ダイスケ・ツジ配信後のおまけまとめ「Igor and I(イゴールとぼく)」
日本標準時で2020年9月2日──『Ghost of Tsushima』主演俳優ダイスケ・ツジ氏が、ちょっとしたパフォーマンスを行っている配信後おまけコーナーに、「彼」は突如として姿を現した。
I: ンニャーー。
T: あ。やあイゴール。ごめん、起こしちゃった?
I: ダイジョウブ。
T: えー……なんか欲しかったの?
I: ンニャー、ダイジョウブ。
T: おやつでも欲しかった?
I: ダイジョウブ。
T: なんでその……こっちをジロジロ見てんの?
I: ダイジョウブ。
T: いやいや、大丈夫じゃないでしょ。そこに座って見られてると、なんか気味悪いんだけど。
I: ダイジョウブ。
T: 大丈夫じゃないんだってば。気味悪いの。それに質問に答えてもいないよな、なんでジロジロ見てんの?
I: ダイジョウブ。
T: あっそ。配信も終わったから僕もう行くよ。なんかほんと、気分的に──大丈夫って言うのやめな。
I: ダイジョウブ。ダイジョウブ。ダイジョウブ。
T: え、ちょっ……何してんの、イゴール。イゴール、やめろって──あ、はいはい。今度は僕の頭の上に座るわけね。椅子から動けなくなったじゃんか。
I: オマエダイジョウブ。オレトズット、ココニイルゥウ。
何やらいつになく不気味な雰囲気にざわつく視聴者たち。この時点で名前だけしか判明していないイゴールの詳細は、まったくの不明。「イゴールのことは誰にも話さないって言ってたじゃないか」というアール・キムのコメントも何を意味するのか、それもまったくの謎だ。しかも1週間後に再登場した際には、かなり口が達者になっていた。
T: さあってと、セルフテープの準備しなきゃ……って、また会ったね。イゴール。
I: ヤア。
T: なんか言いたいことでもあるわけ?
I: イイタイコトハ、チョットナンカ、マトモニヒョウカサレテナイキガスルッテコトカナァ。オレガコウケンシテルコトナンカ、ドウダッテイイミタイナ。
T: え……貢献っていうと、つまりなに?
I: ヨクモソンナ! ヤチンダッテオレガハラッテルダロ。
T: いいや、違うよ。
I: オマエニエサ、トッテキテヤッテル。
T: え、なんのこと? エサを狩ってきてる?
I: オマエニカンショウモシナイデアゲテル。ゲームデアソンデテモ、モンクイワナイ。
T: それはまあ、そうかもしれないけど。じゃあ一応ありがとう、なのかな? 僕に干渉しないでくれて。
I: コンナニツクシテルノニ、オマエ、オレヲペットアツカイシテル。
T: イゴール。君は猫だろ。
I: ネコダカラッテ、オマエノペットトハカギラナイダロ、ダイス! OK? ネコダッテニンゲンナンダゾ!
T: OK、わかった、わかったよ。君を尊重するから。猫として、っていうか人? 猫人間として。猫の人として、君のことを尊重します。
I: イイネ、ワカッテクレテアリガトウ。ジャア、オナカナデナデシテ。
T: えー……。
I: オナカ、ナデナデ、シテ(ツジ氏が言う通りにしたのか、盛大に喉を鳴らすイゴール)
「イゴール=猫」とは判明したものの、それから1か月以上、彼の消息はふっつりと途絶える。その間行われた配信中、視聴者とのやりとりで話題にのぼることはあっても、「イゴールのことはここでは話さない」となぜか頑なに口を閉ざし続けるツジ氏。イゴールは本当に人語を操る猫なのか? あるいはツジ氏の脳内で分離した別人格なのか? 謎が深まるばかりだったハロウィンシーズンの10月22日になって、衝撃の展開が。
T: 音楽流したままで、マイクはオフにしてっと。ふう、いい配信だったよな……うお! 驚かすなよ、イゴール。ここで何してんの? 随分会ってなかったのに。
I: オマエ、オレノコト、サガシテモイナカッタ。
T: だって猫だからなぁ。外にでも出かけてるのかと思ってたんだよ。外猫とかなのかなって。
I: ソレデモ、オレノコト、サガシテモイナカッタナ。
T: いやまあ、なんだろ。前回の顛末があんな感じだったから、君を尊重して干渉しなかったっていうか──あの、いま新しいフォロワーさんがたくさんいてさ。彼らには何の話かわからないから、そもそも君は出てきちゃいけないんじゃないかな?
I: ソトニナンカイッテナイ。
T: え?
I: ソトニナンカ、イチドダッテイッテナイ。
T: じゃあどこにいたの。
I: オレ、オマエトイッショニ、コノアパートノナカニイタ。ズーット、イタ。
T: そんなわけないじゃないか。
I: オマエガネテタトキモ、イツモイッショ。アサゴハンタベテタトキモ、イツモイッショ。ハイシンシテタトキモ、マイカイ、イツモイッショニイタヨ。
T: 何を……言ってるんだよ?
I: メノマエノ、ナニモウツッテナイスクリーンヲ、ミテゴラン。ナニガミエル?
T: 自分の姿が写ってるけど。
I: ダレガ、ミエル?
T: 見えるのは自分だよ、ダイスケだよ。何言ってんの?
I: オレハ、オレガミエル。イゴールガミエル。
T: でも僕にはダイスケが見える。
I: オレニハ、イゴールガミエル。
T: でも僕にはダイスケが見える。
I: オレニハ、イゴールガミエル。
T: でも僕にはダイスケが見える、そして、イゴールが見える……。僕は、イゴールだ……。
I: オレハ、ダイスケダ。
T: 僕はイゴール。
I: オレハ、ダイスケ。
T: オレハ、イゴール……トイウコトハ、オレハ、ネコダ……。
とうとうイゴールに乗っ取られてしまったツジ氏。筆者は季節柄に合わせたハロウィンらしい演出とばかり思っていたのだが、イゴールの物語はそれだけに留まらなかった。日本時間で2020年10月24日、ツジ氏の古巣でもあるレパートリー劇場「Oregon Shakespeare Festival」による「Dare To Dream」ガラが行われた日。記念配信の冒頭映像が、イゴールと化したツジ氏のクラウンパフォーマンス仕立てになっていたのである。
中身が猫になってしまった役者が、ガラの開催宣言の原稿を見てヒトとしての自分を思い出す、という筋なわけだが、ツジ氏の解説によるとこれはもともとプリショーとしてOSFのガラ本配信に使用される予定の映像だったそうだ。しかし、米国西海岸を襲った大規模山火事の影響で劇団員やスタッフにも被害が及び、ガラの開催日は当初予定の9月下旬から10月下旬に延期。寄付集めの目的も被災者救済の色合いが濃くなったためかあえなくお蔵入りとなり、かわりに自分のTwitchアカウントで配信することにしたのだという。イゴール初登場が9月初めだったのも、おそらくプリショーの前フリとして機能させる意図があったのだろうが、開催日が延びたために再々登場まで間が空いた、という背景があったものと思われる。これまで配信後のおまけコーナーといえば「止まらないオナラ(ブーブークッション使用)に苦しむパフォーマンス」、「唯一の真の神ココナッツを讃える歌をフルコーラス歌い切る」といった突発ネタ中心だったことから、そんな周到な仕込みだとは思ってもみなかった。また、ガラ開催前のあるインタビューでご本人が「プリショーはガラ開催を楽しみに待っているクラウンのパフォーマンスを行う予定」と語っていたのだが、想像とは異なる内容だったことも、きれいに意表をつかれる要因になった気がする。
パンデミック下で誰もが完全室内飼いの猫のように生きることを強いられる中、舞台芸術の祝祭であるガラが、自分が人間であることを思い出させてくれる、というような寓意も多少は込められていたのだろうか? いずれにせよ、ツジ氏のクラウンパフォーマンスは初見だったため大変楽しく拝見した。記念としてここに経緯をまとめる次第である……とはいえ、忘れた頃にまたイゴールが戻ってくる可能性にも期待したいものだ。
※追記: 2021年2月、配信チャンネルのコミュニティチャレンジ達成特典として戻ってきました