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レトロが流行っている





「レトロが流行って久しいですが、どのようにお考えですか?」




年齢はぼくと同じぐらいであろう、スーツ姿の女性が来店した。



ぼくの店に初見でスーツ姿で現れる方はそこそこの確率で飛び込み営業の方だ。


例にもれず、その女性もそうであった。
商材はすぐにお断りさせていただいたが、彼女はその後ぐるりと店内を回ったのち、文頭のご質問を頂く。





自分の従事しているビジネスとは異なる形態に興味を持つ、というのは素晴らしいことだし、なんというか仕事熱心な方だと感じ、出来るだけ誠実にお答えしたいとおもった。





しかし、流行の渦中にいる自覚なんてぼくには一才ない。
同業者との間でも「レトロ流行ってるよね~」なんて交わした覚えもない。


誠実にあろうとしても、認知していないことを問われるのはとても難しい。


そもそもどこでどのように流行ってるんですか、レトロ。


そういえば先日、仙台経済界という誌面にとりあげていただいた。



その際も「レトロビジネス特集」ということであったがどこに商機を見出してはじめられたのですか?との質問にたじろいでしまった。

好きで。

以外の志も理念もないため、ひどく内容の薄い記事になってしまっただろうと後悔している。



というか、流行っているレトロというのはどの世代を指すのだろうか。



団塊世代と三丁目の夕日が示すように、懐古主義というのは社会に台頭する年代によって内容はリバイバルし続けていくのではないだろうか。



となると、令和5年現在の社会に生きる壮年層の求めるレトロとは1980〜1990年代ぐらいなモンで、たしかにその辺りがキてるのは間違いないかもしれない。




平成初頭の玩具や流行がフューチャーされているのは確かに目に入る、ちょっと前の【平成初頭に連載していた漫画原作のドラマ】が乱立したのもソレにあたるかもしれない。



しかし、当店はふるくは幕末~新しくても昭和の3,40年代のモノがあふれる古道具屋。




流行っているであろう年代のカルチャーよりもさらに古いモノが大半な当店でソレを聞かれてもちょいと困る。





誠実に、と考えあぐねてぼくが出した答えは「あまりぼくの商売には関係がないと思います・・・」であった。


彼女も「そうでしたか」と一言、期待とは異なる回答をされたときの表情、一言で表せば【がっかり】して帰っていった。



なんと答えればよかったのだろう・・・。
 
 
そもそも、レトロが流行っているという文面にそもそもの矛盾を感じすらしてしまう。
 

一昼夜過ぎた現在もモヤモヤが晴れずにいる。
 
古物の流行にすら乗らない、古道具商の姿である。
 
 
アベソラタロウ
 

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