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Vancouver International Film Festival (2) 『殺出個黄昏 / Time』

2021/10/06 の記事です。

さて、VIFF参戦1本目の話をしよう。

実は VIFF という映画祭があると知ってから、どんな港產片が来るのだろうとワクワクして発表を待っていたので『殺出個黄昏』と知った時には正直カクッときた。香港での好評は知っていたものの正直あまり期待していなかったから。

大阪アジアン映画祭 / OAFF にずっと絡んでいる身としてある程度目星を付けていたものは来なくて、今回純粋に港產片と呼べるのは『殺出個黄昏』『好好拍電影』の2本3場だけ。本数と場数が少なくてガッカリしたことは正直に申し上げよう。

それでもやはり港產片なので観ておかねばならない。観客の半分以上は当然在温香港人だけれど、その他の人種も結構いて嬉しかった。香港人以外の港產片迷は多ければ多いほど良い。

眉に唾つけて観に行って、最終的に「いやー、面白かった!」という感想で終わった作品なので、私的観どころを書いておく。日本の皆さんに先行しているので、出来る限りネタバレしないように。

『殺出個黄昏 / Time』

四哥は大好きな俳優ではあるけれどすでにかなりのご高齢。「主役張れるんかいな」とかなり不安だった。ざっくり紹介すると、オープニングは私的には「あーあ」だったが、徐々に面白くなっていき、途中からガハガハ笑えて、最後には「なるほど、こういうのもありだね」で落ち着かせた優秀作。若手の芝居がだいぶ甘かったけれど、主役3名の功績が大きくて全体的には落ち着いて観ていられる。

オープニング

オープニング・シーンは私的には完全に『追龍』。というか林家棟がまるま龍哥の衣装で出てくる作品のまんまの雰囲気だった。作品名わからなくなったけど、時代設定的に同じような年代なのか服装やヘアスタイルがまんま。

この星のタンクトップと

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このレザージャケット着て出てくる作品なんだったっけ?『追龍』だった?

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さて、『殺出個黄昏』に話を戻す。若かりし田立秋が案外いける。本当の若かりし頃の四哥の顔を知っているので、登場当初は「全然似てないじゃんよー」と思っていたのだけれど、動いている若き阿秋をみていると「あれ?実はこんな顔だったんじゃ?」と思えてくる。現在の阿秋にポンッと飛んでも違和感無かった。

蔡鳳の若かりし頃は全く似ていない。葉一叢は似ているようで似ていないようで似ている。こんなにピッタリマッチな俳優をよくも見つけてきたね。会場の香港人(多くはおじさまおばさま)からも「ほおお~」と案外似てるねのくすくす笑いが出た。

このオープニングは回顧シーンなので劇画的アニメーションを挟んである。こういう手法は個人的にあまり好きではないので「あーあ」だったわけだが、アクション・シーンがなかなかにいけていて、アニメーションでのマイナス・ポイントをカバーして最終的にプラス評価になった。武指が良い仕事したということね。武指が誰なのか後で聞いてみよう。

四哥

お年がお年だし、お年なりの歩き方をされているし、大丈夫かな・・・と心配していたのだけれど、おみそれしました!アクションのキレの良いこと!表情のシャープなこと!赤いライトの中に座っているシーンは「もしかしてこれ蝋人形?」と思ってしまった(失礼)し、赤いライトの廊下のシーンもかなりキツかったので、四哥には赤いライトはあかんと思いますで(業務連絡)。

アクションはスピードとアングルを上手く調整してかなり良い感じに仕上げてあるけれど、そういったテクニカルなことだけでカバーできない部分も良質。四哥の表情とポーズの決め方がシャープで良い!素敵!本編じゃないフッテージで観ても四哥のポーズが美しいので、これは武指とカメラマンの功績以上に四哥ご自身のキャリアと才能が効いているのだと思う。

そして四哥は単に主役としてのさばっていただけではない。劇組の何人もが「喺四哥身上學咗好多嘢」と言っていた。「若い頃はやんちゃしてたんだ」と花絮で仰る四哥も今やその存在で後輩に学びを与える高みにおられる。香港電影人の前輩たちは後輩を育てることを厭わない。むしろ積極的に自分の持てる知識や技能を後輩に伝えている。だから今この厳しい時代においてさえ、こんなにも若手の才能ある香港電影人が萌芽しているのだろう。

寶寶姐

鳳姐はあまりにはまり役。金鳳凰歌廳のシーンも嫁姑バトルのシーンも、あれもこれも「素ですか?」と言いたくなる滑らかさ。さすが芸達者。しかも七節鞭の扱いが上手い!もちろん本チャンのアクション・シーンは替身に決まってますが、七節鞭の投げ方や決めポーズが良い。映画作品としては『媽咪俠』以来久々に観た寶寶姐だったけれど安定の実力。

林雪

殺手の話だということで『恭喜八婆』的林雪を期待していたのだけれど(ちょっと変かな)見事に裏切られた。今回の林雪はちょっとナイーブで一途でせつない少年な感じの役。

麻甩佬麻甩佬してない役なら林雪じゃなくて他の俳優でもよかったんじゃない?と一瞬思ったけれど、「あー、阿叢これで天使になっちゃうのか・・・どこまで友達思いのいい奴なんだよー」と思わせる表情のカットは、やはり林雪が適任なのかも。周りの観客も「あー、(阿叢死ぬんだ・・・)」の声を挙げていた。

ところが、次のシーンで「へ?」という声に変わった。いや、私も「そうくるの?」と思ったよ。

総合してやはりこの役も林雪でなければいけなかったんだろうな。

観客

半分以上香港人だったおかげで、笑いのポイントでは劇場全体でドッと大笑い。セリフの面白さに皆で一緒に大笑いできるのがやはり映画館で観る醍醐味だよね。港產片は大勢の香港人観客と一緒に劇場で観るに限る。

「劇終」でエンド・ロール始まった途端、会場から大きな拍手と歡呼聲が挙がった。Q&Aなどあったわけでもなく、導演が座っているわけでもないのに拍手が沸き上がったのは観客が楽しんだということだよね。その拍手が彩蛋への大笑いに変わり、いよいよエンド・ロールが終わってスクリーンが真っ暗になった途端、大きな拍手と歡呼聲が再度挙がった。自分が参加した作品ではなかったけれど香港電影人の端くれとしてとても嬉しかった。

そういえば本作の字幕は簡体字と英語の2言語。本来的に港產片は繁体字と英語の2言語だから、それに慣れている私は2言語字幕自体に違和感は無かったけれど、中文字幕が簡体字と気付いて驚いた。香港人観客には字幕は必要無いから他の華人用に簡体字にしたのかしらね。

エンド・ロール

Twitterでも書いた。エンド・ロール始まった途端に席を立つ人が多いけれど、絶対に最後まで観てほしい。どんな作品でも。

『尚氣 / Shang Chi』なんかエンド・ロールの後に続きがあって、その後の再エンド・ロールの後にまたもうワン・フッテージあったのよ。エンド・ロールの始まった途端にスクリーンを後にした人は損してるよなーと思った。

この『殺出個黄昏』もエンド・ロールに彩蛋が添えてあるので絶対に最後まで席を立たないでほしい。特に四哥と寶寶姐のNG集は面白過ぎた。萬物錯過だよ!

脚本

脚本を家棟哥が書いていると昨日鑑賞後にTwitterの書き込みで知った。家棟哥は初脚本だったのかな。ちょっとキビシイこと言うと、所々繋ぎの甘いところがあったのよね。まあこれは、最終的な編集で大胆にカットしたら繋ぎとしてはちょっと甘いというか強引というかになってしまったのかもしれないけれど。次にはもっと腕を上げてくれると期待する。

カメラ

凄く素敵な画が沢山あった。もともとスタイリッシュな画を撮るカメラマンだけれど、今回は素敵なトップショットが沢山あった。他にも「この角度で切り取るかー」「階段を三角で使うかー」と唸らせてくれるショットが沢山あって「ほおお~素晴らしい!」となった。私自身が Graphic Design を履修し始めたから余計に気になるのかもしれないけれど、とても勉強になる画が沢山あった。さすが Jam だ。

総括

面白かった!
笑いあり涙ありアクションありありの純粋な娯楽作品!賀歳片にしても良いぐらい軽くて面白い秀作だった!

日本で配給付いたらいいのにな。

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