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私がどうやって広東語通訳者になれたのかを紐解いてみる(30)- NHKBS「アナザー・ストーリーズ」香港編その2 -

第1部 - 香港 - 続き

香港でのロケの話をもう少し。途中大脱線あり。

現地コーディネイション会社が繋げたインタビュイーの中で最大の目玉と言って良いのは Chaplin Chang 張蔭鵬氏。しかし申し訳ないが、「なーんだ、張さんだったら言ってくれれば良かったのに。私、仲良しですよー。」「え?そうだったの?」ということで私的にはあまりサプライズではなかったというオチ付き。

朝、ご自宅へ車で迎えに行ったら私が来るのを知らなかったらしく「おー!センセー!久しぶりだね!今日はセンセーが通訳してくれるの?良かったー!」と言ってくれたのだけれど「いや、通訳は別の人がやるので、私はサポートとしてお供するだけですよ。」ということで青山禅寺へ。

日本語勉強のクラスのはずが

1997年とか1998年頃だったかな、李小龍會繋がりの友人達にグループで日本語を教えていた時期があった。張氏はその中の一人だったので、私をその後も延々と「センセー」と呼んだ。「いやいや、今はもう日本語教えていないし、大先輩からセンセーとか呼ばれるほど年取ってないからセンセーは止めてくださいよー」と毎回お約束のやり取りをしていた。実は張氏、私が教えるより前に日本語をかじってたことがあって「日本語もうお上手なのだから私はセンセーじゃなくて日本語で話のできる朋友でいいでしょー」などと言っていたぐらい結構話せたのよね。

ちょっと脱線。この日本語クラス、李小龍會繋がりの友人達のみでのクラスだっただけに、毎回一応1時間ほどは日本語のレッスンをするのだけれど、その後が長い。李小龍業界では有名なイラストレーターである Shannon Ma 馬富強氏のオフィスでやっていたものだから、レッスンが終わるとまず馬氏の最新作を皆で観ては「スゲー!」「龍哥そっくりだ!」「お、更にレベルアップしたな!」ときゃあきゃあ喜ぶ。世界初の3D龍哥の製作過程を皆でずっと見守った。ツルツル坊主の龍哥を初めて見た時はショックだったけれど、それも今となってはありがたい思い出。

チャチャチャ詠春拳

3D龍哥を堪能した後は、メンバーのうちの一人、俳優であり香港電台のDJでもあった Lot Sze 施介強氏がチャチャチャの手ほどきをしてくれる。肥施と呼ばれる巨漢なのだけれど、武術のたしなみもあったりして、実は身が軽い。「動ける〇ブ」はサモだけじゃないんだよ。音楽を掛けながらステップを踏んでくれる。巨漢の妖艶な腰の動きに皆で大笑いする。

そして詠春拳のベースのある馬氏が「チャチャチャ詠春拳」を発明。二人一組でチャチャチャのステップを踏みながらチーサウ黐手をする。しかもステップを踏んで前後左右に動きながら「ハーイ!最近どう?」「まあまあだね。そっちは?」「俺は結構忙しくしてるよー」などと会話もする。全員で大爆笑。チーサウとチャチャチャのステップと会話というマルチタスクを同時進行でできるのか?というチャレンジングなレッスンだった。今でも思い出しただけで笑える。

ちなみに馬氏はジョン・ラダルスキー氏の兄弟子にあたるので、私の叔父弟子にあたる。なので私は時々馬氏を「師叔」と呼んで茶々を入れる。

青山禅寺でのインタビュー

さて、話を番組のロケに戻そう。『燃えよドラゴン』ロケ地の一つである青山禅寺でインタビューを行った。到着した途端「ソフィ、ここで一緒に写真撮ろうよ」となんだか少々はしゃいでいた張氏。これが一緒に撮った最後の写真になった。

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インタビュアーへの苦言

インタビュー通訳はコーディネイション会社の社員が行ったのだけれど、ここはプロの通訳者としてちょっと苦言を呈しておきたい。コーディネイション会社の社員は青山禅寺へ向かう車中でも『燃えよドラゴン』どころか龍哥に関する話をしない。自分の興味のある昔の話ばかりを張氏に振ってはたわいのないお喋りのみ。張氏のバックグラウンドもステイタスも知らないんだから、インタビューする前に張氏自身のことを探っておいた方がいいんじゃないの?と心配していた私。

インタビューが始まってから更なる大きな問題が発覚。「私、李小龍の映画を観たこと無いのよねー」と抜けしゃあしゃあ。えっ・・・・・・・・。

仕事として請けているわけだよね?番組の主旨が『燃えよドラゴン』ベースだって知ってるよね?それで映画も観ずにインタビュー通訳として臨むわけですか?事前のリサーチ無しですか?香港凱旋後の龍哥の電影はたかだか5本だよ?(『死亡遊戯』はフルで龍哥が出ているわけではないけれど、映画作品としては完成品なのでここでは敢えて1本と数えることにする。)全部観られなくてもせめて『燃えよドラゴン』だけは観ておくべきでしょう?ロケ地だからここでインタビューするのに、どのシーンでのことかもわからなくては適正な通訳できないよ?

案の定ボロボロだった。龍哥の映画の邦題がまずわからない。『龍爭虎鬥=燃えよドラゴン』さえも言えない。『唐山大兄』は邦題はおろか原題も『唐山』しか覚えられない。『猛龍過江』という原題さえ知らない。「ここで李小龍はBraithwate とお茶を飲んだんだよ」の「Braithwate」が何かわからなくて訳せない。。。。

今後は誰かの面子より業務的正確性を重視したい

その日の通訳を任されている彼女の面子もあるし、クルーや張氏の目の前でいちいち全部訂正しまくるのも可哀想かと思ったので、インタビューの内容を聞き起こして翻訳したものを私にチェックさせてくれと、こっそりディレクターに頼んでおいた。後にチェックした翻訳原稿はもちろん真っ赤っ赤になったのは言わずもがな。彼女の面子より何より、その場で「私がやります」ってしゃしゃり出ておくべきだったと後悔した。こういう時のポジショニングって難しいね。まあ何よりも、事前の資料収集とかリサーチは絶対に欠かしてはいけないと再確認できたことは私にとってプラスになったとは思えるが。

そういえば番組では結局張氏のインタビューは全カットになってしまっていた。予告編には張氏が出ていたからてっきり使われていると思ったのだけれど、本編には出ていないという・・・それがなぜか、インタビューを傍で聞いていた私にはわかる。せっかく面白いエピソードがたくさん聞けたので、どこかで龍迷の皆さんにお伝えできるといいな。(続)

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