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お代理さま日記: うなる赤ぺんてる
フリーランスのウイスキーコンサルタント(のようなもの)を本業としながら、とある大都市の観光案内所の所長代理という顔も持つ私。
1日平均500人以上の来訪者に対応する中で起こるちょっとした出来事を物語調に綴ります。
「すごく妙な質問をしてるのは分かってるんだが…」
「ジャパニーズウイスキーを買える場所はないか?デパート以外で。」
数ヶ月に一度ぐらい、案内所に入るなり この私にこんな質問をしてくる外国人が現れる。今日はその日だった。
🥃
「オーケー、近隣の酒屋を紹介するね。実は私、ウイスキーを専門にしててね。アナタ、正しい人間を捕まえたわよ」
「それはラッキーだな、デパートのジャパニーズウイスキーは高いんだよ」
苦笑いするしかない。
新宿の英語版の地図を出し、近い所から大きめの酒屋をマークしてゆく。
YAMAYA。
SHINANOYA。
「そしてここが…LIQUOR……MOUNTAIN」
「ワオ、なんつー名前だ!笑」
🥃
聞けば、ジャパニーズウイスキーで"メジャーでない物"が欲しいと言う。
「なんか、SAKEの樽とかで熟成した〜とかいうのがあるじゃない?ああいうのはどうなの??買いなのかね…?」
「うーん、、まあ正直に言うなら……私なら買わないな!(笑)」
「やっぱりそうか。サントリーは自分の国でも買えるんだよ。そういうのじゃないジャパニーズウイスキーって言ったら、何があるんだ?」
「そうだねー、ちなみにICHIRO'S MALTは聞いたことある?」
「ないなー。シングルモルト?」
これには私が 少しばかり驚いた。イチローさんの名はジャパニーズウイスキーを求める人でもまだ轟いていない所があるということか。
🥃
「教えて欲しいんだが、デパートでジャパニーズウイスキーを見ると、1人1本までとか制限されてるんだ。あれはなぜなんだ?どうしてそんなことをする??」
私は 少し声のトーンを落として答える。
「率直な話をすると、、制限しないと、特定の国の人が全部買っていってしまって、しかもそれらを法外な値段で売り飛ばすんだよ…」
「そういうことか!じゃあ国が何かルールを設けているのではなくて、それぞれの店が決めてそうやって売っているんだ?」
「その通り。みんなに平等に行き渡らせるためにね」
「なるほど、よーくわかった」
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再びジャパニーズウイスキーの銘柄を考える。
「ICHIRO'S MALTは見つけられたらラッキー。それ以外には、そうだなあ、MARSとかもいいね。ASAKA、KANOSUKEなんかは新しいけど優秀。ちなみにサントリーのブレンデッドウイスキーは知ってる?めちゃくちゃ安くて手軽で、そして美味しいと思うよ。OLD、RESERVE、ROYAL。この3つは名作だね、しかもコンビニでも買える。」
「よく知ってるなー」
Who the hell you think you’re talking to?
「あとはそうだな、KIRINのFUJIもいいね。全部名前を統一してるんだけど、シングルモルトもブレンデッドもある。」
さっきマークした地図の片隅に、これらの銘柄をペンてるのサインペンで書いてゆく。
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「あと、空港でもジャパニーズウイスキーは買える?他で買うより高くない?」
「空港で買うなら免税店で空港限定のものを買うに限るね。他では買えないから絶対見てみるべき。」
当然である。私は必ず空港限定をしっかりチェックする。
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「それにしても日本は、スコッチまでなんでこんなに高いんだ?」
「そう思う?最近は輸送コストが嵩んでるのが1つの原因かもね。」
「なるほどな」
🥃
結局のところわかったのは、カナダに住むスコットランド人の友人がいつもカナディアンウイスキーばかり飲んでいるので、ジャパニーズウイスキーを土産に持っていってやりたい、のだそうだ。
「買って持って帰るにも本数制限があるだろ?だからよく考えて買わないといけなくてさ」
「税金払ってもダメだった?」
「…それは考えたことがなかったな…ちょっと調べてみる。」
なかなか面白い思考回路のお客様である。
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「いやあ良い話が聞けた、パーフェクトだよ👍 ありがとう!」
「とんでもない。酒屋めぐりぜひ楽しんで!」
赤文字だらけの『SHINJUKU MAP』を握りしめて、その人は颯爽と日曜の大都会へ繰り出して行った。
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自動ドアが閉まると、同僚が横でつぶやく。
「あの方、snoop-kさんに出会えてラッキーですねえ。他の案内所じゃ絶対教えてもらえない情報ですよ」
自分が抱える2つの全く異なる仕事やライフワークがふいに繋がり、自分にしかできないものが生み出せたと感じられる時。自分の中の点と点が線になって、フワッと飛び立っていく時。こんなに楽しいことはないですね!
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