私にとってばあちゃんと作るホットケーキは、ご褒美というよりも楽しみの一つでした。
「じゃじゃ~ん、ケーキだよ!」というようなサプライズ感はないですが、準備から焼き上がりまでの作業を手伝っていっしょに食べる。
このことがワクワクしてホットケーキをさらに美味しくするんです。

私のばあちゃんは基本おやつを作ることが好きなんです。
他にもゼリーやプリン、ドーナツなども作ってくれました。

「昔は今みたいにお菓子がたくさんあったわけじゃないから、なんでもこうやって作ったんだよ」

これがいつものばあちゃんの口癖でした。
毎回のように言うので少しうるさいなと思っていましたが、戦争を生き抜いた世代の人なので、知恵をもって作ることの大切さを教えてくれていたのだと思います。

だから、色々なおやつを作れる喜びをよくわかっていたのだと思います。
まず、ばあちゃん自身が楽しそうにおやつ作りをしていました。
なにかと戦時中のことを話していましたが、その時はどこか遠くを見ているようで悲しげな目をしていました。

しかし、おやつを作っている時や趣味の裁縫をしている時は本当に楽しそうでした。
いろんなことができる、そういう時代になったことを心から喜んでいたのだと思います。

ばあちゃんは畑仕事もやっていました。
夏場の炎天下でも、いつもニコニコして作業をしていました。
小さい畑ではありましたが、トマトやナス、白菜にキャベツ、トウモロコシやら枝豆やらニンジンやらと色んな野菜を作っていました。

誰にあげるという訳でもないのですが、家で食べる野菜を作っていました。
趣味とはいえ大変だと思っていたので、ばあちゃんに疲れないのかと聞くと、

「そんなこと言ったって好きだからいいんだ。ばあちゃん幸せだよ」

そう言っていました。
ばあちゃんが幸せならいいのですが、私は切なくなりました。
家では、じいちゃんを早くに肺がんで亡くしています。
まだ54歳とかそのくらいの年齢だったと思います。
それからずっと一人でいたので、幸せという言葉に切なさを感じました。

それでも幸せだと言えるばあちゃんは強くもありました。
全力で何かをするその顔は、にこやかであり少女のようでもありました。
戦時中にできなかったことを存分に楽しんでいる感じでしたね。
生き生きとしていて、子供ながらに羨ましく思いました。


『ばあちゃんお疲れ様 ありがとう』

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そんなばあちゃんも数年前に亡くなりました。
じいちゃんを亡くしてから長い間ずっと一人でいましたから、ようやく一緒になれるんだと思いました。

愛する人を亡くした辛さや苦しさはもちろんあったと思います。
ただ、じいちゃんの分まで生きるという強い想いがあったことを私は知っています。
だから悲しみや辛さを乗り越えていけたのではないかと思います。

その想いを私は聞いていましたし、ばあちゃんの姿からも感じていました。
だからこそ、私は悲しい顔ではなく明るく送り出せたんです。
私たち夫婦には子供はいませんが、ばあちゃんが亡くなる前に妻を紹介できてよかったです!

たくさん心配や苦労をかけましたし、親の離婚やいじめが原因でグレたことで迷惑もかけました。
妻とばあちゃんと3人でご飯を食べに行ったり、温泉に行けたりしたことがせめてもの思い出となってくれていれば嬉しいです。

今となっては一緒にホットケーキを作ることができませんが、ばあちゃんのホットケーキは私の大切な思い出です。
ふと、ばあちゃんのことを思い出すときがありますが、不思議とせつなくはならないのです。

それもこれも、いつもばあちゃんが楽しくおやつを作ってくれたからです。
ニコニコといてくれたからこそ、寂しい思い出にならず明るい気持ちで思い出せるのです。
本当においしいホットケーキでした。

また、近いうちにホットケーキを作ってみようと思います。
あの時のようにちょうどホットプレートもあるので。

ただ、ばあちゃんのように優しい味が出せるかはわかりませんけどねw




〈チッチと出目金ぷっぷのひと言ふた言〉

今回は私の思い出の味、ばあちゃんのホットケーキについて話をしました。
誰にでも思い出の味というのはあると思いますが、みなさんにとって思い出の味とはどんなものでしょうか?

おやつ作りや家庭料理に限らず、お店や旅行で泊まった旅館の食事かもしれませんね。
でも、必ずひとつは印象に残る味というものがあるはずです。

おやつや料理など、食べるものには味の記憶だけでなく、思い出というものが残ります。                            私は、その思い出を大切にしたいと思っています。

いつ、誰と、どんな時に。
食事には何かを思い出す不思議な力があります。
味であったり光景であったり。                    それであるからこそ、おやつや料理は奥が深いのだと思います。

家族、友人、恋人、先輩、後輩、上司、部下。
自分にとって大切な人との思い出を大事にしてほしいと思います。
おやつ作りや料理は、その一つのきっかけです。

ふとした時に思い出すことができる味や光景があるというのは、本当に幸せなことだと思います。
いつまでも忘れず、大切にしたいものですね。



それでは、また次のお話で。




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