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私がどうやって広東語通訳者になれたのかを紐解いてみる(40)『追捕/Man Hunt』- 奈良と兵庫のロケ地 -

奈良と兵庫での撮影

大阪以外の場所での撮影についても少し触れておこう。奈良数か所と室津港。大阪の他地区も含めて撮影の順番をもう覚えていないのでランダムに書いてみよう。

室津港

こんな素敵な港町を探してきたのは制作部の功績。本気出せば出来るじゃん、制作部。

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監督の目指した「昔の日本映画の雰囲気」が出せる海があった。この室津港は行政としては観光客を誘致しているようなのだけれども、なにせ公的アピールが無さすぎて、本作の撮影についても神戸新聞の記事しか出ていないという残念さ。たつの市、もっと頑張れ!個人的にちょっとご縁があるので頑張ってほしいのよ。

奈良の山奥の道

大阪の市街地でできなかったカーチェイスと爆破を奈良の山奥の道で撮影した。おかげでドカンと脚本が変わったけれど、なかなか面白い絵が撮れたと思う。ドゥ・チウと真由美の車が逃走中に横転する。香港映画は車の横転好きだからな。しかし、SUV車を横転させるのはそう簡単ではない。十数人の男連中が手押しで横転させた。怪我人が出なくてよかった。

実はこのシーンの撮影時に監督が一度キレた。監督は元々現場での俳優のエモーションを重視するので、俳優側からのセリフの改変案には比較的寛容である。ところが主演俳優がセリフを変えたがってグダグダ言うので監督キレちゃったのである。監督には自分の考えるストーリーの運びと絵があるんだよ?なんでそれを尊重しないのかな、と傍で思っていたら監督キレた。今は随分温和になった天下の John Woo もまだまだキレるんだーとちょっと嬉しかったりもした私。

山添村カントリーパーク大川

カー・アクションあり派手なガン・アクションありで撮影自体は楽しかったのだけれど、いやもう、超しんどい現場だった。現場が広すぎるのよ。キャンプとかするようなパークなのでもうとにかく広い。入口近くのトイレからパークの奥のほうにある現場まで徒歩で3分はかかる。トイレに行こうと歩いている最中に遠くの現場で撮影となって、バックに映り込むとなったら「早くどけー!走れー!」とか怒られる始末。

そして当然ピーカン。あっちの現場でブライダル・シーンの撮影をしているかと思うと、こっちの控え場所ではアクション部が練習やリハーサルをやるので、あちこち移動しまくらなければならない。炎天下のパークを走り回る体力勝負な現場だった。

本編中の重要なアクション・シーンの一つ、ブライダル会場での派手なドンパチ・シーン。クロスを掛けた長テーブルに食器がフル・セッティングされてある。そこへ殺し屋のドーンが飛び込んできてザザーッと滑りながらバンバン発砲する。

ドーン役の Angeles Woo、かなりボリューミーな方なので回転なども大きな岩がゴロンな感じでかなりキツイ。アクション好きでアクション部付きな私としては目も当てられない動き。

ところが、本編を観た時には「うわー!」と声を上げてしまった。「キリッとしたアクションに見えるように仕上がってるやん!さすが天下の John Woo!いや、編集者の腕か!」の意味で。初めて本編観たのは監督と一緒にだったので、声に出したのは「うわー!」だけだけど。映画ってマジック。

アクションシーンのセッティング

このシーン、セッティングに驚くほど時間がかかる。1回目のテイク前の準備はゼロからだから簡単。すんなりキレイに仕上がる。なのでクルーとしては1テイクでOKになってほしいと願うのだけれど、現実はそう簡単ではない。

Cut!の声がかかり皆が緊張する。OKになってくれ。OKに・・・。Second AD から「One more~~!」の声が上がる。あーあ・・・。

と、ガックリしている暇は無い。美術からプロップから大勢のスタッフがわさっと現場に駆け込んで再セッティングを始める。先程の撮影で汚れたり壊れたものを外し、新しいものと取り換えつつ、記憶と写真を頼りに先程と同じセッティングを復元する。これが実は想像以上に時間がかかる作業。

テーブルの上だけならまだしも、確かこの時はボリューミーな方の重量に耐え切れずテーブルの足が折れたんじゃなかったかな。車が突っ込んできて粉々になるようにわざわざ壊れやすく作ったテーブルなので、ちょっとした負荷に耐えられない。

こういうハプニングでセッティングの所要時間が更に延びたりするわけで。セッティング1回に軽く30分はかかった。それまでの撮影にはこういったアクションで壊すセッティングは無かったから、この時初めてセッティングには時間がかかるものだという撮影の現実を知って驚いた。

フィアンセ役は

ここでは真由美のフィアンセが車中で自死するシーンも撮影した。このフィアンセを演じたのは今をときめく田中圭。日本の映画もTVも全く観ない私は田中圭を知らなかった。この時は「おっさんずらぶ」でブレイクする前だったから名前すら聞いたことがなかった。現場に入ってきた田中圭に副導演からシーンの流れと監督が欲しい感じを説明する。「うん」「はい」とあまり気の乗らない風な返事しか返ってこないので、イケメンだけど誰か知られていない程度なのにこの態度は何なの?と通訳しながら思っていた私。後にブレイクしてビックリしたわ。それに比べて・・・いや、このエピソードは後に書くことにしよう。(続)

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