Jynn Sekoi/ダイスケ・ツジひとり合同サイン会配信 抄訳
日本時間で2022年7月21日、『ゴースト・オブ・ツシマ』2周年記念サイン会の第2部がダイスケ・ツジの配信チャンネルにて敢行された。今回のホストはJynn Sekoi(と書いてジン・サカイと読む。著作権上の都合によりゲーム内の境井仁とは別人であるが、本人いわくゲームのモデルになった「本物」のジン・サカイとのこと)、以前も各種キャラのうちの一人としてサイン会に参加したことはあったものの、単独では今回が初。途中でツジ氏にバトンタッチしつつも、盛りだくさんの3時間半となった(なお、だいたい1時間ぐらいすると中身のダイスケ・ツジがだいぶはみ出てくるのは仕様である)。以下、その内容を抄訳する。実際の配信アーカイブはこちら。
◆開始の辞
(オープニング画面の向こうから声だけがする)
もしもし。聞こえておるか? 現在マイクのテスト中だ。マイクがどうかしたのか、と? 音曲を直でマイクに向かって流しておったのだ。何故かと言わば、我こそは境井仁。つまりは「てくのろじー」には不案内ということ。どういう仕組みになっておるのやらようわからんが、多分このボタンを押せばよかろう。いざ参らん!(ぽち)
(画面変わると、背景はゲームのクリア後に出てくる仁の隠れ家とおぼしき室内)
拙宅へよう参った、境井仁だ。聞けばダイスケの奴、自分の写真に俺の名をサインしておったとか。……偽造ぞ? アメリカではどうか知らぬが、対馬では死をもって償う罪ぞ? ゆえにダイスケには死んでもろうた。あのまがいものの役者風情めがッ。よって、サインの残りは俺が片付けてやらねばならん。彼奴めは俺のサインを使っておったのだろ? ならば俺も奴の名前をサインしてやるまでのことよ。造作もないわ。
ここまでのところ、首尾はどうだ? 音曲は聞こえておるか。音量が大きすぎるだとか、テンポが遅すぎるだとかあればチャットで知らせるのだぞ。さて、引き続きサイン会をとり行うわけだが、今回はダイスケが連れてきていたような友の面々がおらぬ。誰も来ておらぬのはだな、我が家を見ればわかる通り、まだ客をもてなせるような状態ではないからだ。
しかしこうして見渡してみるとだ……(背景をぐりぐり動かし中) 家財類はどこへ消えた!? 一体、(確かに室内はもぬけの空。思い出の品の数々もまったく見当たらない。ゲーム内仁が一瞬映り込んで)あっ今のは見んでいい。蒙古どもがやって来て、根こそぎにしていったのでもあろうか。家財の行方を知る者はおらぬか? あれやこれやと置いておいたはずなのだがなぁ。この地へ住処を移したのは、(ここだけ早口に)伯父上とのイザコザのッ……! 直後のことだが──まだ心がしんどいのだ。もう2年になるというのにな、俺が(また早口に)伯父上を倒してからッ……! しかし、2年前はこんなスッキリした様子ではなかったぞ。壱岐へ行っている間に掠奪でもされたか。何者かが盗みを働きおった。何となればここは、間違いなく俺のすみかのはず。なのに家財が一切のうなっておる。(残った蝋燭をアップにしながら) これは蝋燭。何やら宙に浮いておるな、ゴースト・キャンドルか? まあ聞いても栓なきこと。無料の不動産だったのでな、この不況下ではまあ文句も言えん。
(チャットを見て)「出かける前にちゃんと施錠はしたんですか」と? 無論だ。ただし俺が言う「施錠」は、煙玉や毒、他のてつはう類の罠をゴッソリ仕掛けておく、という意味あいになるのだが。まあ実は、家がこんな有様なのもそのてつはう類のせいでな。正直、以前はまだマシな状態であった。俺としてはただ、自宅(ホーム)を守ろうとしただけなのだが。というか我が人生、このパターンが多すぎやせんか。自分を守ろうとして使った毒やらてつはうやらが、のちのち必ず裏目に出て故郷(ホーム)に災いをなすという(笑)。そんなことが続いておるので、セラピストの行善にもかかっておる。鋭意治療を継続中だ。
ではサインにかかるとするか。たった今見始めた者に説明しておくと、ダイスケは俺が亡き者にした。サインは俺、境井仁がしたためて参るとしよう。何、心配無用だ。大船に乗ったつもりでいるがいい。
◆境井仁としてのサイン所感
(購入者のメッセージを読み上げて)「ツジさんどうも!」、奴は殺したがな。「あなたの大ファンです。とくに境井仁が」、俺だッ! ひとえに俺のおかげだなッ! 「次の言葉をサインに書き添えて下さい、『俺はあなたの息子ではない。冥人だ』。」……考えていたのだがな? お主らからはこれまで、「俺はあなたの息子ではない。冥人だ」を書いて欲しいというお願いを沢山されてきたのだが、あれって俺の人生でも指折りのつらい瞬間でな? 人生一のつらさではないにしても。
◆今明かされる名台詞の裏側
(サイン書きつつ) 「誉れは浜で死にました(Honor died on the beach)」……このセリフにはな、Sucker Punchの修正が入って良かったと思うておるのだ。何しろ言った瞬間には、志村殿にむかついておったであろ? それで──オチはもうわかるな。実際の俺はこう口走ったのだ。「誉れは死んだぞこのアマぁあ!(Honor died, biiiiaatch!)」と。それをSucker Punchがリライトしたというわけだ。ま、良い判断だったのではないか、ようわからんが。(サインを書き終えて)……できたぞ、「誉れは浜で死にました」。かたじけない。
(チャットを見て) 「ゲーム中、仁が志村へビッチビンタするのずっと期待してたんだけどなぁ」(笑)。それは何故か採用されなかった第3のエンディングの方だな。俺としてはどのエンディングより趣きを感じたのだが、無言で伯父上の頰にビンタを食らわすというエンディングだ。「生かす」か「殺す」か「ビンタする」か。選択肢さえあれば、お主らの大部分が選ぶのはきっとビンタであろう?
◆境井仁(本人)による原語と日本語の違い解説
(ゆなとの酒盛りシーンでのセリフを日英双方で書き添えた後の一言。日本語版では「時には逃げることが 何にもまさる手立て」だが、原語は「Sometimes...Our only choice is to walk away from everything we know.」で「時には、自分の知るすべてから離れることが唯一の道」という意味)
これもまた、日本語と英語で少し違う気がする例でねぇ。他にもたくさんあるだろうけど、このセリフだと「walk away from everything we know」部分に微妙な違いがあるんだよ。自分のゲームをオタク語りするけど、日本語だと「逃げることが最良の方法(running away is the best way to win)」? みたいになってて。言葉の響きとしてはもっと──英語の「自分の知るすべてから離れる」の方は「自発的に選んでしたこと」になってる一方、日本語の「逃げる」は「それ以外、どうしようもなくなってしたこと」になるんだよね。
(※訳註: 英語の「walk away」は文脈に応じて「立ち去る」「距離を置く」「手を引く」などなど何通りもの訳が可能だが、「まだ選択肢がいくつか残っている、余裕のある状態で自発的に行う何か」という共通点がある。そのためバイリンガル目線だと、walk awayは「予防的避難」、run awayは「緊急避難」ほどに切迫度も異なって見えるのではないだろうか)
◆ゆなとの酒盛りシーン裏話
あとこのシーンのことでもうひとつ。もう2年経ったし、多少の『もしも』話は構わないよね。最終的にボツになったから『もしも』なんだし、ここ見てる人たちはゲームのファンだろうから、話しておくよ。制作裏話的な諸々って話す機会なくて、シェアの機会もなかったし──(Jynn Sekoiスイッチオン) って俺は境井仁なのだから、まさにその現場にいた当事者として真相を明かしておるまでのことだが(笑)。実は父上にまつわる過去話は、ちょくちょく変更されておってな。このシーンはとりわけ興味深く取り組んだのだ。なぜならゆなが──あれ、やっぱ既出ネタのような気もするぞ? 初出だった場合を考えて、一応は話続けるけど。ゆなの母親の話からの流れで面白かったのは、僕が父上のこととは言わぬままに父上の話をするシーンになっていたからなんだよ。意味不明かもだけど。
細かい詳細は省くが、とくにあのシーンでの俺は、元々は父上のことをもっと踏み込んで、具体的に話しておってな。そのあたりをぼやかす表現に変更されて、「時には逃げることが何より勝る手立て」になったという経緯があるのだ。最初は、あまりにも辛い記憶だったために口をつぐんできた父上のことに触れる機会を逸したような気もしたなぁ。後日の追加要素用に、正がどういう人間だったのかはあまり具体的にせず、あえて余白を残しておいたのだろう。……っていう話なんだけど、別に誰も気にしないよね? Sucker Punchの人誰も見てないでしょ?(笑) 見てたとしたって2年経った後だし大丈夫。過去の話で、もう正史(カノン)じゃないから。どってことない話だよ。でもダイスケがあのシーンを演じた当時、「時には逃げることが…」ってセリフを口にした時言外に語ってたのは、間違いなく正のことだったはず。
(「正が殺されるシーンもオリジナルバージョンからはかなり変わってますよね」というコメントを見て) そう、正の絶命シーンもオリジナルとは大分違うんだよ。……鑓川のシーンが僕のお気に入りなのは、普段はあんまり自分の話とかしない仁がほろ酔いになって、ゆな相手にふと内心を明かす瞬間になってるから。と、僕としては思いたいんだけど、仁の言い方ってそのものズバリではないんだよね。たとえば(笑)「俺は幼少のみぎり、目の前で父上に死なれてしまってだなぁ!」とかいう感じではない。
◆仁の頰の傷跡にまつわるボツ設定
(ゆなとの酒盛りシーン裏話の少し後には、こんな追加情報も) Sucker Punchがカットした衝撃情報というか、知られざる秘話というか(笑)──繰り返すけどもう2年経ってるし、別に言っても構わないよね。撮影当時に興味深いなぁと思ったことがひとつある。さっき、父上の話してたじゃない? 仁の頰の傷ね、以前は父上がつけたってことになってたんだよ。僕はそれはそれで興味深いと思ってたけど、最終的には、Sucker Punch側でトゥーマッチはよくないってことになってね。なかなかの衝撃設定だし、あまりそういう方向に掘り下げてもな、ってことになったんじゃないかな。 (コメントを読み上げて)「かなりの爆弾発言」? やっぱ言わなきゃよかったか。まあもう後の祭りだし、2年経ってるから大丈夫。たぶん。で、もしかするとあの傷にはアルコールが絡んでたり、絡んでなかったりしたかもしれなくってね。虐待父ルートがあるにはあったんだよ。で、そこが──ほら、ゆなの母親も乱暴な人ってことになってたでしょ。そこが共通項になって、(酒盛りシーンでは)思わず他人事とは思えなくなる(※)っていう流れになってた。今となっては正史(カノン)にはならなかったわけだから、もう関係ないんだけどさ。
(※訳註: 原文の仁のセリフ「Sometimes...Our only choice is to walk away from everything we know.」は、所有格と主語がYourとyouではなくOurとwe。文脈によって一般論的な「人間」を指す使い方とも、ゆなに対する共感のニュアンスを出す使い方ともとれる言い方で、人称が省略されがちな日本語の性質とうまく噛み合っている)
(思い出したようにJynn Sekoiスイッチオン)とるにたらん話だ、そんな過去はなかった。我が父上は、まあまあアレなだけでまあまあだ!(笑) 暴力を振るわれていたかどうかも、記憶があやふやでな。……まあ役者にとっては、バックストーリーの移り変わりって興味が尽きない部分なんでね。前に匂わそうとしてたのもこのことで、本当は「あのシーンは父親から虐待されてたことを思い返しながら演じてたんですよ」って意味だったの。その設定は変更になったわけだけど、あのイベントシーンの辻褄は合ってるから! 普通に成立してるし。
D: (「そう考えると、志村からのビンタも余計に痛ましくなるなぁ」というコメントに) そうだねー。それとさ、ゲーム冒頭の志村殿とのシーン。ほら、彼が仁の頰の傷に気づくとこがあったでしょ。……あれ、当時もう傷になってたっけ? どうだったかなぁ。やっぱりケガしたばかりの時だったような気も──もうよくわかんないな。でもあの時の志村って、仁の身に起こってることを察してる雰囲気ではあったよね。それでいてその状況に打つ手がないままでいる、みたいな。……だがそれもどうでもいい話! もはや正史でも何でもありゃせん! 誰のことだ父上って!?(笑)
◆中身がはみ出てますよ
俺は境井仁だぞ。あくまでも。って今のこの俺は、気分が解れて話し方がだいぶダイスケ寄りになってきてるだけの境井仁だからな?
◆仁に仁を描く仁
(サイン購入者から「何でもいいので仁におもしろ落書きしてもらえませんか?」というリクエストを受けて、チャットでアイデアを相談中) 「『鉄拳』シリーズのデビル仁に変身させれば?」……「デビル仁」って何? (画像リンクを見て)おー! 『鉄拳』に仁がいたって初めて知った。「デビル仁」がいるの? ……これか! かっこいいじゃーん。よし、なら描けそう。(「デビル仁」の羽根を黙々と描き入れ始める)あ、独特な形の角もあるんだ。おそろしげな爪も。これちょっと長めに……ウルヴァリンの爪つけちゃお。別にいいよね。 どっかにランダル入れたいな……羽根んとこに描いて、と。よし、いい感じ。 これ以上なんか描き加える必要あるかな?(デビル仕様境井仁withおさるのランダルを披露。チャットを見て) 『LOST』にもジンってキャラが出てくるの? (笑)「デビル仁もファザコン持ちだからバッチリ」、そうなんだ。うん、元絵は上半身裸だけど。パンツに炎のデザイン描いてあるから、それも描こ。カッコいい。オーケー、できあがり!
◆検証: 伯父・甥間の決裂は避けられたのか
(「俺はあなたの息子ではない。冥人だ」の添え書きリクエストが多かったことから、「『俺は冥人ではない。あなたの息子だ』っていうリクエストがあったら面白そう」というコメントがあり) そんなリクエストがあったら、ご本人にここへ来てもらった上で、本当にそれでいいのか確認するよねぇ。まずは間違いなんじゃ? って思うからさ。本当にいいなら、たとえばこんな風に言ってもらわないと。「違うんですー、本当にゲーム内の一言じゃなく、こう言って欲しかったんです。『俺は冥人ではない。あなたの息子だ。パパ養って!』」って。本人確認ないと無理だね。
(という話を受けて、また別のコメントが)「でもあのセリフは『俺はあなたの息子だ。それでいて冥人だ』だったらもっと良かったのにね」、うわぁーそれ……(心打たれた様子)、それさ、21世紀が舞台だったら最高だったろうねぇ。すごいジーンとくる。でも実際には字面ほど感動的でもなくなりそう(笑)。だって僕が「俺はあなたの息子だ。それでいて冥人だ」って言ったら続きはこうなるもん。「なぜ私を理解してくれないんですかパパ。私は息子と冥人の両方なのに。どうしてそのままの私を受け入れられぬのか。私は誉れがないにも程があるやり口で毒を盛り、人を殺めるのが好きなのですッ。パパには分かるわけない。思春期特有の拗らせとは違うの。私はこういう人間なの(※ネットミームです)、毒使いの人殺しなのッ(笑)。敵の飲み物に毒仕込んで、もがき苦しむの様を見届けて、まあちょっと罪悪感あったけどそれが私なんだからしょうがないでしょッ」……まあ本当のことではあるよね。僕の場合そういう方向性もありうるからさ。
◆サインは残り20枚
これで残りはあと20枚になった。頃合いなんで、ちょっと休憩入れるぞ。ダイスケ殺したけど生き返らせてくる。そらあの、牢人の魔法を使ってな。仁としてずっとこの面頬マスクつけてるのもなんか飽きてきたし、ダイスケを蘇生してやろう。まあ俺がダイスケを殺しても誰も怒らなかったことだし、ウィンウィンというものであろ。では5分休憩を入れて、すぐ戻るぞ。今日中に全員分のサインを終えるので少々待たれよ。また後ほど。
◆地獄を見てきたダイスケ・ツジ
(あの世から戻ってきたツジ氏は、普段の自宅風景の中に、Tシャツもお色直ししての登場)はい。リアルの僕んちへようこそ、おかえりなさい。どうもー。はぁ。リーが置いてったビールで一杯やることにしよ。置いてったのがうっかりなのかわざとなのかよくわかんないけど、とにかく呑みます。呑まないとやってらんないよ。これゲットしたシャツ。あ、あとまず、仁はお疲れさま。サインをだいたいやってってくれて──もう全部書き終わってる頃かと思ってたんだけどねぇ。書き残しがあって正直、ちょっとガッカリ。そこで僕生き返らされて、ってその前に仁に殺されてたわけだけど。もうね、酷い目にあってたよ? 大禍を想像してもらえればわかると思うけど。つまり壱与の国に行ってたわけなんだけどね。初心者集団との大禍やらされて。どんなか想像できる人はわかるよね、ああいう状況に置かれてました。
仁に殺されて、大禍やって、死にまくって、それからえー、壱与を撃破して黄泉がえってきたとこ。音楽かけてビールいきます。だって水曜だから! って何なんだろ。まあ今日は水曜日。あと今日の僕、頑張ってるから。ここ何日かはぶっちゃけ怠けきってたんだけど、今朝は朝6時半起きして、歩いてジムまで行ってワークアウトした。で今ビールっていうね。こう……(ビール片手に、両手でバランスをとるようなジェスチャーをしながら)……何でもいいや! 構うもんか、人生楽しむ!!(ビールを一口) これから購入してくれた皆さん全員のサインに取り掛かります。
(コメントを見て)「初心者との大禍は面倒くさいけど、相手がちゃんと協力しあえる人たちであれば、それはそれで楽しいよ」(笑)。そうね、うん。クリアしたかったらコミュニケーションとらないといけないから。大禍中はちゃんと、言葉を使って。やっぱり説明しなきゃなんないからさ、どういうルールになってるのか。でもまあその一方で、自分が初めて大禍やった時のこと考えると、手順を説明してくれる人が必ず1人はいたよね。ちょっとネタバレだなとは思ったけど、ネタバレしてもらえなきゃ何がどうなってるやらわからないまんま、苦しんでたはずだから(笑)。
◆新キャラは「志村殿の実の息子役で出演するはずだった俳優」?
(公式キャストによる『ツシマ』非公式二次創作という意味ではJynn Sekoiの他、メインキャストをあらかた巻き込んだお誕生日配信を企画した実績もあるツジ氏だが、最近はまた別に新キャラのアイデアを練っていたらしい)
最近はキャラや即興での配信を続けてたから、先週もキャラ配信しようとはしてたんだよね。アイデアとしてはこう。キャラ名は明かさないけど──バラしたくないからバラさないけど(笑)、ニコラス・ケイジがモデル。言うなれば僕なりの解釈のニコラス・ケイジね。ようはそのキャラも俳優なんだけど、『ゴースト・オブ・ツシマ』から出演シーンがカットされたことにしようっていう(笑)。かつ、ニコラス・ケイジの兄弟設定。『ツシマ』ではめちゃくちゃ出番多かったのに、全部カットになったっていうキャラです。前提として志村殿の実の息子役で、名前はジンゾー(笑)。続柄的には仁のイトコに当たるのかな。視聴者のみんなからの提案集めて、イベントシーンをやってみようかなと思ってた。でも僕だけでやるって難しいんだろうなー……。まあ、でかい独りごと言ってみてるだけだけど。それでも2周年祝いの一環でやる可能性はある(笑)。やらない可能性もあるけどね、僕側にかかる負荷がすごいので。だから先週は「んーまあ『奇譚』やっとくかぁ、みんなに喜んでもらえるしな」って『奇譚』配信にしたんだよ。でももしそのキャラやってたら、僕的には面白かっただろうなぁ。僕の配信、ほぼそれなんで。自分にとっては面白い配信。ただもちろん、下手くそなニコラス・ケイジ物真似になってたんじゃない? 最近『アダプテーション』見たけどすごい良かったよ。ニコラス、本当にいい俳優。
◆PlayStation Tシャツの出所
言い忘れてだけどこのシャツね、PlayStationから貰ったやつ。ファンの人は知ってるだろうけど──いや、あれPlayStation社限定イベントだったんだった。だからPlayStation社にお勤めの人以外は見てないかも。あの、僕が出たのって社内zoomディスカッションみたいなやつで──AAPIヘリテージ・マンスだから、この5月に開催されてたのね。だからこれも(シャツの胸元には、PSコントローラーのボタンが日本含むアジアの伝統柄模様でプリントされている)、PSのボタンの形したAAPIデザインなんだろうと思うんだけど。かっこいいよね。
◆「ハイク」か「短歌」か
(おそらく日本の方ではなさげな購入者より、「ゲーム中の好きなハイクを日本語で書いていただけませんか」というリクエストを受けて) まず第一に、好きなハイクを覚えてないんだよなぁ(笑)。セリフとしては山ほど収録したけど、種類も多かったし。1行ごとに3通りくらいのバリエーションもある。だからどれが好きかはわからないんですよ。自分でゲームをプレイしてて「あっこれいいじゃん」と思うことはあっても、覚えないしなー。(「もう適当に作っちゃえば? わかりゃしないって」というコメントに) そうなるよね。でもダメなんだよ、ちゃんとリサーチしといたの。なんでかというと、ここからが第二の問題ね。依頼者は、好きなハイクを「日本語で」書いて欲しいって言ってるんだけど、日本語版はハイクじゃないんだよ。(日本語で)何ていうんだっけか、短歌? 和歌? かな。(英語に戻り)音数も5・7・7じゃなく、5・7・5・7・7。で、どういう理由でだったのかよくわからないんだけど、Sucker Punchが「日本のハイクをゲーム内に取り入れようと思うんだけど」って相談した時、PlayStationの日本の人たちは「日本人は俳句のことを真剣にとらえているので、いかがなものだろう」っていう反応だったんだって。実際どういう事情だったのかはわからない。でも何かで「俳句には手出しをしてはいけません。5・7・5・7・7にしないと」ってことになったみたい。短歌と俳句ってそれぞれ何を表してるのかな。1274年当時だと、短歌の5・7・5・7・7の方がもっと古典的だったとか? 理由は不明。でもどっちがより日本の歴史に詳しいかって言ったら、そりゃ向こうだからね。僕らも質問はしません。
(※訳註: 鎌倉時代にはまだ俳句の起源のひとつである連歌しかなく、「俳句」という用語自体も誕生したのは明治期以降のこと。日本では一般常識レベルの話なので、鎌倉時代に「ハイク」をブッ込まれていたらさすがに反発が強かったのではないだろうか。原語版が「ハイク」、日本語版が「短歌」に落ち着くまでの経緯は、日本のローカライズ・チームのインタビュー記事でも紹介されている。ちなみに筆者が個人的にちょっと面白いと思ったのは、壱岐コラボ装備の謎かけ歌に関しては原語版でも「tanka」という用語が使われていたこと)
◆竜三に対する仁の態度
(仁が竜三に対して言ったセリフ「俺の仇を討って兵糧を奪えばいい」の添え書きリクエストが。購入者はツジ氏のセリフの言い方が面白かったから依頼した、とのことである[※]。珍しいチョイスを面白がりながら作業にかかって) 確かに仁って、竜三相手だとかなり肩の力が抜けてるんだよね。ちょっともの悲しさを感じるポイントでもある。少なくともゲームを通じて、仁が竜三みたいな気の置けない関係になった相手って、他のキャラクターにはいないでしょ。ゆなとはそんな感じがしなくもないけど、ちょっと違うしさ。まあ仁と竜三、幼馴染みだもんなー。典雄の場合、ヘンなことに僕とアールも友達で、仁と典雄の間にも友情はあるんだけど、典雄ってお坊さんだから、かなりうやうやしい友情なんだよね(笑)。だからうん、竜三に対してそうだったみたいな友達付き合いをする相手って、仁にはいないかな。堅二もちょっとだけそういう雰囲気あるけど、他の何より弟っぽさが強いじゃない。(コメントを読んで)「竜三は他のみんなみたいに仁を偶像視してないしね」、そうなんだよ。そこはね、すごくいい目の付け所。
(※訳註: 仁と竜三が蒙古の拠点襲撃の手筈を相談する、このシーン。日本語版だと仁が粛々と「俺の仇を討って兵糧を奪えばいい」と言ったところへ、竜三が「そりゃ名案だ」といなすやりとりになっているが、原語版の仁は重々しい口調から一変、しれっと「その時はその時、俺の仇討ちをして飯を奪えばよかろ?」と言い放っており、竜三の方が「見つかったら殺されるぞ」という懸念をいなされる側になっている。対する竜三も「冗談になってねぇぞ[That's not funny. ]」とツッコミ口調で返しており、戦闘前の緊張感が緩むかけあいになっているため、英語話者の配信者やプレイヤーにはここでクスッときた向きも多いようだ)
◆終幕の辞
(合同サイン会も合わせ、総計105枚のサインをすべて書き終えて) これで全部か! 立ち寄ってくれた皆さん、配信見てくれた皆さん、僕と『ゴースト・オブ・ツシマ』キャストのサインを購入してくれた皆さん、誠にありがとうございました! 最高に楽しい時間でした。
この2年っていうもの、僕は人生が一変して、人からサインを求められたりするようにもなって、ありえないような時間を過ごさせてもらいました。まだおかしな感じ。(背後の仁スタチューを指して)その上なんか、こんなカッコいい自分のスタチューまで出たりして。こういうの、一生慣れないんだろうな。
それはともかく、本当にありがとう。色々と大変な世の中だけど、頑張って踏ん張ろう。世間や物事が胸糞悪いことばっかりであっても、お互い助けあい、元気づけあって、とくにビデオゲームでの暇つぶしを協力しあっていきましょう。これからもゲームプレイを続けていきましょうね。それじゃまた。あ、『Stray』はゲットしたので、後日配信でやるつもりです。でもたぶんイゴールでプレイするかな。イゴールがやるんだからおそらく、猫の生態についてあれこれ物申すんじゃないかと思います。よくわかんないけど。ご新規さんに説明すると、イゴールって猫のことね。はい、Sucker Punchありがとうビンタ! あいてー!(おさるのランダルビンタ炸裂) よし。みんなまたね。バーイ!