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電影鑑賞記『The Last Message 天才與白痴』(1975)

嘉禾戲院がこのところガンガン結業している。そんなところへ嘉禾海運戲院での『The Last Message 天才與白痴』上映のニュースが入ってきた。ネットで見た時に「公餘場」(の公の字)が読めず、「MATINEE」を見て「すわ!この上映で嘉禾海運戲院もいよいよ結業か!」と驚いて速攻チケットを購入した。

というのも撮影現場での「Matinee」は最後のショットのことなのよ。このショットでOKが出たら「Wraaaaap!!!辛苦晒!!!」とみんなで叫ぶ。日本でいうクランク・アップというやつね。なので嘉禾海運戲院も即將結業と言われていて、(チケット購入画面を見たその時に)翌日以降の上映予定が出ていなかったので、私はてっきりこの上映が嘉禾海運戲院最後の上映なのだと思ったわけ。しかも英文タイトルも『The Last Message』だから、結業に合わせてきたんだと。

この上映ではミニ・ポスターと戲飛が貰える(数量限定)とあったので、上映40分前に到着しておいた。ネットで購入したので普段はQRコードで入場できるのだけれど、もしやと思って係員に「要唔要實體飛?」と聞いたら「要!」と言われたので實體飛(=紙のチケット)を発行した。大体どの上映会でも入場者プレゼントがある場合は、實體飛にスタンプとか「剔」とか入れて引き換えだからね。

私は早くから並んだから6番目ぐらいだったかな。数量限定って言うけど、大概皆にいきわたるぐらい準備してあるよね?と思ってはいたけれど、貰って振り向いたら結構な数の人が並んでいたので、皆貰える物は貰う主義。てか、入場者プレゼントだってのに、並べばタダで貰えると思っているお年寄りが数人いて笑った。派米じゃないよー。

作品オープニングで驚いた。嘉禾公司のロゴが古い方のものだったから。龍迷お馴染みの金色の長方形が「ダーンダーンダーンダーン、タタタターン」とくるのではない方のロゴ。スクリーン上では初めて観た。これは意外な収穫。

然しながら、内容はハッキリ言って面白くなかった。時代が違い過ぎて、それを考慮した上でも今では笑えないような場面があったり。飛紙仔(=脚本無し)の時代だったろうから、脚本(ストーリー)の細かい繋がりが甘かったり。もともと香港人は笑いの沸点が低いので(これはこれで人生を生きていくにはとても良い傾向だと個人的には思っている)、特に古い作品などの笑點では私は面白いと思わないことが多いので、本作でも笑えるポイントがほとんど無かった。

なのでどちらかというと70年代の香港やファッションなどを懐かしく思いながら観た感じ。唯一面白かったのがバイクに乗った警官で出て来た James Tien 田俊。顔がドン!と映った瞬間、心の準備が無かったおかげで笑ってしまった。おおー、あんた、バイク乗れるのかーと。深めの水たまりにバイクで自ら入っていってこけるのも、カット変わって水たまりの水をブハッと吐くのもやるのかーと。正統派二枚目路線は捨てたのかーと。しかも、芝居が『唐山大兄』の許劍のまんま。もうちっと違う芝居できへんのかい!

喬宏は良かった。ちょっとおかしなことを普通にやるちょっとおかしな人をさらっと演じている。なので私的本作の見所は田俊と喬宏。

結局のところ「公餘場」なので料金が安かったのが不幸中の幸い。調べたら「公餘場」は夕方5時半の上映回のことだったのね。平日昼間は観客の入りが悪いので安くして少しでも観客を引っ張ろうとしたのが成り立ちだそうな。ラストの意味の「Matinee」ではなく、本来の昼興行の意味だった。

嘉禾海運戲院は、今の時点で1月24日までの上映予定が出ている。本作と先々週の『曾經擁有』上映前には、スクリーンが真っ暗なままでこれから上映する作品の予告編が全く流れなかったので、多分今上映されている『破・地獄』『誤判』『曾經擁有』が24日で終わったら結業なのだろうと思う。流石にちょっと寂しいね。

嘉禾海運戲院にて鑑賞。★

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