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キャストQ&A: 石川役フランソワ・チャウ編 抄訳


日本時間で2021年1月24日、ダイスケ・ツジとアール・キムの合同配信において、『Ghost of Tsushima』石川役のフランソワ・チャウへのインタビューが行われました。80年代から舞台や映像分野で活躍してきたベテラン俳優であり、ツジ氏らにとっては後進のアジア系俳優のために道を拓いてきたヒーローのひとりでもあるというフランソワさん。出演作は『ティーンエイジ・ニンジャ・タートルズ 2』『LOST』『エクスパンス-巨獣めざめる-』『The Tick』など多数、単発仕事も有名作品ばかりで、日本の『Tsushima』ファンも実はかなりの高確率で彼の姿を見かけていたものと思われます(参照: IMDb)。『Tsushima』発売後、オンライン上のイベントでツジ氏と同席するのは昨年9月の「East West Wednesday」ボイスキャストパネル以来。今回はメンツが3人とあって、フランソワさん個人の来歴やアジア系俳優としての立場から見たハリウッド、また米国についてなど、かなり突っ込んだ話も。以下、印象に残った部分を(話題をまとめる都合上再構成しつつ)抄訳します。動画のアーカイブはこちら





◆石川先生ことフランソワ登場


フランソワ・チャウ、以下F: 今日はお招きありがとう。

ダイスケ・ツジ、以下D: 来ていただいて光栄です。

F: 言うこととか、やることの指示は任せたよ。私はただこうやってるから。(操り人形のジェスチャー)

アール・キム、以下E: (笑)さて今日は知っての通り、とっつきづらい石川先生を演じた、フランソワ・チャウが来てくれてます。他の役ではシュレッダー(※訳注: 『ティーンエイジ・ミュータント・タートルズ』実写版2作目でフランソワが演じた、シリーズのヴィラン。フルフェイスの兜を被っているため、露出しているのはほぼ目元だけである)も演じたわけだけど、思いつくかぎりの傑作SFやオタク界隈の人気作を総なめにしてきたような人で──

F: (シュレッダーのキャラデザに応じ、両手で枠を作って無言で目元にあてがう)

E: うわ、今の見た!? みんな、今シュレッダーが見えた!?

D: (目元を強調する仕草を真似て)こうするだけで仁みたい。元祖・仁ですね。

F: (おもむろに画面外から取り出したシュレッダーのフィギュアを披露中)

D: アクションフィギュアがあるんだ!

E: やばいなー。この中でフィギュアになってないの僕だけだ(笑)

F: (フィギュアのムキムキの胸元を指差しつつ) 実際の私の体型も、これとそっくりおんなじでーす。

E: 確かに! 大理石から切り出したかのようなキレ具合(笑)

D: でも、実際に鍛えてるじゃないですか。以前、ってその時の写真は何枚かインスタにあげたんですが、すてきなお宅にお邪魔させてもらいましたよね。(※訳注: 当時の写真と動画はこちら。フランソワは司会2人と同様、LA在住である)

F: ありがとう。あれはロックダウンされてから2ヶ月くらい経った頃だったかな。当時はまだ感染防止策も手探りで、手裏剣を的に投げたり、自分の弓矢をダイスに見せたりしてたんだった。私が石川先生(※訳注: フランソワは一貫して「センセイ・イシカワ」ではなく「イシカワセンセイ」という語順を使っていた)を演じたことを考えると、いい偶然の一致かも。アーチェリーはもう何年も習ってるんだよ。なかなかのもんでしょ(笑)

にもかかわらず、モーションキャプチャーで弓の腕前を活かすことができなかったいきさつは、「East West Wednesdays」キャストパネルでも紹介された通り。 ただしフェイシャルキャプチャーとボイスオーバーのみの担当であっても「気持ちとしては自分が跳ね回ってるみたいだから、楽しいよ」とのことだった。



◆90年代ゲームのイベントシーン撮影

モーキャプ撮影こそ未経験のフランソワだが、実写と3Dアニメーションを掛け合わせた先駆的な作品『ウイング・コマンダー3』(1994年発売)に出演しており、イベントシーン撮影の最初期の形がどんなものだったか、貴重な証言も飛び出した。

F: 『ウイング・コマンダー』の前にも何か別の作品に出てたんだよ。まあ初期も初期の話なんだけども。当時はグリーンスクリーンでの撮影すらなくて、立ち位置に連れて行かれてはセリフを言い、今度はこっちを向いてセリフ、それからまたあっちを向いてセリフという具合で、それがごく初めの頃の話。で、『ウイング・コマンダー』が出たのは、94年……? だったかな?

E: ええ。あの作品が出たとき、みんな「うわ! ゲームの中にリアルの人間がいる!」ってぶっ飛んでましたよ。

F: 実際リアルな人間がやってたからねぇ(笑)

E: ですよね!(笑)

F: CGのキャラクターと違うから。ゲームの合間合間のシーン、セリフのあるシーンなんかは基本的に全部撮影していて、映画の撮影と大差なかった。本物のセットが組まれていて、他の色んなものも全部本物、そういう現場で撮影してたよ。収録したシーンをつなぎ合わせたら、一本の映画に仕上がるレベル。しかも出演陣が豪華だったしねぇ。マーク・ハミルとか。

E: マーク・ハミル! ですね、あのシリーズに関しては正真正銘、あーあの人ね、この人もか、みんな出てる! みたいな感じでしたから。

F: まったくとんでもない顔ぶれで。マークに、あと……物覚えが悪いな、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のビフも。そういう人たちが目の前に現れるもんだから、なんだこりゃ、という感じで──マルコム・マクダウェルもいたし!

E: 「舞台そして銀幕のスター、英国の至宝のマルコム・マクダウェル? あの超バイオレンス俳優(※訳注:おそらく『時計仕掛けのオレンジ』を念頭においての発言)のマルコムが」って?(笑)

F: そうそう(笑)

D: ということは、その人たちと一緒に演技ができたってことですか?

F: そうそう、さっき言ったように映画同様の撮影だったから。

D: そうか、それはすごいなあ。

実際のイベントシーンを見てみても、基本的にセットを組まず、共演者が勢揃いすることの方が少ない現在のゲーム撮影現場とは、まさに大違いだったことがよくわかる。


◆ゲームをやる方の経験は?

『ウイング・コマンダー3』発売後に自宅PCのキーボードでプレイしてみたものの、最初のミッションすらクリアできなかった、と笑うフランソワに対して、ツジ氏から質問が。

D: これまでの人生でゲーマーだった時期はありました?

F: いや。初めてプレイしたゲームも……確か最初の『ゼルダ』だった。

D: 第1作目のですか?

F: 第1作で、ニンテンドーのソフトだったと思うなぁ。ニンテンドーも色んな種類があるらしいけども。

E: ええ、最初のオールドスクールな、灰色の箱みたいなやつですかね?

F: そうそう、それだ。『ゼルダ』はプレイしてみて、うわ、面白いな、と思ったよねぇ。色んなところへ行って色んなことがやれるぞと。楽しかったよ、妻と一緒に朝4時近くまで遊んだりもして。

それから数十年の間をあけて、実は現在『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』をプレイ中であるという。

F: そう。苦労しつつ進めてるとこだよ、娘がゲームやってない時にね(笑)。そんな時はあまりないので娘の方がずっと先を行ってて、私はまだ馬をつかまえようとしてるところ(笑)。でも『ブレス オブ ザ ワイルド』は素晴らしいゲームだよ。ほんの数年前のゲームと比べてもたまげる出来で。

そしてもうひとつ、過去にプレイしたゲームはというと、

F: これも何年も前の話なんだけども、PlayStationのゲームでサムライがテーマの、なんて言ったか……『鬼武者』だ!

E: あああ、あれは名作ですよ!(拍手)

F: あれが初めてじゃなかったかな? ゲームの中で実在の俳優の顔が──

E: 日本の俳優の! 彼の役は……何だったかな。そうですね、実際の人の顔がキャラクターに使われるようになる、その最初期の一作でした。「どうやってこんなことが!? テクノロジーすごい!」と評判で。

F: そうだ、タケシ・カネシロ! そういう名前だった。(※訳者注: 金城武は日本と台湾の双方でも活躍する俳優。近年では香港や中国での出演作が多い) 彼の顔は色んな作品で見かけるけども──『LOVERS』(英題『House of Flying Daggers』)は見た? 「あっあの人だ!」という反応になるよね。

ちなみに『Tsushima』は未プレイとのことなのだが、関連して思い出したことがあったようだ。

F: ちょっとね、SONY、もしくはPlayStationの方が今聞いてたら言いたいんだけども、私まだPS5を買おうとしても買えてませんでね。

E: フランソワがPS5をご所望だ(笑)

D: (笑)

PlayStation公式通販サイトで何度購入を試みてもうまくいかず、一度「オンライン購入列の待ち時間:あと10分」という表示が出るところまでは行ったそうなのだが、「(10分後に)半秒とたたずクリックしたのに」売り切れ画面が表示されてしまったという。SONYはただちに一台送ってあげて欲しい。



◆フランソワの生い立ち

E: フランソワ、あなたはカンボジア系なんですよね?

F: です。ベトナムとのハーフなんだよ。

E: じゃあカンボジア=ベトナム系と。ただ生まれはカンボジアなんですか?

F: うん、首都のプノンペン生まれでね。それで、サイゴン(現ホー・チ・ミン)に移ったのが4、5歳頃。サイゴンには確か7歳くらいまで住んで、それから私と母でベトナムを離れたんだ。おそらく1967年かその年末くらいのことだったと思う。もう遠い昔のことだけども、ベトナム戦争のごたごたで。1968年初頭にテト攻勢(※訳注: ベトナムにおける旧正月の祝日「テト」に、北ベトナム人民軍が仕掛けた大規模奇襲作戦。軍事的には北越側の敗北に終わったが、在サイゴンの米国大使館が一時占拠されるなど、政治的には米国・南越側の形成不利を印象づけた)があって──

E: すごいな。情勢が一気に緊迫化したんですよね。

F: そう、アメリカも「こりゃやべえ、どうなってるんだ」というムードに変わってね。だからその直前に国を出られた我々はラッキーだった。それからフランスへ行って、そこで一年半くらい過ごしたかな。

E: (フランス語で) フランス語は話されるんですか?

F: (同じくフランス語で)フランス語には不自由ないですよ。

E: あっダメだ。僕、フランス語からっきしなんです(笑)。食事の注文と、道に迷わない程度に標識がわかるのと、ときどき「サヴァー」とか言うくらいまでがせいぜいで。

F: フランス語は私の第一言語でね。理由は何であれ、カンボジアでもフランス語で話していたから(※訳注: カンボジア、ベトナム、ラオスは旧フランス領だったため、現在でも年配世代のフランス語話者は珍しくない)。子供の頃はベトナムでもフランス語を使っていたんだ。でもフランスに渡ってからは……生涯拭えぬ恥とでも言うべきか、ベトナム語をすっかり忘れてしまってねえ。今ではまったく話せない。アメリカに来た時点で話せる言葉はフランス語だけで、英語はすぐに覚えたんだけども。今は誰かのベトナム語が耳に入ると、あ、ベトナム語だ、なのに何を言ってるのかわからない! という感じでね。

E: わかります! この言葉、わかんないんだけどわかるー! ってなるやつですよね(笑)

F: そう、わかるんだけどなー! という(笑)

E: 僕もダイスもそうですが、僕らは全員「第三文化の子供」(※訳注:Third culture kid、人格形成に影響ある時期や思春期を、母国以外の文化圏で長年過ごした子供のこと)で、両親どちらの出身国とも違う国で育って、生き抜いてきてるわけで──僕は素晴らしいと思ってますけどね、第三文化の子供最高! でもカンボジアとベトナムのハーフで、アメリカに来た時の使用言語がフランス語だけだったというあなたの文化的な立ち位置も最高ですよね。なんかもう、たまらなくいい(笑)

F: (笑)そうだねぇ、最高だよ。みんな私がアジア系だからアジアの言語を話すもんだと思ってて、そういう人から「ネイティブの言葉で言ってみてよ!」なんて言われたりすると──

E: 返すのがフランス語なんだ(笑)

F: すると「えっ何、何のつもり?」みたいな反応になるんでね(笑)

E: 「私のネイティブ言語コレなんで」(笑) 。でも、驚かせとくのはいいことですよね。



◆『LOST』の機密保持体制

主に映像分野で活躍するフランソワ・チャウのもっともよく知られている出演作といえば、やはり『LOST』(※訳注: 米ABCで2004~2010年まで放映された人気サバイバルドラマ)のピエール・チャン博士役だろう。徹底した秘密主義の下で行われた撮影の様子について、フランソワはこう振り返る。

F: 今、あらゆる仕事で機密保持契約書(NDA)へのサインが必要になったのは、『LOST』がきっかけだったんじゃないのかねえ。みんなが物語の秘密を解き明かそうとしたり、ほんの少しでも情報を得ようと躍起になるタイプのドラマとしては、当時の走りだったと思う。だからやはり、セキュリティは厳格だったかな。私に関して言っても、脚本も全部はもらわなかったので知っておきたいことも全部はわからなかったしね。撮影前日にホテルの部屋にいると、ドアの下から翌日のちょっとしたシーンの脚本を差し入れられるといった具合で。

D: ええー!

F: なのでそれを覚えて、翌日現場に行ってたり。あとは時々、今でもやっているかもしれないけど、オーディションも『LOST』だということは伏せて偽のプロジェクト名で、演じるシーンも偽物を使ったりとか。コールシート(※訳注: 出演者、スタッフ、ロケ地などが記載された撮影予定表のこと)にすらへんてこな名前が使われていることがあったよ(笑)。

E: 偽名ですか。「コールシートの一番上はコーネリアス・ハッフルフィンガーです」みたいな(笑)

F: そう(笑)。他のキャストメンバーの何人かとも話したんだけども、みんなだいたい似たようなものだったらしい。自分の役の部分的な情報しかもらえていないようだった。

D: それは、僕だったらストレスで参っちゃいそうだなあ。

F: そうなんだよ! 全体像が見えないもんだからね。

(『LOST』ネタバレが出ていたので中略。困惑しつつも、かつ意外な展開があっても演技力でカバーするしかなかったとのこと)

D: 面白いですよね。最初の何シーズンかでのあなたは「このキャラクターは全ての答えを知ってるに違いない。何でも知ってるんだ、島の秘密もきっとわかってるはず」と視聴者に思わせるキャラクターのひとりだったのに。俳優の本音としては「ただセリフ言ってるだけなんで〜」だし(笑)

F: そうそう。番組が人気になったりしてからは、食料品店なんかで私に気づいた人から「やあどうも! 5話目で誰々が何した時、あなたが言ってたことはどういう意味だったんですか?」と訊ねられて「ああ……うー……わからないですね……」と(笑)

D: (笑)

E: 「今ブロッコリー買おうとしてるとこなんですけど!?」(笑)

F: 「それはあくまで謎なので」

E: それか、その人をじっと見つめたまま「知らない方がいい……」って後じさってくとかね(笑)

D: (笑)

別インタビューによると、当時「プライベートで飛行機に乗ったら、搭乗中私に気づいた女性から『あっ。このフライト、乗らない方がよかったりします?』と言われて、『いやいや、大丈夫ですから』と返した」こともあったようである。



◆ドラマ、舞台でのお気に入りの役

数え切れないほどの映画、ドラマに出演してきた中でフランソワのお気に入りの役は、『The Tick』(※訳注:Amazon Prime で2016年より2シーズン制作された、スーパーヒーローものコメディドラマ)のウォルターだという。主人公アーサーのノホホンとした継父という役所なのだが、フランソワにとっては特別な思い入れがあるようだ。

F: ウォルターはこれまでで一番のお気に入りだよ。今後どういう役が来るのかはわからないけども、今のところは。なぜかというと彼はちょっとばかり不器用な、人のいい男だから。ああ、こういう奴いるな、という感じのね。これまで、悪役なら仕事の90%を占める割合でたくさん演じてきたけれど──役者業を始めた若い頃なんか、単発仕事は革ジャンを着た「ギャングのメンバー・その2」みたいな役ばかりだった。そこから段々とステップアップして、ついには麻薬王のような「アルマーニのスーツ姿の男」役にのし上がったけども(笑)。そういう役を山ほどやってきた後に、自分なりに食い込んでいけるニッチを見つけられたのは、本当に素晴らしいことだと思う。悪役ばかりこなしてきたということが、私の何を意味するのかは置いといて(笑)

ちなみに、同じAmazon Primeでの出演作でゴリゴリの悪役ジュール=ピエール・マウを演じた『エクスパンス-巨獣めざめる-』は『The Tick』と同時期の撮影だったそうだ。『エクスパンス』の撮影地トロントと、『The Tick』の撮影地NYを飛行機で行ったり来たりしては「最高のお父さんと、最悪のお父さんを同時に」(アール談)演じていたという。

F: (両手を片方ずつ掲げつつ)反ジュール=ピエール・マウと、反ウォルター・チャンのかけもちが出来たんだから、何とも幸運な話だったよ。ウォルターはとにかく──普段(アジア系俳優むけに)募集のかかってる役がどういった部類かは、君らもこれまで業界で働いてきた役者だからわかるだろう。だから、これこれ、これなんだよ欲しかったのは、と言えるような役に巡り合えたのは本当に最高だった。「アイツを殺してこい!」やら「誰やらを連れてこい!」やら言う役じゃなくね。

一方、舞台についてはLAに来たばかりの若い頃こそさかんに出演していたものの、

F: 今は昔よりずっと年をくって、不精にもなってるもんだから(笑)。「出ていただきたい舞台があるんです。すごくいい作品になりそうですよ」というようなオファーが来るたびまず心の中で自分と相談するのが、「さて、普通なら毎日8時間のリハーサルが多分3週間くらいあって、上演開始ともなれば3、4週間は週8回の舞台をこなすわけか」ということでね。心の中で、「それって大仕事だな〜……」と思ってしまうんだよ(笑)

D: (笑)大仕事ではありますもんね。

E: 本当に(笑)

何よりも家族との時間を優先したいという理由であまり積極的ではないようだが、それをおしてもやりたい作品があれば出演したい、とのこと。過去の出演作で言えば、2011年にLAのGeffen Playhouse(※訳註:UCLAの演劇・映画・ テレビ学部が所有する非営利劇場)で上演された『Extraordinary Chambers(カンボジア特別法廷)』でのドクター・ヘンのような役がそれにあたるという(※訳注:「カンボジア特別法廷」とはクメール・ルージュ政権の指導者・責任者らを裁くため、国連の関与の下設けられた特別法廷のこと。『Cambodian Rock Band』でツジ氏が演じたドイクは、この法廷で裁かれた最初の幹部である)。

F: 私のために書かれたような役だ、と思ったんだよ。60から70代の年配男性でカンボジア人でビジネスマン。ただしクメール・ルージュのリーダーのひとりで、虐殺に関与した疑いのある戦争犯罪人であり、逮捕され、裁判にかけられようとしている人物。そこまでが背景の、すばらしいキャラクターでね。フランス語とクメール語も操る。基本的なところは私じゃないか、という役だったんだ。よくないところは除いて。私は戦争犯罪人じゃないからね(笑)

ちなみに、観劇する側としてひときわ楽しめた作品はといえば、『Cambodian Rock Band』だという。

D: あの作品で僕が演じた役をやってみたかったりはしますかって、まさに聞こうとしてたんですよ(笑)

F: やれなくもないんじゃないかとは思うんだけども、ジョー(・ノウ、『CRB』の主人公チュム役)がやった役の方がしっくりくるかもしれないねぇ。

D: ああ、そうですよね。あなたがあの役を演じるところ、余裕で想像がつきますよ。

F: いやー。私には、音楽のセンスなんかこれっぽっちもないもんだから。

D: ギターを弾くだけなら?

E: マラカスなんかでもだめですか?

F: ああ、だめだめ。もうねぇ、断言するけども、ビートについていけないんだよ。「いつ入ればいい? え? あ! もう遅れた! 何!?」という具合で(笑)



◆アジア系俳優にとってのアジアの言語

米国内で長年「模範的マイノリティ」とみなされながらも、21世紀になっても外国人扱いをやめてもらえず、白人の俳優たちと比べ雇用機会や役の幅にも恵まれず、いまだにマジョリティの誤った思い込みによるアジア人像を押し付けられたりする──『Tsushima』キャストたちが自明のものとして語るアジア系俳優の微妙な立場は、要約するとこうなるのだろう。フランソワが根強い差別の一例として挙げたのは、アジアの言語の取り扱いについてだった。

F: 我々アジア系にとって、この業界でも数ある、ムッとくることのひとつというのは──今ですらかな? 20年くらい前のテレビドラマには「チャイナタウン」エピソードってものがあったでしょう?(笑) 年に1回くらい、アジア系の役者が大勢、連続ドラマに出演するチャンスが巡ってくる時が。

E: 「ドラマに出られるかもだぞ、みんな集まれー!」みたいな(笑)

F: そう(笑)。で、中国語だろうと韓国語だろうと、日本語だろうと、当然のように誰かはその言語を話すことになるわけだよ、どういうわけか。ただし白人のキャラクターに対してじゃなく、彼らとは英語で話してるのに、ふと違う方を向いては別のアジア系キャラクターと中国語なりなんなり、アジアの言葉で話し出すんだ。私は「なぜこんなことするんだろう? 我々の実生活ではやらないことなのになぁ」と思っていたわけでね。でしょ? 今だってアジアの言葉喋ったりしてないのに。

E: みんな英語がわかるんだから、みんなにわかる言語で話せばいいだけなんじゃないのと(笑)

F: そうなんだよ。20何年前までなら、「ああ、親世代が移民1世で、英語があまり達者じゃない設定なのかな」で済んでたんだけどもね。いまだにアジア系の家族や何かが出てくると、子供はアメリカ生まれで第一言語が英語なのに──もう今の時代は、親もアメリカ生まれの第一世代になっているところまで来てるわけでしょ? 我々がそうだったように別の国から来たわけじゃない。英語だってみんなと同じように話す。だというのに、脚本家なり誰なりの頭の中では今でも「自分たちとは異質なエキゾチックな人々だから、アジア系キャラ同士の間では違う言語を話させよう」ということになっているらしい。アジア系同士がアジアの言語で話す場合もあるから、まあわかると言えばわかるんだよ? でもこれからはもっとね。21世紀に入ってもう20年過ぎてるわけだから、どんなものかな、と。

ちなみにフランソワは、その疑問を直接、脚本家とプロデューサーに訊ねてみたこともあるという。

D: そういったムカッとくることに対して、あなたがやり返した例などは、他にありますか?

F: 「やり返した」というと、そうだなぁ──脚本家とプロデューサーに聞いてみたことがあるんだ。「あの、なぜ私の中国系のキャラクターは、別の中国系キャラクターと中国語で話すんでしょう? ふたりとも英語を話しているし、他のみんなとも英語で話しているのに。何か秘密にしておきたいことがあるんですか、他のキャラクターに知られたくないことがあるとか?」と。

E: 「ただ中国語が聞きたくて」とか?(笑)

F: そう、答えは何とでも言い繕えたりしたりする。でも、「それもそうだ、こういうのはもういいだろう」とも思ってもらえるようにもなってきたから、昔と比べると潮目はだいぶいい方へ変わってきているんじゃないだろうか。たとえばウォルター役のように。でしょう? 苗字がチェンということは彼は中国系なんだろうけれど、何系なのかは私にすら定かではないし、誰からも中国語を喋ってくれみたいなことは言われなかったし。彼はただの、たまたまアジアにルーツがあるだけの人だった。素晴らしいことだよ。ただダイスの質問に答えておくと、疑問をぶつけてはみても、この業界の実情は知っての通りだ。そのへんは訊ねる人間の、そうだな、業界のヒエラルキーでの立ち位置による。

D: そうですね。

F: 質問すること自体はできても、まともに取りあってもらうためには、コールシートの一番上にでもならなければ無理なんだろう。いくらでも取り替えのきく、その週のゲストスター程度とは真逆のね。

ただし、マイノリティへの配慮不足は「自分たちの体面を悪くして、セールスにも悪影響を及ぼすと考える人たちが増えた」(ツジ氏談)ことで、潮目は確実に変わってきている、というのは3人の共通した見解であった。



◆レジェンド俳優ジェームズ・ホンとの邂逅

アジアの言語がらみの話題のついでに、アジア系俳優の長老格と言ってもよいジェームズ・ホン(※訳注: 1950年代より活躍しており、出演作も『ゴーストハンターズ』ロウ・パン役、『ブレードランナー』の眼球技師ハンニバル役、アニメ版『ムーラン』チ・フー役、『カンフー・パンダ』Mr.ピン役等多数。East West Playersの創立者のひとりでもある)との思い出話も披露された。

F: まあ本音を言ってしまうと、私個人にとってはなんだけどね。ムっと来る理由は今言ったようなものばかりじゃなく、おもに自分がアジアの言語の話者じゃないせいでもあるんだ。仕事で話すよう頼まれたりすると、そうか、じゃあ音声学的に正しく言えるように誰か、いや、まずセリフを訳してくれて、かつ発音をテープに吹き込んでくれる友達をあたってみようってことになるからね。で、いざそうやって──たとえば中国語の台詞を言ってみるとするだろ? もちろん自分の中では完璧にやれてるつもりなんだ。でもネイティブスピーカーがそれを見て「こいつ何言ってんだ?」となるのも、まあ想像がつくんでね(笑)

D: ですね。

E: (両手で顔を挟んで)もう「ごめんなさい」ですよね(笑)

F: 昔、ジェームズ・ホンと仕事したことがあるんだけど。一緒のシーンの台詞が全部中国語だったんだ。彼はもちろん流暢な話者なんだが、私は全台詞を音声学的に勉強しなきゃならなかった。で、またそれがけっこう長めのシーンなわけだよ。準備していざ撮影に入ったとき、「ジミー、あの、自分の台詞がよくわからないんです。あなたの台詞も何を言ってるかちんぷんかんぷんなんですが、ちゃんとしたシーンに仕上げるにはどうしたらいいでしょう」と聞いた。そしたら彼は「そうか。大丈夫、心配いらないよ。私が自分の台詞を言う時、言い終わったら(目元や顎を指で擦る仕草をしつつ)こういうのや、こんなのをやるようにしよう。そうしたら私の台詞が終わった合図だから、君は自分の台詞を言い始めなさい」って(笑)

D: えー、優しいなあ!

E: なんてステキな人なんだ(笑)

F: 私は「やった、ありがとう、ありがとうございます!」と(笑)

E: さすが、それでこそのジェームズ・ホンなんだなあ。レジェンドだ。

F: まったくだよ。彼、たしか今もう300歳とかじゃなかったかな。

D: (笑)

E: ずっと昔から活躍されてますからね。そのうち永遠の存在になるのでは(笑)

F: 本当にね。掛け値なしの名優だし。彼の作品を色々見てきたけど、小さなシーンでも素晴らしい仕事ぶりなんだ。だからここまでの長い間、業界でやってこれたんだろうね。



◆石川先生と巴

D: では質問です、「石川先生と巴を通して奇妙な父娘的関係を演じるのは、どのような感じでしたか?」。あなたが実際の娘さんととても仲が良さそうに見えるから伺うんですが。

F: そうだなぁ、娘は……(何やら考え中)

E: 『ゼルダ』のゲーム中、けちょんけちょんに言われたりしてるかもですが(笑)

F: いや、私は毎週土曜、今ではZOOMクラスになってるんだが、空手を教えていてね。娘も一緒なんだ。娘も武術が大好きで。……小さな頃は蹴りを入れられても「よし、いい蹴りだぞ」くらいで済んでたのが、15歳になった今は「(苦痛に顔をひきつらせ) ……うん、いい蹴りだ……!」になってきてる。

E: 「……いい調子だぞ、娘よ」!(笑)

F: 「よしいいぞ、オーケー……!」(笑) そういうことが好きな子なもんだから、私はいつもパンチやキックを入れられてる。まあそれも愛のあらわれってことだろうと。だよね?(笑)

D: (真顔で)もし、娘さんが巴みたいな人殺しだとわかったらどうします?

E: (笑)

D: あ、ひどい質問だったかな(笑)

F: (笑)殺してる相手が誰かによるかな。じゃないかい?

D&E: ほほーう?(同時に人差し指を立てて)

F: 世の中、どうしようもないのもいるからねえ。悪者だけ殺すならOKだ。あのシュワルツェネッガー映画の台詞はなんだったっけかな。ええと……。

D: ああ、『トゥルーライズ』ですか? 「でも全員悪者だった」?

F: そうだ、ジェイミー・リー・カーティスが「人を殺したことがあるの?」で、「ああ、でも全員悪者だったんだ」(笑)

D: たしかにあの映画を彷彿とさせるとこありますね、仁に関してもそうですが。「ああ、でも全員悪者だった」(笑)



◆自分が俳優だと自覚した瞬間は?

F: 具体的にそういう瞬間はあったかな、徐々に自覚していったような気がする。妙なもんで、私にとっては諸刃の剣というかね。「あ、これが自分の人生なのか。自分の天職って役者だったんだ」と悟った時、よしいいぞとは思ったんだが、同時に「ああ……俺、役者になるのか……。クソッ」とも思ってね。

D&E: (笑)

F: まるでこう言われたみたいだった。「お前は役者! もう選択の余地はないぞ。なぜなら役者であるということは、もうお前の中で抜き差しならぬものになってしまったからだ。今後何をしようがそこにある。何をもって成功とみなすかによっても違うが、たとえ仕事がなくとも、あるいは昼の仕事をしていても、自分が俳優だということはずっとお前の中にあるんだぞ。そしてそれを満たしてやるためには、できることは何でもやるんだ」と。役者として成功し、仕事も順調に来ていて、ああやっぱり天職だったんだ、と思うこともあるかもしれないよ。しかしこの仕事には選ばれてしまうものなんだ。まるで……私の友人たちの中にもね。とてつもない才能の持ち主で、素晴らしいアーティストであり役者だと思うのに、どういうわけか──さっき言ったように、何をもって成功とみなすかにもよるんだが──ふさわしい待遇を得られていない人が、たくさんいるんだよ。それでも彼らは役者で、何とか方法を見つけては仕事を続けている。同じくらいの才能があってもあっちの人は仕事に恵まれて、こっちの人はそうじゃないということがあるんだから、本当に運の要素が大きいと思う。変わることもあるかもしれないけれどね。でも、「ああ、君は才能があるからそのうち成功して、年中仕事するようになるだろう」というようなわけにはいかないんだ。本当にわからない。運によるところが大きいのが、この仕事の妙なところのひとつだね。


◆フランソワからの質問

「米国において、あるいは米国の俳優としてアジア系であることの意味」は『Tsushima』キャストインタビューでほぼ必ず俎上にのぼるテーマであるが、フランソワに関しては長期的なスパンで俯瞰して(かつ「LAにいると皆同じように考えるから、我々はある種箱入りなわけでね」とリベラル的価値観の地域的特性を認識した上で)見ている様子が印象的だった。

F: ふたりに聞きたいことがある。この30年か40年の間は、だいたい10年に一度ごと──もう少し高い頻度だったかもしれないが、アジア系アメリカ人主体のプロジェクトが評判になって、ほんの一瞬「これで状況が良くなる、世の中が我々にとっていい方へ変わるぞ」という雰囲気になってはまた元通りになってきた。そしてまた10年ほどが過ぎ、他の作品が話題になって「よしやったぞ」となる。で、数年ほど前に『クレイジー・リッチ!』(※訳注: 2018年公開、生粋のニューヨーカーである中国系アメリカ人女性が、シンガポールの大富豪一家の出だった恋人の実家へ招かれたことから巻き起こる騒動を主軸にしたロマコメ映画)が公開されて、みんなが「すごいぞ。これだけの大ヒット作になったなら、今後はアジア系俳優むけのプロジェクトがもっと増えるかも」という感じになっただろ。でも今回は、そういった感覚が以前よりも根付いてるような気がするんだ。

E: ええ、そうですね。

F: この現状が本物なのか、何かのきっかけになるかどうかはわからないんだが、少なくとも私は、昔以上のものがあるとみてるんだよ。君らはどう思ってる? もちろん、今は(アジア系に限らず)多数の役者に多数の仕事の機会がある時代ではあるんだが。

D: 僕ももちろんそうであればいいと思います。ただ新大統領をもってしても、この現状は──バイデンには中道派たることを期待したいしたいですが、そうではないかもしれないですよね。より規模の大きな議論は行われてますけど、……この(トランプ政権下の)4年間にあった出来事のおかげで、アメリカのマジョリティは自分たちの人種差別的な側面やその歴史と直面している最中でしょ。それがそういった過去と僕らみんなが和解する一助になっていると思うし、今の流れもその一環なんでしょうね。

E: そうだね。『クレイジー・リッチ!』や『フアン家のアメリカ開拓記』(※訳注:2015~2020年までABCで放映された、台湾系アメリカ人一家のコメディシットコム)みたいな作品群が乗ってきた波が、形を変えて『パラサイト 半地下の家族』、また『Tsushima』にも繋がる流れになってると思うんだよ。『ファラウェル』(※訳注:2019年公開、『クレイジー・リッチ!』にも出演したオークワフィナのGG主演女優賞受賞作。中国系アメリカ人女性が、余命僅かながらそれを知らされていない祖母と長春で再会する筋)の公開や、いま興行中の『ミナリ』もそう。『クレイジー・リッチ!』が火口にもう一度火を入れてくれたような感じで。

F: うんうん。

E: で、今が以前と違ってきているようなのは、プロダクション側や監督側にアジアをルーツとする人が昔より多く入ってきてるせいでもあるんじゃないですかね。そればかりが主な理由ではないにしても、10年、20年前に比べればやっぱり増えてるし。それが効いてきてるのと、実行可能性という観点でも──『パラサイト』のアカデミー賞獲得はある種大逆転劇で、象徴的な面もあったと思うんです。アカデミーに、あるいは何でもいいんですけど、時には巨大な一枚岩めいて、小揺るぎもしないように見える業界が相手であっても、ほんのちょっとずつ揺さぶりをかけることってできるんだな、というね。メディアの相乗効果には、この勢いを保持するポテンシャルがあると思ってます。

D: とは言ってもだよ? 『パラサイト』の快挙があったからこそ補足するけど、僕はアジア系アメリカ人主体の映画が同じような賞を勝ち取るまでは手放しで喜ぶつもりはないな。だって『ミナリ』に起こった例の件──

E: そうそう。

F: まさにそこなんだよ。

D: ゴールデングローブ賞だったっけ? ノミネートされなかったんでしょ。
(※訳注: インタビュー当時、『ミナリ』がこのような経緯でGG賞作品賞のノミネート外とされたことに批判が集まっていた)

E: 3歩進んで2歩下がるんだよなー!(笑)

フランソワにとってそんな状況の原体験となったのは、80年代末の人気ミュージカル『ミス・サイゴン』ブロードウェイ公演のキャスティングを巡る騒動。同作はまずロンドンでヒットし、その後ブロードウェイ公演が行われる運びとなったのだが、それに対し抗議の声をあげたのが米国のアジア系コミュニティだった。彼らが問題視したのはアジア人女性の描写が差別的だったこと、そして「イエローフェイス」メイクの白人キャストがアジア系キャラクターに扮していたこと、それによりアジア系俳優にとってただでさえ少ない活躍の場が狭められていたこと。結局プロデューサーの意向が通る形で配役は維持されたものの、俳優労働組合事務局が白人キャストの労働許可交付を拒否するなど、一時かなり紛糾していた。この抗議運動にはB・D・ウォンをはじめ多くのアジア系俳優も参加していたのだが、フランソワもまたそのひとりであったらしい。

F: 私も抗議の場にいたんだ。俳優労働組合事務局まで出向いて、NYやその他のショウで何らかの手を打つつもりがあるのかどうかの決定を待ってたのを覚えてるよ。意思表示はもうされていたわけなんだが……実質、「君たちを応援するぞ。応援するとも、ある程度まではな。でも違うんだ。そこまでの応援はしない」と言われているような結論が出て、本当にがっくり来てしまったよ。

E: リップサービスだったんだ。

F: そう。ああクソ、とね。でもだからこそ、みんなが「声を上げていかなきゃだめだ。こんな扱いに甘んじてちゃいけない」ともなっていったわけなんだが。(中略)物事が変わるには時間がかかるというのは本当にそうだ。悲しいのは、どうしてこんなに時間がかかるのかということ。そういうものなんだろうから、そこは受け入れるけどね。



◆ふたつの『GoT』

『タートルズ』のアニマトロニクスから連想してふと『マンダロリアン』の話題が出ると、子供の頃からテレビっ子だった(英語学習のためにも片っ端から見まくっていたそうである)というフランソワは目を輝かせる。

D: あの番組に出るべきですよ。僕ら全員がだけど、あなたは本当にそう。出演してるとこ、もう普通に想像できますもん。

F: 最近はスピンオフもたくさんやってるし、我々にもチャンスが来るかもだぞ。

E: それ目指そう。『Ghost of Tsushima』から全員移管してそれぞれ別々のルーカス・フィルムのドラマシリーズにひとりずつ割り振ってもらうの。そういうのあってもいいじゃん?

D: 『GoT』(『ゲーム・オブ・スローンズ』の頭文字)の役者陣が『マンデロリアン』に出られるんなら、もういっこの『GoT』、『Ghost of Tsushima』の役者陣だっていけるでしょ(笑)

E: 『GoT』愛を広めよう。

F: 私に『ゲーム・オブ・スローンズ』の話題は振らないでくれよ。

D: えっ、ホントですか? 好きな作品じゃなかった?

F: 大好きだったよ。最終回までは!

D: オーケー。これはあともう1時間相当かかりそうな話かな(笑)

F: それはないだろってなったもんなあ(笑)

D: 本当、そうですよね。僕は(まだ完結前の)原作本を楽しみにしてます(笑)

E: こないだもその話したとこだったんですよ。あの番組にみんなの意識がごっそり持って行かれてた感はのものすごいものがあったよねって。みんな「GoT! GoT! GoT!」って(笑)

F: トロントで撮影中だった時、ホテルの部屋にHBOが入ってなくてねえ。「げ。しまったぞ、どうするどうする。楽しみにしてるのに!」となって、『GoT』を流してるバーに行こうかと思ったくらい。バスに乗ってけば場所見つけられるかな、と。

E: (笑)すごいガチじゃないですか!

D: どハマりですね(笑)

F: でもそうなるぐらいのすごい盛り上がりだったろ?

E: その後みんなガッカリしちゃって、今は忘れ去られてしまいましたけどねぇ。

D: 原作本がもっと良い出来になるかも。

F: まあ前日譚も来るから。

D: ええ、だとしても──

E: もう前のようには信じてあげられません(笑)

F: 反省材料にして何か学んでたりはするかもよ。

E: だといいですけどね。

F: まあ前日譚と聞くと、私は「前のことなんか別に知りたくないけどなぁ」と思う方なんだけども(笑)


◆最後の質問

さてそろそろお開きに、という雰囲気になったところで、キャストインタビュー恒例の「ビリーの質問」(※訳注: 元ネタは『Tsushima』撮影監督ビリー・ハーパーが現場で演者に対してよく訊ねていたという質問で、「これまで制作チームに頼まれた一番ヘンなことは?」である)が。

D: ネイト(・フォックス、『Tsushima』クリエイティブディレクター)とビリーはあなたに対して何かしてました?

E: 何かおかしなことをしろとか、変な声出してみてくれとか。

F: ネイトとビリー……? それは誰なのかな。

E: (爆笑)

D: 今のが答えだよね(爆笑)。でもそうですもんね、モーキャプ撮影はなかったんですもんね。

E: ボイスオーバー作業中にネイトがスタジオに来たのって、僕らの場合も2回くらいだったと思うんだよね。確かにほぼ不在にしてたはず。

D: ふたりはキャラクターのモーキャプの段階に携わってたんですよ。だからかと。

F: (笑)ああ、なるほどなるほど、それでか。

E: なのでやっかいなことやおかしなことも頼んでなかったと(笑)

D: いまの質問の答えは「なし」(笑)。というか「誰?」っていうね。質問で質問に答えてくれました(笑)。では今日はありがとうございました。

E: じゃあみんな、よい夜を。ありがとうございました! DandEな週末をね。

F: バーイ。イェーイ!