ヘベレケ日記: 「ウイスキー検定」 誕生秘話
皆さまごきげん酔う。
今宵はどんな1杯をお楽しみでしょうか。
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検定資格、何かお持ちです?
”検定ブーム” が起こって久しい気がします。
世界遺産検定、きのこ検定、ねこ検定、掃除能力検定 等々…。今は探すと何でも検定がありますね!かく言う私も、ニッチなところでいくと色彩検定3級を持っています。資格というのは、取ることそのものよりも、”知識を得る悦び” だったり、自分以外の人に得意分野をわかりやすく伝える手段の1つではないかと思います。
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「ウイスキー検定」ができるまで
さて、ウイスキーが好きだから、「ウイスキー検定」を受けよう!と思う方も多いと思います。今回は、この「ウイスキー検定」を新規事業として立ち上げた時のお話。
ウイスキー検定は、日本で唯一のウイスキー評論家・土屋守代表が運営する会員組織「ウイスキー文化研究所」が主催する検定です。当時はウイスキー文化研究所ではなく、「スコッチ文化研究所」と名乗っていました。私は2013年から2015年の3年間、そこに所属しておりました。
業界ビッグバン
この検定の発足は2014年。
この年は、日本のウイスキー界にとって”100年に一度のゴールデンイヤー”と言われました。ウイスキー界というのは、世界的に30年周期で浮沈を繰り返すと言われています。その世界的なピークの真っ只中だった上に、図らずも日本ではあのNHK朝の連続テレビ小説で、「マッサン」が放送されたのです。この、俗に言うNHKの朝ドラというのは驚くほど影響力があり、あっという間に日本はウイスキーブームに入りました。世界的なピークに重ねて、日本での独自のピークが重なり、2014年という年は過去に類を見ないウイスキーフィーバーになりました。
長い間、超のつく不況に陥っていた日本のウイスキー業界は、この流れに一気に流れ込みました。私は偶然にも、この2014年を完全にカバーする形で、スコッチ文化研究所(現ウイスキー文化研究所、通称スコ文研/ウイ文研)でウイスキー普及に関するあらゆる業務にバリバリ仕事に打ち込んでいました。その中でもこの「ウイスキー検定」というのは、新規事業の立ち上げという、比較的難易度高めの業務でした。しかし、国内で(”ジャパニーズウイスキーの父” 竹鶴政孝氏という人物を通して)ウイスキーに興味を持って下さる方々が激増するタイミングは、この検定事業をスタートさせるには絶好のチャンスだったのです。
参考にさせてもらったのは、当時すでに確立されていた「ビール検定」。同じ酒類の検定ということで、その主催をされている所に何度となく通い、立ち上げや運用のノウハウのアドバイスをいただいたりしました。
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看板作り
そしてこの「ウイスキー検定」というロゴと、エンブレムのマークは、当時の同僚によるデザインです。発足から8年経った今も、ウイスキー文化研究所は変わらずそのブランドを守ってくれています。個人的には、「ウイスキー」の「ー(音引き)」が波打っているところが素敵だと思っています。(細かいですが、こういうちょっとした所がいつの間にか皆さんの印象になっていくのです!)
このエンブレムマークは、ヨーロッパの紋章の仕組みから生まれました。
ヨーロッパの紋章というのは、その家にまつわるアイテムやモットーが散りばめられているものが多く、日本で言う家紋のような役割を果たします。少々他の方の記事を拝借。
一般的なエンブレムの形を4分割し、ウイスキーに欠かせない4要素「麦」「水」「ポットスチル(蒸留器)」「樽」を盛り込んだ、とても可愛いデザイン。この4つのイラストは、規則的に並べて背景柄にされたり、今ではマスキングテープとして販売されたりしています。
悩みは色々ある
ウイスキー検定を英語でどう表記するか?という点も考えました。
ExamやCertificationなども考慮されましたが、結局のところ「Whisky Kentei」とそのまま日本語をローマ字表記することで決定したのでした。
当時スコ文研では、すでにバーテンダーさんや酒類業界、料飲会社に勤めるの方のようなプロ向け認定試験「ウイスキーコニサー資格認定試験」というものを運営していたので、それよりもハードルを低くした、広く一般の方々にウイスキーを知ってもらいたい!という気持ちから生まれたのが、ウイスキー検定です。キャッチーで親しみやすいことが重要でした。
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そしたら次はPR
新しく生まれたものを、どうやって皆さんに知っていただくか…?
いわゆるPRマーケティングですが、これにも苦労しました。
公式テキストを出版したり、ピンバッヂを作ったり…(このピンバッヂは注文時に意思疎通が上手くいかず、実は一度作成に失敗しました!今では良い思い出ですが当時は焦りましたね〜〜〜)
パンフレット作成して関係イベントで配布していただいたり、
試験前の対策講座を企画したり…
それから、同じ「麦」を原料とするという繋がりで、「ビール検定」さんと「パンシェルジュ検定」さんとタッグを組んだりもしました。一緒に受験を申し込むと割引になったり、お互いの試験当日にパンフレットを配布するといった試みもやりました。
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ついに訪れるその日
そして記念すべき第1回、決戦は2014年12月7日。
我々スタッフも2級を受験するよう命じられ、必死で勉強して(笑)その日を迎えました。(第1回は3級と2級のみの実施)
受験者特典としてクリアフォルダーも作成しました。
何しろ問題作成は全てボス。主催会社のスタッフなのに、どこをどう間違えたかバレる…。そう思った時のプレッシャーたるや、それはそれは胃が痛くなる思いでした(笑)。でも、スタッフには一定の正しい知識を身につけて欲しいというボスの思いもわかります。
試験当日の机の上の写真。
公式テキストから覗くおびただしい付箋の数(笑)
ちなみに、これまた今となっては良い思い出話ですが、問題用紙では選択肢が「1・2・3…」なのに、解答用紙の選択肢がなんと「A・B・C…」で印刷されていたというビッグミスがありました。私もいち受験者として非常にやりにくく、受験者の皆さんにとても悪いことをしてしまった、、と思ったものです。(当時の受験生の皆さん本当にごめんなさい)
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運命の合否発表
マークシート方式なので、機械で採点して、合否通知は1ヶ月ほど後でした。
なんとか無事に合格。。。(笑)
合否の内容には、得点の他に全受験者の中の自分の順位もお知らせされます。
この認定証や、送付用の封筒、次回の案内などなど、これらも全て内製でデザインをしたんですよ〜
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当時デザインを一手に引き受けた同僚はさぞ大変だったでしょう…。認定証や認定バッヂは、1級ゴールド、2級シルバー、3級ブロンズと色分けをしました。よく見ると、エンブレムマークの周りにあしらった月桂樹(だと思う笑)や、認定級の背景にうっすらと樽のイラストを載せたり、そこには一つ一つデザイナーの想いや工夫があります。
新規事業の立ち上げというのは、ゼロからイチを作り出す作業なので、本当にきめ細やかな活動や制作が必要でした。(一番大変だったのは、全ての級に合わせた問題を毎回作らなければならない土屋代表だったと思いますが…笑)
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あれから8年。次回、2023年2月の実施で16回を数えるまでになったウイスキー検定。コロナ禍を受けて、在宅受験などの新たな方式も誕生しています。
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私も成長してます(笑)
ちなみに、私はその後2019年の年明けに、無事に1級を取得いたしました(笑)。1級だけは、100問中20問が記述解答なので、年末年始を使ってかーなーり勉強しました…。マークシートから記述になっただけで、人間の記憶というのは実に曖昧になるから、面白いものです。
ちなみに私の”自分に合った勉強法”は、「昔ながらの単語帳を大量に作って歩きながらでも問題を解く」「過去問を何周もやって得点を記録する」という方法でした。今でもその単語帳は使えますし、自分にとって宝物ですね。ノートも作りますが、実はノートというのは…作っても、それを眺めているだけでは案外頭に入らないものなんですよね〜。「問いに対して答える」というスタイルに徹するのが自分には合っていました。受験日直前には過去問で98点は取れるように準備しました。いや、そこ100点じゃないんかい!
さらにこの後、プロ向けの「ウイスキーコニサー資格認定試験」の「ウイスキープロフェッショナル」の資格も取得し、検定1級と合わせて名刺に載せているので、初対面の方とのとっかかりの話題になったりして、大いに役に立ってくれています。名刺をお渡しした方に、不思議とほぼ毎回「ウイスキー検定1級…」と音読されます(笑)。
私の場合は、単に1級を持っているというだけでなく、「実はこの検定の立ち上げメンバーだったんです(笑)」というところからお話が広がっていくのが、ありがたい恩恵です。
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”知識を得る悦び”、いかがすか
今回は、「ウイスキー検定」誕生のエピソードをお伝えしました。
すでにウイスキー検定資格を持っているという方:ありがとうございます!
これを読んで受けてみようかなと思って下さった方:ぜひチャレンジを!!
「ウイスキー検定」は、毎年2月と9月に実施されています。次回2023年2月実施は、なんともう第16回目!会場試験とオンライン試験が選べます。年末年始にお勉強して、チャレンジしてみませんか??もちろん、一度受かった方も、常に状況は変化し続けているので、何度受けても無駄にはならないはず!(ステマじゃないよ)
大人になってからの勉強は、若い時のそれとは全くモチベーションが違うので、興味や好奇心の分だけ頑張れます!いくつになっても、知識が増えるのは楽しいものですよね。
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snoop-kのヘベレケ日記、今回はこの辺で。
また次のグラスでお会いしましょう。酔い1日を!
(最終公開日:2022年12月26日)