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私がどうやって広東語通訳者になれたのかを紐解いてみる(25)- 大阪観光局での業務がコネクションを広げた -

いよいよ広東語通訳へのシフト開始

とはいえやはり需要はまだまだ少なく、毎年3月の大阪アジアン映画祭が一番楽しくて仕事量のある状態が続いた。

通訳派遣会社のコーディネイターは広東語と普通話の違いを分かっていたので、私に打診がくる案件は基本的に広東語案件のみ、需要は本当に少なかった。年間通して商談会やセミナー等の細々とした単体案件が数件といったところだった。

広東語通訳のみで生計を立てられる収入にはならなかったので、メインでOLをやりつつ文書翻訳も請けるという二足の草鞋ならぬ三足の草鞋が暫く続いた。その間に自分の広東語力を落とさないために、香港のニュースには毎日触れ、香港の友人ともマメにアプリで会話や通話をするようにしていた。

大阪観光局

2013年、また一つの大きなチャンスが訪れた。大阪観光局へ就職したのである。その頃はちょうど貧乏のどん底で、明日支払われる予定の報酬が万が一入金されなければ電気料金を支払うお金が無いので電気を止められる、というところまでいっていた。

そこへ大阪観光局へ勤めてみないかとのお誘い。乗らないわけがない。香港観光局の日本・韓国担当だったK氏が大阪観光局長に就任するにあたって、香港旅遊協會大阪支局のF姐を勧誘した。F姐は私が契姐と呼んで慕う人。大阪アジアン映画祭香港ナイトで知り合って仲良くなった。こんなところで人脈が繋がる。

F姐は「私はもういい年だから、今更転職して一から新しい事をやるのはしんどい。香港人以上に香港人な日本人を紹介するから。」とK局長へ私を推挙してくれた。そして局長とのお目通しを経て晴れて大阪観光局へ入社。ここは1/3が大阪府市、1/3が経団連、1/3が大阪府下の企業の出資により運営されている半官半民というか、ちょっと複雑な団体だった。大阪府市の職員が専属職員として在職しているが、局内の半分以下。その他は各企業からの出向者。K局長が直接採用した私ともう一人の男性は契約社員。

インバウンド誘致の先陣

大阪でのインバウンド招致事業がここから活発になる。中華圏については香港担当(私)、台湾担当、大陸担当と細かく担当分けするという力の入れようで私にとっては願ったり叶ったりの職場だった。

この頃はインバウンド旅行客がまだ増える前。つまりインバウンド誘致の為のプロモーションをどう始めて、いかに上手く続けていくかが問われた時期。香港人の好みや面白がるポイントは熟知していても、大阪は梅田しか知らない私。毎朝梅田から心斎橋まで歩いて通って、少しずつ大阪を勉強した。

インバウンド客を欲しがる施設や店舗は多かったが、もちろんインバウンド誘致などしたことの無い人達ばかり。客は欲しいが、何を売りにすれば良いのかわからない。そういう人達はおしなべてそれまで国内マーケットしか見て来なかったし、日本の価値観しか知らないので、海外の人達に何が受けるのかわからない。それを発掘してあげるのが私の仕事だった。

インバウンドが欲しいならまずは香港人を攻めよ

行く先々で説いて回った。「これまでの売れ筋商品だとか日本人に受けたものだとかは忘れること。文化の違う人達が面白いと思ってくれるものは自分達の考えるものと違うと覚悟しておくこと。」「世界中で一番好奇心が強くてアンテナの感度が良いのは香港人。インバウンド客が欲しいなら、まず香港人を掴め。香港人が喜んでいるのを見た台湾人が後に続き、それを見た大陸人が続いてくる。香港人の心さえ掴めれば後は芋づる式だから、インバウンド誘致に最も大切なのは香港人。」とぶちあげた。

在香港日本領事が暫く前に「香港人はインバウンドのリトマス試験紙。まずは香港人に受けるかどうかです。」みたいなことを言っていたが、悪いけどこれは私の受け売り。香港出張時に香港の領事館職員に私が説いた話を総領事が自説として採用したのよね。

香港人は好奇心が超旺盛で新しい物好き。誰よりも先に自分が面白い物を見つけて「ねえ、こんなの知ってる?」と自慢するのが大好き。だからアンテナの感度も半端ない。誰かに聞いた新しい物の情報は早速自分も試してみなけりゃ気が済まない。香港人はスピードが命だから、決定も行動も早い早い。これは香港人のアドバンテージ。こんな香港人が私は大好き。

香港人は、とにかくやってみたい性質、当たって砕ければいいじゃんな人。だから新しい物や面白そうな事にはまず猪突猛進してみる。やってダメだったら、何がダメだったのか考えて別の方法を試せばいいじゃんという考え方。

台湾人は香港人に比べると少し保守的なので石橋を叩いて渡る性質。香港人が楽しんでいて、どうやら危なくなさそうだと思えば、じゃあ私もー!となる。そして自分なりの楽しみ方を見つける。香港と台湾は情報がツーツーなので、どちらかに新しい物が出てきたら、もう一方は必ず食いつく。

大陸は情報の質と量や様々な制限からどうしても後発になる。しかし華人の情報網は侮れないので、後発とはいえ必ず後追いしてくる。

ただし、このセオリーは今では変化しているので、今からインバウンドを狙いたい人は今の状況を把握されるべし。大まかに言うと、中華圏インバウンドの最盛期はもう過ぎている。盛り上がりは既に東南アジア諸国に移って久しい。コロナ後を狙う店舗や企業は要注意。

香港エンターテインメント業界へのコネクション拡大

香港人マインドな私は大阪の面白い物を発掘して回った。香港人が面白いと感じるものをプロモートする。香港からやって来るTVや雑誌の取材コーディネイトも多数やった。ここでまた香港人脈が広がる。

大阪アジアン映画祭では、ゲストとして来日した香港電影人と必ず仲良くなった。私も香港人なので当然すぐに仲良しになれる。大阪観光局の仕事ではTV・新聞界や雑誌界への人脈が広がった。同じエンターテインメント業界とはいえ、映画とTVではやはり違うので、とても良い機会を与えてもらったと思う。実際に仕事に直接繋がったわけではないが、人脈は大事。

結局のところ、大阪観光局で働いたのは丸2年。K局長が大ポカやって2年で切られた(表面的には任期満了)時に道連れとなり、K局長による直接雇用である私ともう一人の男性はK局長の一味と見做されて一緒にバイバイ。とはいえ、転んでもただでは起き上がらない私であった。(続)

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